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記事2007年10月13日 2079号 (3面) 
インタビュー 東京都生活文化スポーツ局私学部 部長 小濱 哲二氏
私学の自主性尊重基本方針に
建学の精神に基づく特色教育都民の高い信頼
六月一日、東京都生活文化スポーツ局の私学部長に小濱哲二氏が就任した。都の私学行政についての基本的方針、現在問題となっている事項についてお話を伺った。


 ――都の私学行政を進めるに当たっての基本的方針を教えてください。


 小濱部長 都内の私立学校に通う児童・生徒数等は、幼稚園や専修学校では九割、高校では五割を超え、私立学校が東京の教育に果たしている役割は極めて大きい。私立学校法一条にあるように「私立学校の特性にかんがみ、その自主性を重んじる」ことが、基本方針と考えている。

 私立学校の特色として、一貫教育、男女別教育の実践、宗教教育の実践が挙げられている。開学時から脈々と流れている建学の精神は公立とは大きく異なる。
 未履修問題に端を発し、私学の自主性の論議が行われたが、都議会において、都知事は「私立学校は建学の精神に基づき、創意工夫による教育が行われており、都民から高い信頼を得ている。今後も、その自主性を尊重し、振興を図っていく」と答弁している。
 今後も、この考え方に基づき私学行政を進めていく。

 ――未履修問題に関連し、私学の自主性・独自性について、どうお考えですか。

 小濱部長 学習指導要領の教育内容の部分は、どの学校でも当然守るべきである。しかし、その教え方などについては、学校や教員それぞれのやり方があると思う。
 中学校の未履修について、授業時間数が少ないことが問題といわれているが、大切なことは学校として子供にとって何が教育効果が高いことかを考え、教員一人ひとりが、子供にどのように教え、学力や考える力をはぐくむことではないか。そのためには子供の顔を見ながら、この子は今何を考えているのか、教師や学校として何をすべきか、現場での判断が尊重されるべきである。
 そのためにも、私学の自主性・独自性は非常に大切である。

 ――大学合格の実績上乗せの問題について、どうお考えですか。

 小濱部長 これは、未履修とは違い法令うんぬんではなく、あくまでも学校側のモラルの問題であり、行政が言う問題ではない。行っていることは正しいことではなく、褒められないが、その後の対応として、中高連が申し合わせを行ったことは、私立学校が私立学校法の精神をきちんと受けとめているということではないかと考えている。

 ――平成二十年度の都の私学振興予算に向けての方針について、教えてください。

 小濱部長 経常費補助事業を中心に、私立学校の(1)教育条件の維持向上(2)保護者の経済的負担軽減(3)私立学校の健全性を高めていきたい。特に二十年度は、都が策定した「十年後の東京」の実現に向けた実行プログラムの初年度であり、私学部としてもこれに向け、事業を構築し、予算を確保していきたい。
 私学部が検討している実行プログラム関連の事業は三事業ある。耐震化促進事業、緑化促進事業、認定こども園推進による保育所待機児童の解消である。私立学校の耐震化については、二十年度から三年間で集中的に実施できるように充実させたい。緑化促進については、主に校庭の芝生化事業を考えている。まず、私立幼稚園でモデル事業として実施できるよう検討している。認定こども園については、現在九園が認定を受け、幼稚園型について九月に初めて認定された。子育て支援という観点から引き続き都独自の補助制度により設置を促進していきたい。

 ――教育費の公私間格差については。

 小濱部長 平成十八年度の高校での授業料を公私で比較すると、私学が四十万四千円に対し、都立は十一万五千円。また、入学金・施設費等を含めた初年度納付金は、私学が八十四万三千円に対し、都立は十二万一千円となっている。
 都としては、経常費補助を行うほか、平均収入以下の世帯に対して、高校の授業料軽減補助を行い、保護者の経済的負担の軽減を図っている。

 ――私立学校への要望はありますか。

 小濱部長 教育に対する都民の期待は非常に高い。私学は今までも自主性が認められているからこそ、一貫教育や帰国子女教育、習熟度別教育など、教育効果の高い手法を生み出してきた。これからも私学の自主性、その前提としての自律性に基づき、日本を支えるための教育を実践してもらいたい。
 また現在、少子化が進行しており、今後さらに進行していく。当然生徒確保は難しくなり学校経営はますます厳しくなる。このような時代に、学校は目先のことにとらわれず、長期的な視野で公教育を担ってほしい。その自覚の上で、創意工夫を行い、子供本位の教育となるようにしてほしい。
 学校に本来求められている、知識の教授だけでなく、日本を背負って立つ人材の育成をこれまで以上にしっかりと行われることを期待している。

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