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記事2004年7月23日 1943号 (1面) 
全国知事会議 三位一体改革で基本方針検討
義務教育費国庫負担の存続で激論
8月の会議で決着
私学助成堅持求める知事も
 全国知事会(梶原拓会長=岐阜県知事)は、七月十五日、都内の都道府県会館で全国知事会議を開き、同会が八月二十日までに政府に提出する国庫補助負担金廃止リストに義務教育費国庫負担金を加える是非を協議した。同国庫負担金に関しては一般財源化による教育予算の減少、教育水準の低下を懸念する意見がある一方で、「高校教育は一般財源化されているが支障ない」などリスト入りを求める意見があり最終結論は八月十八・十九日の次回全国知事会議に持ち越されることになった。

 この日の主要議題は、政府の進める「三位一体の改革」。その中でも大きな焦点が二十兆円ある補助負担金のうちどの補助負担金を廃止縮減するかとの問題。改革二年目となる十七年度予算に関しては、廃止する補助金等に関して政府は全国知事会など地方六団体に具体案作りを委託、全国知事会が中心となってその検討を進めているもの。七月十五日は具体案策定に向け基本的な考え、公共事業や社会保障関係補助負担金の取り扱い等を協議した。改革一年目では地方交付税措置が大幅カットされたことなどから地方には政府への強い不信が残った。また社会保障関係に関しては政府が抜本的見直しを行うため廃止リストには入れにくいなどの事情がある。そのため政府が目指す三兆円のリスト作りには二兆五千億円の「義務教育費国庫負担金」の扱いが大きな焦点となっている。
 義務教育問題はこの日の会議で最も白熱した議論となった。「教育は国の責任だ」(東京都)、「義務教育は非常に大切で、きちんと財源保証されている。現場での使い勝手も総額裁量制で良くなった」(鳥取県)、「義務教育を廃止リストにあげるなら、どの知事が廃止に賛成、反対したか記し、後世県民の批判を仰げ」(愛媛県)など義務教育費国庫負担金を廃止リストに加えることに反対する意見が相次いだ。また三重県知事は義務教育のリスト入りに反対するとともに、私学助成を取り上げ国庫補助の実施によってかつて六倍もあった各都道府県の私学助成の格差が一・六倍にまで縮まったことをあげ、「教育は地域によって格差が出るような状況は良くない」と国の私学助成の堅持の必要性も強調した。
 その一方で「一般財源で運営されている県立高校の現場が、がたがたになっているという例があるのか」(神奈川県)、「義務教育、公共事業を含めて聖域なし。去年議論したことを前提に進むべきだ」(北海道)、など賛成論も複数の知事が主張、意見の集約は難しい状況だ。しかし全国知事会では内部での検討を進め、八月の会議で結論を出す考えだ。意見の集約方法としては多数決も考えられるが、その場合、全国知事会の結束にひびが入りかねない。
 そのほかこの日は麻生太郎総務大臣が出席、三位一体の改革については「地方分権のためには千載一遇のチャンス」とした上で、義務教育問題については経済財政諮問会議で改めて検討することを明らかにした。

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