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記事2007年1月3日 2053号 (2面) 
特区評価委 株式会社立学校で文科省から聴取
ガバナンスなどに問題
通信制高校には評価委も懸念
 政府の構造改革特別区域推進本部評価委員会は昨年十二月二十日、「学校設置会社による学校設置事業」等に関して文部科学省から意見聴取した。同省からは金森越哉・総括審議官、杉野剛・私学行政課長らが出席し、学校設置会社や特区を認定した地方自治体、株式会社立学校の教職員や保護者、学生を対象にした昨年十月のアンケート調査結果を報告した。
 それによると学校経営面では十六社中十二社が設置する学校で大幅な定員割れを発生、逆に二社の設置する学校では著しい定員超過の状態だった。また特区法に定めのある業務状況書類の備え置きが適切に履行されていない事業者があったほか、法の定める受験希望者ら関係人への財務情報の公開義務違反、補助金の不正使用の例が見られた。教育研究面では、学校設置会社が設置する民間教育機関における設定講座のすべてを大学における正規科目(専門科目)として受講でき、なおかつ単位認定を可能としていた大学、義務付けられた事後評価が必ずしも十分行われていなかったこともわかった。
 認定地方公共団体に関しては、万一の場合のセーフティネットの整備が義務付けられているが、実際のセーフティネットの整備に向けた事務は大学が独自に行うこととしていた事例が多く見られた。この特例措置(株式会社による学校設置事業)の全国化に関しては回答した二十六認定地方公共団体のうち二十一団体が「引き続き検証が必要」「わからない」と回答(八四%)、「全国化すべきではない」との回答も二団体あった。「全国化すべきだ」との回答は二団体だった。同省はこうした問題が株式会社立という設置形態によるものなのか判断は難しく、結論を出すには材料不足であることなどを強調した。この特例措置の全国化については評価委員会もさらに一年をかけて検討が望ましいとの方針。同委員会の教育部会長を務める金子郁容・慶應義塾大学政策・メディア研究科教授は「学校法人制度そのものの緩和の方が問題は少ない。一緒に検討しよう」と文部科学省側に呼びかけたほか、「通信制高校にはかなりの懸念を持っている。ガバナンス体制に問題がある。どう改善すべきか検討が必要だ」との考えを示した。金森総括審議官も単位認定や不登校生へのケアが適切にできているか検証が必要と答えた。通信制高校に関しては、定員割れが顕著で充足率が一割を切る学校もあり、同省の今回の書面調査に対しても十三校中四校が回答を拒否したことなどが明らかにされた。
 その一方で特区評価委員からは「定員割れは大学一般の問題ではないのか」、「ベンチャー企業でも黒字化には五年位時間がかかる」といった意見が聞かれた。

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