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記事2008年4月3日 2095号 (4面) 
今春の首都圏中学入試 日能研調べ
東京では3人に1人が中学受験

 今春の首都圏中学入試は、小学校卒業者数が二十九万五千七百九十二人と昨年より約一万一千人減少したなかで、受験者数は六万一千人と前年より三千人増えるなど新たな展開を見せている。小学校卒業生の中学受験率も二〇・六%(前年一八・九%)に上昇、受験生総数、受験率ともに再び記録を更新した(いずれも日能研調べ、都立・区立一貫校および埼玉・千葉の公立一貫校の受験者も含む)。今年は千葉と東京・多摩地区にさらに公立一貫校が増え、私立中学校受験に影響するのではないかとみられたが、かえって受験率のアップにつながったようだ。ただ、応募者総数は昨年より四千人ほど減少し、ここ数年伸びていた併願校数が五・一校と六年前の数字に戻った。受験生と保護者の学校を選ぶ目が厳しくなっている。一方で、入試日程を増やしているところが多く、合格者数の出し方が非常に難しい入試だったといえよう。


 



 

公立一貫校が新たな受験生掘り起こし
応募者総数は減少

 今年の首都圏(東京・神奈川・千葉・埼玉)私立中学入試の特徴は、小学校卒業者の減少にもかかわらず受験生が増加したこと、受験率がさらに上昇したこと、午後入試がすっかり定着したこと、昨年に引き続いて大学付属の人気が高かったこと、入試日程が増加したこと、などが挙げられる。
 首都圏の小学校卒業者総数が二十九万五千七百九十二人と昨年より一万一千人も減少するなかで、受験者総数(六万一千人)、受験率(二〇・六%)ともに上昇した。受験生増加の理由の一端は新たに公立中高一貫校として、千葉に県立千葉、東京・多摩地区に都立立川国際(母体は北多摩高校)と都立武蔵高校附属が開設されたことがある。これが東京西部地区と千葉で新たな受験者を掘り起こし、特に東京西部では周辺の私立で受験生の増加がみられた。
 首都圏全体の中学受験率も上昇したが、東京の受験率はさらに高く、三〇・九%と昨年より三・五ポイントも増加。東京では小学校卒業者の三人に一人が中学受験をしている計算になる。
 首都圏で前年比受験率の上昇が最も大きかったのが千葉で、三・四ポイントアップの一七・三%だった。公立伝統校である千葉高校の付属中学ということで受験率を押し上げたとみられる。昨年、やはり埼玉で人気の高い市立浦和高校に中学が開設され、埼玉の受験率が高くなった状況とよく似ている。
 埼玉は、今年は一・一ポイント減の一五・八%にとどまったが、昨年は進学実績の高い市立浦和が中学を開設して、受験率が前年比二ポイント以上も上がった。
 神奈川は〇・二ポイントアップの一三・九%で、ここ数年は一三%台で推移している。
 東京・千葉の受験率が大幅に高まったことが、全体の受験率を押し上げ、昨年の記録を更新し過去最高を記録した。公立を含むとはいえ、中学受験は普通のことになっているようだ。


 



 


私立中入試
大学付属、系列校更に人気
多様化で歩留まり読みにくく


今年の私立中学入試の特徴は、大学付属や系列の中学の人気が一層高まったことだ。ここ数年、大学付属は次々と改革を進めており、今年度は、明治大学付属明治が千代田区から調布に校舎を移し、男子校から共学校になった。校名を変更し共学化したのが、日本工業大学駒場(旧名・日本工業大付属)と鶴見大学附属(旧名・鶴見大学附属鶴見女子)だ。明大学付属明治は男子の応募は昨年より百人ほど減ったものの女子が六百人も応募したため、全体としては前年の倍近い応募者があった。日本工大駒場と鶴見大附属は昨年の三倍の応募者を集めた。なかでも鶴見大附属の二月五日の入試は二五・二倍と高倍率の入試となった。
 入試日程も午前・午後入試が定着してきただけでなく、入試日程の細分化やコース別入試、二科目入試・四科目入試など、さまざまな工夫で受験しやすいよう工夫された結果、多くの学校で昨年より入試日程が大幅に増加している。そのためか、昨年より一気に倍率が高くなったところがみられる。例えば大宮開成の二月四日入試では一〇五・四倍、麴町学園の二月五日入試が七三・八倍、横浜富士丘の二月六日入試が七三・三倍、順天二月四日午後入試が七二・八倍など、昨年以上の倍率となった。細分化した日程は、受験生にとって選択の幅が広がった半面、私立中学側としてはどこでどのくらいの合格者を出すか、歩留まりが読みにくくなり線引きが非常に難しくなったといえる。受験生の併願校数は平均五・一校(昨年五・五校)。昨年より〇・四ポイント下がり、六年前の水準に戻った。中学受験が当たり前になってきて、保護者は、進学実績だけでなく、自分の子供をどのように伸ばしてくれるのかという点に注目するようになってきた。情報の入手もしやすくなっているため、受験生・保護者の学校を選ぶ目は一層厳しくなったといえる。
 学校選択の幅を広げている要因の一つに、近年、新線の開通や路線の乗り入れなどで通学の便が一層よくなったことがある。従来であれば地元の私学へ通っていた生徒も、簡単に都県の域をまたいで通学することができるようになってきた。このため流動性が一段と高まり、埼玉・東京・千葉・神奈川が一体化してきているようだ。今年は特に千葉と東京で中学受験率が上昇したが、千葉では昭和秀英、聖徳大学附属、千葉日大第一、国府台女子などで応募者が増加した。千葉日大は入試日程を一日増やして六百人増加、二千人弱の応募者が集まった。
 大学系列では、東邦大東邦が昨年とほぼ同数、芝浦工大柏は昨年より減らしたが三千二百人の応募があるなど、人気は変わらない。市川も減少はしたものの四千人以上の応募者を集めている。渋谷教育学園幕張も応募者が微減したがやはり人気は高い。埼玉では立教新座、埼玉栄、西部文理、濁協埼玉などで増加した。
 人気の浦和明の星女子は応募者を減らしたが今年も二千人以上の応募があった。


 



 

都内の女子校
入試回数を増やす
来春の神奈川では変動≠

 都内私立中学で応募者が増加したのは、男子校では麻布、足立学園、攻玉社、芝、成城、巣鴨、武蔵工大付属など。麻布は微増だが、昨年に引き続いての増加となった。開成、武蔵、海城は微減だった。昨年、増加した分が減少したようだ。早稲田は応募者は減らしたものの変わらず二千人以上を集めた。男子校は数が少ないうえ伝統校も多く、総じて人気は高い。今年は受験生の総数が減ったため、昨年を上回るところは少なかったが、減少幅も少なく、全体としてみると一昨年の数字に戻った感がある。
 女子校では大妻多摩、大妻、大妻中野、鷗友学園、京華女子、晃華学園、佼成女子、麴町学園、女子美大付属、品川女学院、清泉女学院、玉川聖学院、戸板、東京家政大、東洋英和、トキワ松、日大豊山女、日本橋女学館、富士見丘、富士見、文化大杉並、文京学院大、宝仙女子、三輪田学園などで増加。女子校は全体に入試回数を増やしたところが多かったが、応募者自体は、昨年と同様か微減する傾向がみられた。最難関の桜蔭や女子学院は昨年より微減、豊島岡女子は昨年急増したが一昨年のレベルに戻った。難関校では、男子校と同じく一昨年の応募者数に戻ったようだ。女子校は一般に男子校に比べて入試日程が多いのが特徴だが、今年はさらに増えたようだ。女子校も大学付属の人気は高く、文京学院大は五科目・四科目と受験科目が多いものの、すべての日程で応募者が増加した。
 共学校では、國學院久我山、駒込、渋谷教育学園渋谷、桜丘、順天、成蹊、東海高輪台、日本工業大駒場、日大第一、日大第二、広尾学園、宝仙理数などで応募者が増加した。今年目立ったところの一つが順天だ。定員八十人に対し、昨年より六百人以上多い二千二百三十人の応募があった。入試日程は二月一・二・四日の午前・午後に実施、また科目数は二科・四科に分けての入試だったが、一日の午前のみが十一倍だっただけで、あとは二十、三十、四十倍の高倍率で、二月四日午後入試などは七二・八倍だった。改称・共学化した広尾学園(旧名・順心女子学園)は、二月一・二・三・五日の午前・午後、科目数も二科・四科ときめ細かく分けて入試を行い、一日午前入試以外はやはり高い倍率となった。共学校の場合、大半が前年とあまり変わらなかったようだ。
 神奈川では浅野、桐光学園、鎌倉女子大、北鎌倉女子、相模女子大、聖セシリア、横浜英和、横浜翠陵、横浜富士丘、鶴見大附属などで応募者が増加した。キリスト教主義系の学校は根強い人気があり、また進学実績を上げているところも多く、男子校、女子校とも例年安定して受験生を集めている。人気校の一つ、男子校の浅野は微増で、例年と同程度の二千二百二十八人の応募者だった。
 今年の首都圏入試日程の特徴は、入試日を二日間から三日間にし、すべての日で午前と午後の二回入試をするところが増え、全体として入試日・回数ともに大幅に増えたことだ。午後入試は受験生に人気が高いため増えたとみられるが、年々増加傾向にある入試回数が受験生の動きを複雑にし、学校側からみると、合格者の線引きがいちだんと難しくなったといえる。
 入試科目をみると、難関校のほとんどは四科目入試だが、大半は二科目入試と四科目入試を同日に実施するところが多い。一部には二科目だけの入試もみられる。さらに、特選クラス入試や難関大学コースを別枠で実施するところも増えた。
 来年、二〇〇九年度入試では、二月一日が日曜日のため、キリスト教系の学校が試験日を二日に移動する。これが、首都圏入試全体に影響してくるとみられる。また二〇〇九年春には、神奈川の平塚方面と相模原方面に公立中高一貫校が開設される予定でこれが昨年の埼玉や今年の千葉のように神奈川の受験率を上げてくるかもしれない。


 



 

公立一貫校
私立校への影響薄く
周辺私立の応募者が増加

今年開校した都立一貫校の立川国際は応募者数が一千九百三十七人だった。既設の小石川中等教育学校は応募者数が一千二百二十八人で約二百人減少、桜修館中等教育学校は一千九十一人で約百人減、千代田区立九段中等教育学校は九百六十五人で四十人ほど減少し、いずれも一昨年に続いて減少した。白鷗高等学校附属は一千二百三十九人でほぼ前年と同じ。千葉では、新設の県立千葉は応募者二千百六十五人(定員八十人)とかなりの人気となった。昨年開設した稲毛高附属は今年は一千二人だった。同様に埼玉の市立浦和は一千百九十一人だった。東京や埼玉の例を見ても、公立一貫校の開設初年度の応募者は二千人前後となる傾向があるが、次の年からは一千人前後に落ち着くようだ(両国高校と武蔵高校附属は不明)。今後、開設される公立中高一貫校は、前述したとおり二〇〇九年に神奈川に二校、東京は二〇一〇年に中野地区、練馬地区、八王子地区、三鷹地区に開校予定だ。日能研進学情報室の井上修室長は、「公立中高一貫校開設による私立への影響はあまりない。かえって相乗効果で、新設公立一貫校近くの私立中学の応募者が増える傾向にある。中学受験が一般化し、保護者は学校の内容をよく見るようになってきた。進学実績だけでなく子供の力を伸ばしてくれる学校の人気が高くなっている」と話している。
 二〇〇一年開通の新宿湘南ラインは人の流れを大きく変えた。今年三月末には横浜市営地下鉄中山〜日吉間が開通し、六月には東京メトロ副都心線が開通する予定だ。井上室長は、「例えば、サレジオ学院はこれまで、市営地下鉄センター北駅から徒歩十八分だったが、中山まで開通し北山田駅から数分の距離と、アクセスが格段に向上した。こうした例はいくつもある。新線開通で、受験生の動きがいっそう活発になると思う」と話している。

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