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記事2008年6月13日 2101号 (1面) 
橋下大阪府知事 財政再建案など公表
私学助成、全国最低水準へ
小・中学校経常費助成25%削減
公立校には日本一目指し重点投資
 危機的な財政状況から思い切った財政構造改革策の検討を進めてきた大阪府の橋下徹知事は、六月五日、平成二十年度から二十二年度までの三年間を改革集中期間とする「大阪維新プログラム案」を発表した。このうち財政再建では私立小・中学校への経常費助成を前年度比二五%削減、授業料軽減助成も対象者や軽減額を縮小するなど、私学教育に極めて厳しい措置を打ち出している。地方自治体の私学関係予算については、財政事情の悪化から削減傾向が徐々に広がっており、教育基本法の私学振興規定や私立学校振興助成法、国庫補助の増額が機能しない結果となっている。

 五日に橋下知事が発表した「大阪維新プログラム案」は財政再建、政策創造、府庁改革の三本柱からなるもの。人件費や私学関係予算等を大胆に削減、全国最低レベルにする一方で、公立学校教育に関しては、今後四年をかけ、「重点施策」として、集中的な投資等で充実・強化を図る方針だ。具体的には、小・中学校の児童生徒が放課後、無償で参加できる学習機会を平成二十年度から提供するほか、大学進学に特色を置いた通学区域の定めのない高校をはじめ、すべての府立高校の特色化を推進、土曜日等に補習・補講を行う公立高校を財政面で支援するなどさまざまな公立校底上げ″を打ち出し、「公立教育日本一」を目指す、としている。
 大阪府の私学関係者は財政再建に向け公立と同等の痛み≠フ分担はやむを得ないとの姿勢だが、公私間でバランスを欠いた再建策には強く反発している。
 府庁改革で橋下知事は「民間の創意工夫、ノウハウを活用する」を重要視点としているが、教育分野では、民間活力(私立学校)の活用は見送られた格好だ。
 これらの改革案を反映した平成二十年度府予算案は七月の臨時府議会で審議される。
 橋下知事は、歳出の見直しにあたって、六つの基準・視点を提示した。
 (1)府が独自に取り組んでいる事業の必要性や必要量を見直す(2)セーフティネット的な事業であっても、所得制限や自己負担額を見直す(3)市町村や民間との適切な役割分担の観点から事業を見直す(4)民間や府関係機関に対する補助金等については、府における経費節減を踏まえ見直すなど。そのうち四つの事項で、私学関係予算が予算削減例として挙げられている。
 私学関係予算のうち経常費助成に関しては、高校・専修学校高等課程は前年度比一〇%、小学校・中学校は同二五%それぞれ削減する。平成二十年八月からの適用。
 従来の補助単価決定ルールによると、平成二十年度の生徒一人当たり補助単価は高校の場合、二十九万五千百二十五円になるが、それが一〇%の削減で生徒一人当たり約三万円の減額。中学校では七万円強、小学校では六万円強のそれぞれ減額。幼稚園の園児一人当たり補助単価は国の標準単価の五%減となる。
 また私立高校と専修学校高等課程に関する授業料軽減助成については、生活保護世帯と非課税世帯に関しては助成額を据え置いたが、年収五百四十万円を超える世帯は補助対象外とし、軽減額も引き下げている。平成二十一年度の入学生から適用する。それに代わって育英会貸付金の対象は拡大する。

20年度は共済、退職金補助ゼロ

 さらに私立学校教職員共済事業補助金については、二十年度は補助はゼロ、平成二十一年度は補助率を十九年度の半分に当たる千分の四(標準給与の)とする。千分の四は現時点で全国の最低水準。私立学校退職金財団補助金も二十年度は補助金はゼロ、二十一年度は現時点で全国最低レベルの千分の十四の補助率(標準給与月額の)に引き下げる予定だ。十九年度までの補助率は千分の三十六だった。同補助金に関しては、他府県の補助水準や財団の財政状況等を勘案して具体的な補助水準を決めるとのただし書きが付されている。
 公立学校教育に関しては、時間講師や教務事務補助員等の削減の方針も打ち出している。


公立高復活の思惑見え隠れ

 大阪府知事の「大阪維新プログラム案」は、六月十日、東京都内の会館で開かれた日本私立中学高等学校連合会の常任理事会でも大きな問題として取り上げられた。私学関係者からは百年を超える私立学校が数多く存在し、公教育に大きな役割を果たしている大阪府の私立学校への敬意のかけらも感じられない、などの声が上がった。
 私学関係者が憤慨しているのは、財政再建ということから私学関係予算を大幅カットする一方で、公立高校の進学実績の引き上げ等のために、重点投資を行うという点。大阪府の私学関係者が求めていた公私立高校が同じ土俵で競い合ってこそ府の教育が向上するとの思いは無視され、知事の出身校をはじめとする府立高校の、東京大学等の進学実績回復等に重点投資がされる。「私学には負けたくない」との知事の思いが同プログラムに色濃く反映した、と勘ぐられかねない点に知事はどうこたえるのか。同プログラム案は来月、府議会で議論されるが、日私中高連も私学助成削減の動きが他県に広がることを警戒、事態の推移を注視していく方針。
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