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記事2007年8月3日 2073号 (1面) 
私学事業団研究会が最終報告
経営困難への対応など提言
早期に募集停止
転学支援の充実も必要
日本私立学校振興・共済事業団の「学校法人活性化・再生研究会」(清成忠男座長=学校法人法政大学学事顧問)は、八月一日、学校法人の経営困難状況の克服策や破たん後の課題、対応策等を提言した「最終報告」をまとめた。就学人口の減少から私立大学の約四割、私立短期大学の約六割が定員割れを起こす中で、経営困難な学校法人への再生支援から破たん処理までの各段階で私学事業団、国、地方自治体、私学団体等の関係機関が果たすべき役割について提言しているのが特徴。

 「私立学校の経営革新と経営困難への対応」と題した最終報告は、同研究会が平成十七年十月以降、二年近くをかけて検討してきたもので、主に、(1)経営が正常な状態(2)経営困難な状態(イエローゾーン)(3)自力再生が極めて困難な状態(レッドゾーン)(4)破綻した後、に分けて、学校法人が行うべき対応策や、国や私学事業団など関係機関の支援策を提言している。
 このうち正常な状態に関しては、「教育研究活動によるキャッシュフローが黒字で、かつ外部負債も十年以内の返済が可能で、さらに帰属収入から消費支出を控除した帰属収支差額もプラスな状態」と定義した上で、良好な経営基盤を持続させ、教育研究活動をさらに活性化させることを支援するため、大学等のコンソーシアムによる単位互換等の大学間の連携を、国公私を含めて推進すること、経営人材等の育成のための研修機会の充実、各種研修機関に対する財政的支援、成功事例の紹介等が必要としている。
 イエローゾーンに関しては、「教育研究活動によるキャッシュフローが二年連続赤字か、または過大な外部負債を抱え十年以内に返済が不可能な状態で、経営上看過できない兆候が見られるが、学校法人自ら経営改革努力を行うことにより経営改善が可能な状態」と定義。そうした法人には、経営改善計画の作成と指導・助言、文部科学省の運営調査委員制度の活用、早期に募集停止を行う決断、私学事業団など公的第三者等による合併等の情報提供、再生事例紹介が必要としている。
 レッドゾーンに関しては、「自力での再生が極めて困難な状態」とした上で、私的整理による再生、民事再生には問題点や困難性が多いとし、有効な解決策が見つからず、破綻が不可避と判断される場合には、学校法人の自主的な募集停止が必要としている。自主的に募集停止できない場合には、文部科学省による募集停止の指導、指導に従わない法人の公表等強い措置の検討も求めている。募集停止する場合、資金ショートを防ぎ円滑に閉鎖するための支援措置の必要性も提言している。
 一方、破綻に至った場合は、経営者の責任追及の一方で、学生の転学支援に関してコンソーシアム等で事前に協定を結んでおくこと、近隣の大学の協力、積極的に転学生を受け入れた大学への優遇措置、学籍簿が散逸しないよう保存のあり方、教職員の転職支援の検討が必要としている。
 このほか関連して私大等の基盤的経費への助成拡大、私学事業団の財政基盤の一層の強化も必要と指摘している。

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