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記事2006年6月13日 2025号 (2面) 
中央教育審議会の審議動向 教育実習は母校実習を禁止
教職実践演習仮称2単位増加
私大の反発を懸念
教育実習は母校実習を禁止

【教員養成部会】

 教員の資質向上策について議論している中央教育審議会教員養成部会(部会長=梶田叡一・兵庫教育大学長)は六月八日、都内で会合を開き、学部段階の教職課程の改善・充実に関わる方策として打ち出した「教職実践演習(仮称)」について総単位数を増やして二単位科目とする方針を決めた。さらに教育実習については母校実習を避けることとした。
 同部会では昨年十二月にまとめた中間報告を受け、新設が提言された教職実践演習(仮称)についてのカリキュラムイメージ、教育実習の改善・充実、「教職指導」の充実、大学における組織的指導体制の整備などについて部会の下に協力者グループを設け検討してきた。
 当初、教職実践演習(仮称)について中間報告では最低一単位、二単位必要だとする意見もあり、さらに検討が必要としていた。だが今回、二単位科目として新設する方向が示され、単位の措置方法については「総単位数」を二単位増やして措置とした。
 単位数に関して関係団体の意見は、日本私立大学連盟は「免許のための総単位数の増加は不適当」と明確な反対姿勢を示している。他方で日本教育大学協会は「大学による一単位の単位認定という扱いが軽すぎる」としている。
 会合で梶田部会長は「私立大学の反対があるのでは」としながらも、総単位数を二単位増やす方向を強調。ほかの委員からも「厳しくした方がよい。安易に(教職)を取る人が減る」などの意見もあった。
 一方で、教育実習の、改善・充実について実習校の選定は、教員養成大学・学部は附属学校における実習を原則とし、必要に応じて、一般の学校における実習も行うとした。しかし一般大学・学部については同一都道府県内の学校における実習を基本とし、いわゆる母校実習については、評価の客観性等の点で課題があることから避けることとしている。
 十分な成果が見られない学生については教育実習に出さない、場合によっては実習中であっても取りやめるといった厳しい姿勢を示している。
 同部会では六月十六日に開かれる会合から答申への素案作りに入るとみられる。答申にはこれらのほか、現職教員を含んだ教員免許の更新制の導入などが盛り込まれる予定だ。
ピアレビューの視点
実務家教員担い手に必要

【教員養成部会専門職大学院WG】

 中央教育審議会教員養成部会専門職大学院ワーキンググループ(主査=横須賀薫・宮城教育大学長)は六月六日、都内で会合を開き、委員の岩田康之・東京学芸大学教員養成カリキュラム開発研究センター助教授が「実務家」教員の在り方について意見発表を行った。岩田助教授はともに学ぶピアレビュー的な視点を持つことが実務家教員にとって必要であると指摘した。
 専門職大学院設置基準では必要専任教員のうち三割以上は、専攻分野に関し五年以上の実務経験を有する者としている。
同ワーキンググループで検討している教職大学院において、中間報告では必要専任教員に占める実務家教員の比率をおおむね四割以上とすることとしている。
 岩田助教授は教職大学院では、学校現場での実践経験のある教員も多く入学することが想定されるため、「実践経験を持つ大学院生」と「実践経験を持つ大学教員」の腑分けの難しさを指摘した。
 そこで実務家教員として望まれる資質について、知識や事例の豊富さより、事例の相互交流・構造化のコーディネーターとしての力量が求められることを強調した。
 さらに理論と実践の架け橋を体現でき、上から「伝える」姿勢よりも「ともに学ぶ」というピアレビューの視点を持つ人を挙げた。
留学生の就職支援充実

【大学分科会大学教育部会】

 中央教育審議会大学分科会大学教育部会(部会長=木村孟・独立行政法人大学評価・学位授与機構長)は六月六日、都内で会合を開き、留学生交流について二宮皓・広島大学副学長と横田雅弘・一橋大学留学生センター教授が意見発表を行った。発表では留学生への就職支援の充実を求める指摘があった。
 二宮副学長は「優秀で意欲のある留学生の確保方策等について」をテーマに発表。日本の大学の積極的な情報公開と知名度(ポピュラリティー)の向上、大学の効用を含め日本留学のキャリアパス(就職支援)の開発努力、短期学生交流プログラムを大幅に拡大することなどを述べた。
 さらに政府による民間財団などの奨学金の国際公募と直接公募の支援方策を求め、多様性の確保と日本留学のブランド化を強調した。
 また二宮副学長による国別にみた優秀な大学院留学生についての調査では、最も優秀とされるのがドイツ、次いでアメリカ、インド、ロシア、フランスと続いている。二宮副学長は欧米の優秀な大学院生について「ヨーロッパ諸国では欧州圏内で行き来し、アメリカの学生はほとんど動かないことで知られている」などと話し、確保の難しさも指摘した。
 一方、横田教授は「アジア諸国の留学生政策と日本の大学」と題し、日本の大学の国際化の現状のアンケート結果をもとに発表した。それによると国際化のビジョンは、公立と私立では八五%がビジョンを持っていない。国立でも六〇%が持っていない。就職支援では留学生数が三百人を超える大学の六〇%で支援があるが、一般に国私立とも四分の三の大学が支援していない。
 横田教授は「産官学連携が極めて重要になる」と話した。

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