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記事2006年12月3日 2050号 (2面) 
中央教育審議会の審議動向
FDと教員養成で意見発表
共通試験提案、英国事例も
【大学分科会制度部会】
 中央教育審議会大学分科会制度部会(部会長=安西祐一郎・慶應義塾塾長)は十一月十七日、都内で会合を開いた。教員養成とファカルティ・ディベロップメントをテーマに、潮木守一・桜美林大学大学院国際学研究科教授、加藤かおり・新潟大学大学教育開発研究センター助教授が意見発表した。潮木教授は「大学教員の教育力の向上」と題し、意見発表を行った。現在の学部教育の実態として、一クラス三、四百人といった大量受講生を教える「大量生産教育」を指摘。不合格になれば、次学期に再び受講することになり、混雑した教室がますます混雑する。これも不合格にできない理由の一つだという。一方で、学習意欲のある学生は私語の横行する大学への幻滅、勉強しなくても単位は取れることから、意欲は低下していく状況だと話した。
 そこで大学への社会的信頼を取り戻すため、「第三者機関による学力評価」「共通教科書の編集作成」「共通試験による評価」を提案した。
 教員は共通試験のための準備教育のコーチ役とし、学生が分かるまで指導。合格率による授業評価を行うことで、現行の人気投票より合理的だと強調。単位認定の基準は八割以上取らなければ認定しない大学、二割でも認定する大学さまざまとしている。実現の可能性は、全分野で全国一斉導入は困難であるため、できる分野、希望する大学から導入することを提案した。潮木教授は「大学設置基準で一クラスの受講生の上限を設定してほしい。数値基準が必要」などと話した。
 一方、加藤助教授は「英国における大学教員の教育力向上策」を発表した。学習教授活動と研究活動の両方に従事するスタッフを「アカデミック・スタッフ」としていて、学習教授(L&T)の能力開発の向上などを行っている。
 近年英国で活発なL&T取り組みの背景としては、学習中心の教育への徹底的な転換がある。学習社会、知識社会で生き抜く人材を育成することが目的だ。
 FD実践の現場では、学習理論や方法論の適用を可能にする学習プログラムが求められ、プログラム開発のための基準枠組みを作成することを提案した。作成プロセスにおいて、同時に、全国的な教育開発担当者の育成、開発を行い、また地域ネットワーク的な相互協力のための仕組みもつくることを提案した。

免許更新制の具体策検討

【初等中等教育分科会教員養成部会】
 中央教育審議会教員養成部会(部会長=梶田叡一・兵庫教育大学長)は十一月十五日、都内で会合を開き、部会の下に設置した「教員免許更新制の導入に関する検討会議」からの報告を受けた。委員からは免許更新の際、講習の開設は課程認定大学に限ることや、十年経験者研修について、廃止を求める意見が多くを占めた。
 検討会議主査の山極隆・玉川大学学術研究所教授が経過報告を行った。
更新制の対象者を教職には就いていないが教員免許状を保有するいわゆる「ペーパーティーチャー」にも適用すると、コストは膨大になることから、採用内定者や実際に教職に参入する見込みのある人、現職教員に重点化すべきとの意見がある。講習の開設者は、原則課程認定大学を含め「広く一般大学」、例外的に文部科学省の個別審査を経て教育センターでも一部開設を認めてもよいという意見もある。講習の実施に伴い、十年経験者研修については、現職教員の負担軽減の観点から廃止・見直しを行うべきとする意見や、更新講習の一部として代替すべきとの意見も出されている、と報告した。
 会合で委員からは、講習開設者について「課程認定大学に限るべき。十年研も原則廃止の方向で進んでいくべき」(佐々木正峰・独立行政法人国立科学博物館長)、「教育センターなど多くのところでやると基準が問題になる。開放性の原則からも課程認定大学が信頼できる」(渡久山長輝・財団法人全国退職教職員生きがい支援協会理事長)、「課程認定大学に限るべきだが、情報公開をしっかり行う」(石川県金沢市教育長)など、免許更新制の講習開設者は、課程認定大学で行うべきとする意見が多数出た。
 一方、免許更新が十年目と想定しているため、十年経験者研修との関係については「更新制が導入されるなら(十年研)廃止を含めて検討するのが筋道だと思う」(高倉翔・明海大学長)など、更新制導入なら、十年経験者研修の廃止を求める意見が多くを占めた。

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