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記事2008年10月23日 2113号 (2面) 
公立中高一貫教育は不当廉売
規制改革会議 千葉県教育庁からヒアリング
抽選なく私立と同様の教育を問題視
 総理の諮問機関の規制改革会議教育研究タスクフォース(福井秀夫主査=政策大学院大学教授)は九月十六日、都内の規制改革推進室で千葉県教育庁企画管理部県立学校改革推進課の鈴木清史・主幹兼企画調整室長から今春開校した県立千葉中学校(県立千葉高校併設型の中高一貫教育校)入学者選抜等について聞き取り調査を行った。公立中高一貫校が全国に広がる中で、一般の中学校とは違う教育を行いながら全額税金で賄われる公立一貫校の存在に一石を投じるものとなった。

 規制改革会議側は、「民間ができることは民間に」との大原則の下、県立の中高一貫教育に関して所得要件を課さないことから、入学者の中に高額所得者の家庭の子弟もいる可能性もある中で県が無償の形で(高校は月に約一万円の授業料)直接中高一貫教育に乗り出した理由などを質したが、県教育庁から同会議委員を納得させる理由はなく、また私立学校では行っていない、あるいはできない教育、全額税金を使う公立学校だからこそできる教育、公立学校が担うべき役割についての回答も求めたが、明確な回答は聞かれなかった。同会議は不当廉売ではないかとも指摘している。
 公立中高一貫教育校をめぐっては、かつて高い進学実績を誇った県立高校が県立中学校を併設しリーダー育成などを行う例がしばしばみられる。
 公立中高一貫校に関しては、私立学校のように学力検査を課すことはできない決まり。しかし実際は、それに代わる「適性検査」が行われている。適性検査に関しては学力検査と違いが不明確との指摘もあり、今回のヒアリングではその点も問題の一つとなった。
 今春の入学者選抜では県立千葉中学校の男女各四十人合計八十人の募集定員に対して二十七倍から二十八倍(約二千二百人)の応募者があった。一次検査の段階で競争倍率が三十倍を超えた場合、抽選を行い志願者の絞り込みを行うとしていたが、ギリギリのところで抽選は行われなかった。
 県教育庁では早回しの先取り教育は行わず、中学校卒業者は全員高校に受け入れるなどの措置を取るとしている。また今まで入学できなかった層が中高一貫教育校にはいっていけるようになるため、私学の経営を圧迫するというほどのことにはならないだろうと思っている、と回答したが、入学した生徒やその家庭の属性などは調べておらず、私学と志願者がかなり競合していたのか、入学者の中に通塾者がどの程度いたのか(塾に通わなくては入学できないのか)などは全く不明。
 同校は義務教育のため、入学金も授業料もなく経済困窮者を優先するような規定はない。しかも県教育庁肝いりの県立中学校ということで、土曜日には講演会などの「プロジェクト」を行い、補習を順次行っていく方針で、一日七時間授業も行うことにしており、同校のパンフレットでは勉学面の厳しさを強調している。
 規制改革会議は、県内東大進学トップ校の渋谷教育学園の田村哲夫理事長からもヒアリングを行っている。
 この問題が規制改革会議の答申に上るのかは未定だが、同会議では「政策論ではなく法律論として問題を整理していきたい」と語っており、法律論から考える公立中高一貫教育には私学関係の注目が集まりそうだ。
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