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記事2004年8月13日 1945号 (3面) 
中央教育審議会の審議動向
高校卒業程度認定試験17年度から実施
総会 「大検」見直しで答申
教委のあり方、教育基本法も議題に
 中央教育審議会は七月二十九日、都内で第四十一回総会を開き、大学入学資格検定の見直しに関する答申をまとめた。答申はこの日、委員から出された意見をもとに一部修正され、八月六日に河村建夫・文部科学大臣に提出された。

 今回の、いわゆる「大検」の見直しは、平成十五年九月に制度改正が行われ、大学入学資格については、各大学の個別審査で判断できるようになり大検が高卒に代わる唯一の高等教育への経路ではなくなったため、従来の機能は維持しつつ、就職等にも広く活用されるよう見直しをしたもの。
 新試験の名称は「高等学校卒業程度認定試験」。平成十七年度から実施の予定。必受験教科は、国語、地理歴史、公民、数学、理科、英語の六教科。また現行では認められない高校全日制の生徒の受験が可能となった。
 新試験に関しては、高校の全日制課程の生徒にも受験を認めることから、高校教育からの安易なドロップアウトが増えことを懸念する意見も聞かれたが、そうした点は部会審議ですでに十分検討してきたことなどが説明された。
 これに関連して中教審の鳥居泰彦会長は、高校教育のグランドデザインについても改めて検討の場を作ってもらいたいと文部科学省に要請した。
 この日の総会では、このほか地方分権時代における教育委員会のあり方を検討している中教審の地方教育行政部会の審議状況が報告され、検討された。教育委員会のあり方に関しては委員から「イデオロギーの時代は終わった。コストをかけて維持する意味がどこまであるのか。ある程度大きな変化を制御できるシステムを残してケーススタディーをしていくことが必要だ」「教育委員会に関しては運用上の問題がほとんど。きちんとやっているかチェックが先」「教育委員会の存続は必要。教育のことを考えているところがほかにあるのか」といった意見が聞かれた。
 さらにこの日は教育基本法に関して与党での検討状況が文部科学省の御手洗康事務次官から報告された。それによると与党協議ではまだ解決していない課題があり、文部科学省としては条文の整理まで至っていないことを明らかにした。

浅野知事義務教育費国庫負担廃止を求める
国の私学助成で議論
ヒアリング

【地方教育行政部会】

 地方分権時代の教育委員会のあり方について検討を進めている中央教育審議会の教育制度分科会地方教育行政部会は、八月九日、都内で九回目となる部会を開き、地方教育行政に関係する九団体から意見を聴取した。この日、意見を述べたのは、指定都市教育委員教育長協議会、全国市長会、全国町村教育長会、全国都道府県教育委員会連合会、全国知事会、全国市町村教育委員会連合会、全国都市教育長協議会、中核市教育長連絡会、日本体育協会。
 このうち全国知事会は、社会文教調査委員長の浅野史郎・宮城県知事が私見とした上で意見を述べた。浅野知事は、「教育委員会制度には決定的な問題点はないが、不満は大いにある。多くは運営上の問題だと思うが、教育行政を教委と首長部局に分けて執行していることは気分が良くない」などとした上で、「教育委員会が文部科学省をみているのは問題だ。義務教育に関しては国の責任があまりにも強すぎる。教育サービスの基本は地域サービスだ」とした。また義務教育費国庫負担制度については、「国が二分の一を出すという方法論が分からない。廃止しても義務教育の根幹は制度的に維持できる」との考えを示した。さらに私立高校等に対する私学助成にも触れ、「(三位一体改革で)廃止リストに入れることで合意している」としたことから、田村哲夫委員(渋谷教育学園理事長)が私学助成は保育所や病院と違いかかる費用が公私間で大きく違うことを挙げ、国庫補助が解決していない格差の是正を下支えしていること、ドイツでは行き過ぎた地方分権から深刻な学力低下を招いていることを指摘、私学助成を廃止した場合の問題点を強調した。これに対して浅野知事は「国庫補助がなくなっても私学助成は同じレベルでやる。ただし予算を削ろうという誘惑はある。削るかもしれないし、増やすかもしれない。他の分野と同じ」と答え、あらゆる施策は住民にチェックされることを強調した。
 私立学校に関しては、このほか指定都市教育委員教育長協議会が市長の権限のうち「私立学校・幼稚園」については教育委員会の権限とすべきだといった意見を表明。
 また全国市長会は、教育委員会を設置するかどうかは市長の選択とする制度の検討を提案した。
 このほか教育委員会に関係する団体は、現行制度の維持を、また市町村レベルの教育委員会は一層の権限の委譲や広域事務組合の導入の検討などを求めた。

助成削減想定した人づくり
パネル討議で提案
21世紀大学経営協

 特定非営利活動法人二十一世紀大学経営協会(理事長=宮内義彦・オリックス株式会社会長)は、七月二十六日、昨年十二月の設立後、初の年次総会となる平成十六年度総会・記念セミナーを東京・渋谷の青山学院大学総研ビルで開催した。
 午後から行われた記念セミナーは、セミナーテーマを「今問われている大学ガバナンスとは」として、前三重県知事の北川正恭・早稲田大学大学院教授による基調講演と、金山仁志郎・青山学院常務理事ら六人によるパネル討議が行われた。
 パネル討議では、今後大学は授業料も私学助成金も削減されることを想定した組織・人づくりが肝要だといった意見などが出された。
 (近く記念講演等の詳報掲載)

高等教育の将来構想審議
大学基準協日弁連財団 認証評価機関誕生へ

【大学分科会】

 中央教育審議会の大学分科会は、八月六日、東京都内で、第三十六回の会合を開き、高等教育の将来構想(グランドデザイン)について、制度部会や大学院部会でこれまで行ってきた審議を踏まえて話し合ったほか、大学基準協会(会長=清成忠男・法政大学総長)と日弁連法務研究財団(理事長=新堂幸司・東京大学名誉教授)を第三者評価機関として認証することが適当との答申を行った。
 グランドデザインの審議に先立って、制度部会と大学院部会での審議の中間報告が行われた。
 制度部会では、「学部・大学院を通じて『学位を与える課程』というプログラム中心の考え方に整理が必要」との指摘、「社会人や留学生が増加していることを踏まえ、誰もがアクセスしやすい高等教育システムの構築が求められている」との意見、質保証について「事前規制と事後チェックの適切なバランスが重要」などといった意見や指摘が出されている。
 大学院部会では、「課程制大学院(特に博士課程)の充実」や、「修士・博士・専門職学位の各課程の役割・目的や学士課程との関係を整理する必要がある」、「全体として規模が拡大していく中で、真の高度化、個性化、活性化を各大学がはかる必要がある」といった問題提起がある一方で、「学生・教員の流動性が低い」「施設・設備など教育研究機能の多くを学部に依拠している」といった課題も指摘されている。
 大学分科会では、これらの意見を盛り込んだ上で、平成十七年度から十五年程度先までの、高等教育の全体構造に関する将来構想、そこに至るまでの中期的な施策の方向性について、さらに半年ほど審議を重ねていく。
 認証が適当との答申がなされた大学基準協会と日弁連法務研究財団は、事務手続きを経て、早ければ今月中にも、文部科学大臣の認証を受けて、初めての認証評価機関となる。大学基準協会についての答申では、認証評価と加盟判定審査・相互評価の一体的な運用、会員校以外の評価、相互評価の名称について検討を求めることなどが留意事項となっている。

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