こちらから紙面PDFをご覧いただけます。



全私学新聞

TOP >> バックナンバー一覧 >> 2007年1月3日号二ュース >> VIEW

記事2007年1月3日 2053号 (1面) 
私学事業団「今日の私学財政」を公表
厳しい私学経営浮き彫り
高校法人半数が赤字
学納金、補助金は減少
日本私立学校振興・共済事業団(鳥居泰彦理事長)は昨年末、平成十三年度から十七年度までの学校法人の財務状況の推移や傾向をまとめた報告書『今日の私学財政』を公表した。報告書によると、大学法人、短大法人、高校法人、中学校法人、小学校法人とも学生生徒児童数の減少を受けて人件費の抑制に努めているものの、十七年度の消費収支状況では、高校法人の五〇%、短大法人の三五%、大学法人の二七%が消費支出を帰属収入で賄えない状態で、改めて私学経営の厳しい現状が浮き彫りになった。学校種ごとに法人の財務状況をみると――。

目立つ寄付金の増加傾向

 (大学法人)一法人当たりの資産は十三年度の四百四十八億五千三百万円から五年間で〇・七%増加していた。
 構成比率でみると、五年間に土地や建物といった有形固定資産が五九%の水準で推移しているが、各種の引き当て特定資産といった、その他の固定資産の比率は二・〇ポイント上昇し二五・四%に、流動資産の比率は二・〇ポイント下降し一五・八%となった。一法人当たりの負債総額は五年間に九・二%減少し六十九億九千三百万円。基本金も増加傾向で五年間に六・四%増加した。一法人当たりの消費収支差額の支出超過額は、八三・一%増加していた。
 消費収支の状況をみると、一法人当たりの帰属収入は平成十三年度以降減少を続けていたが、十七年度は一法人あたり一億五千七百万円増え、百八億四千三百万円となった。学納金、補助金、手数料が減少する中、寄付金の増加が目立った。
 消費支出は、人件費抑制(五年間で四・五%減)に努めたものの教育研究経費の増加から四年間低下傾向にあったが、十七年度に増加に転じた。基本金組み入れ額は、十六年度から十七年度にかけて二・一%増加した。
 帰属収入で消費支出を賄えない大学法人は十七年度に前年度と比べ十五法人増加し、集計法人(五百四)の二七・四%に広がった。単年度の赤字経営≠ェ即座に経営危機となるわけではないが、経営が窮迫していることに違いはない。
 (短大法人)短大法人の資産は、五年間に七・四%減り、十七年度は一法人当たり八十二億八千五百万円となった。構成比率でみるとその他の固定資産が上昇、その背景には有価証券の蓄積があるとしている。一法人当たりの負債総額は五年間に一一・四%減少したが、基本金も五年で二・〇%減少した。消費収支差額の支出超過額は十三年度の二千七百万円から十七年度には三億七千百万円と大幅に増えた。
 消費収支状況では、一法人当たり帰属収入の低下傾向に変わりはなく、それに合わせて人件費が六・一%減少、基本金組み入れ額も十六年から十七年度の一年間で一八・五%も減少していた。
 帰属収入で消費支出を賄えない短大法人は十三年度に八十五法人(集計法人百八十九法人中、四五・〇%)あったが、短大法人数が減ったこともあり十七年度は五十一法人(同百四十七法人中、三四・七%)に。借入金等収入は、それまでの低下傾向から一転、十七年度に大幅増額した。

平成17年度
中学法人は支出超過に

 (高校法人)一法人当たりの資産は五年間、横ばい状態で、負債は九・七%減少した。
 基本金は十三年度以降増加傾向にあったが、十七年度になって五年間で初めて前年度比減少となった。これは学校法人会計基準の改正による基本金の取り崩しが行われた結果、としている。
 消費収支状況をみると、一法人あたりの帰属収入はほぼ横ばい状態。そのうち五年間で学納金が三・四%減少、補助金も四・九%減少していたが、寄付金額の増額が帰属収入の落ち込みを食い止めた。
 ただし寄付金の急増は一部法人による影響。消費支出は人件費が三・五%減少したが、教育・管理経費が七・七%増えたため消費支出全体では五年間、横ばいの状況。
 帰属収入で消費支出を賄えない法人は十三年度の三六・四%から、十七年度にはついに五〇・〇%となった。
 (中学校法人・小学校法人)集計法人数がそれぞれ十前後と少ないが、消費収支状況では、両法人とも十六年度から十七年度の間、帰属収入、消費支出が減少した。中学校法人は十六年度の収入超過から支出超過に転じ、小学校法人は消費収支差額を僅かに収入超過で維持している。

記事の著作権はすべて一般社団法人全私学新聞に帰属します。
無断での記事の転載、転用を禁じます。
一般社団法人全私学新聞 〒102-0074 東京都千代田区九段南 2-4-9 第三早川屋ビル4階/TEL 03-3265-7551
Copyright(C) 一般社団法人全私学新聞