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記事2008年11月13日 2116号 (1面) 
新時代の短期大学の役割と教育機能 中間報告
佐藤日短協会長が説明
学士課程教育の前半担う役割
学習社会における国民のセーフティーネット

佐藤会長

 日本私立短期大学協会(会長=佐藤弘毅・目白大学短期大学部理事長・学長)の平成二十年度秋季定期総会では、待たれていた「新時代の短期大学の役割と教育機能」(中間報告)が議案として出され佐藤会長が概略を説明した。その概要を報告する。

 中間報告は四章からなっています。「第一章短期大学の軌跡と現状」では、六十年に及ぶ短期大学の教育について改めて整理しました。
 「第二章新時代の短期大学像」では、新たな短期大学の役割について、二十一世紀の社会では高度な課題解決能力や知識が求められること、生涯教育需要が増大すること、二十一世紀型市民を視野におき高等教育全体の流れのなかで、短期大学にはどのような期待が寄せられているのか。
 新たな短期大学の教育機能は、学士課程教育の前半部分を担う役割があること、専攻科を経て学士の学位を得ること、地域の各種教育に対応し地域に貢献する役割を今後とも強く担うこと、さらに、増大する留学生、外国からの研修生・労働者を対象にした具体的な方向性が必要であろうとしています。そして、地域活性化や地域分権化の促進にも可能性を秘めていると解釈しています。
 知識基盤社会では短期大学はその優れた特色から二十一世紀の学習社会の主役になる可能性を秘めている。
 二十一世紀社会を担う国民の教育水準・能力水準として、全国民に少なくとも短期大学士に相当する教育・能力を提供する、そういう意味において短期大学は学習社会における国民のセーフティーネットとしての役割を認識することが可能であると記しています。
 短期大学の新たな教育機能については、まず、二十一世紀型市民教育の推進です。その第一は国民のジェネリックスキルの育成です。二番目、三番目は職業教育です。職業教育こそ短期大学本来の重要な使命、しかも第一の使命といって差し支えないと考えます。一方、地域の人材ニーズに対応した教育をより短期大学は力を入れていく、地域密着の特色を存分に発揮し、地元の社会に即応できる高等教育としての機能を強化することが求められます。
 一方、大学の学士の学位への接続教育も大きな機能としてあります。大学編入のための指導、教育、学士課程前期相当の教育、あるいは海外大学との提携による留学編入教育あるいは専攻科を活用した学士課程教育、併設大学を持つ短期大学なら短大・大学連携課程なども大きいと思います。地域の生涯学習については、非学位課程は規制に縛られることなく多様なプログラムを展開できますので、これに挑んでいきたいと考えています。さらに外国人留学生の教育は、短期大学の少人数制、柔軟できめ細かい教育から、短期間で実効性をあげることができます。外国人労働者・研修生の教育についても、短期大学は地域に根ざした指導に最適です。
 「第三章短期大学の再構築に向けて」では、学位課程の教育、専攻科を活用した教育、生涯学習拠点の三つに区分しています。第一の学位課程教育は、従来もこれからも短期大学の中核であることに違いはありませんが、質の高い教育をさらに追求することが求められます。人間教育を基本にした実務教育・職業教育を、豊かなキャンパスライフを享受しながら行うという特徴を継承・発展させていくこと。また、短期大学卒業生は「創造性と効率性を備えた、真に社会の中核を担う良質で勤勉な社会人でありわが国の人材立国を支える中堅実務者」と定義しました。そうした観点から人材育成にまい進していきたい。大学の大衆化時代には、専門教育といっても既に専門基礎教育に変化している事実を改めて確認し、短期大学はその専門基礎教育を担っていくことが求められます。それから、職業一般に必要な実務能力の育成と、特定分野の専門職業能力の育成とを整理大別しながら、多様で効率的な職業教育を展開することが求められます。その際、資格取得を目的とするのではなく人間的な成長を期すこと、職業教育を自信をもって展開していくことを指摘しています。
 また学位課程については「将来像答申」の「三つの方針」、ディプロマポリシー、カリキュラムポリシー、アドミッションポリシーを明確にし、自学が創造していく学生像を明確にすることが何より大切だと考えています。
 専攻科については、学士の学位取得にのみならず、多様で柔軟なプログラム展開が可能であることを指摘しています。
 生涯学習拠点としての短期大学については、短期大学の努力不足もさることながら、社会的枠組みが未整備だったと認識しています。社会全体は終身雇用制度が崩壊の途上にあり、従来の生涯学習と現在考える生涯学習が違うだけでなく、将来の生涯学習にはもっと大きな変化がやってくる。やがては、大学と社会、大学と職業の間を一生の間に何度か行き来する循環型社会の到来も想定されます。報告書で強調しているのは非学位課程での展開です。地域の学習ニーズに対応したプログラムを開発し、例えば地域開発や社会人スキルアッププログラム、非就労者対象学習プログラム、地域企業等による注文プログラムなど、多様な展開とその開設に努力することを求めています。また履修証明制度を活用して、学習到達度を証明する制度を短期大学自らが開発することも提言しています。こうした制度を整え、将来の学位取得に道を開く、あるいは公的機関を通して離職者等受け入れの枠組みを作っていく、などにより、短期大学が地域のセーフティーネットとして機能する可能性も探求していくことを示唆しています。
 新しい機能を追求するためには、短大の努力だけでなく、協会全体を挙げあるいは協同して教育の質保証を果たしていくことも述べています。
 「第四章短期大学団体や国等の取り組み」では、協会などが取り組むことを述べています。例えば事務局の充実や専門職員の採用などの施策も積極的に相談・検討すべきとしています。一方、国に対しては、短期大学の自己改革に絶大な支援を要請しています。特に教育行政については短期大学の実情に則したものにトーンを改めていただけるよう述べています。また、短期大学の教育に関し省庁間で連携していただくこと、短期大学の独自の教育目標を示す際には国として併せて公的財政支援の数字を明記すること、制度的枠組みの修正などを求めています。とりわけ、非学位課程に対する公的支援のスキームの創設に向けた検討を求めています。
 最後に、近年の一般補助の一方的な減額、特別補助への傾斜は、短期大学の実態には合わないと指摘しています。また、生涯学習拠点としての支援を国に求めるだけでなく、地方公共団体にも求め、地域がサポートしていくという発想の転換と具体的な枠組みの整備を指摘しています。
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