こちらから紙面PDFをご覧いただけます。



全私学新聞

TOP >> バックナンバー一覧 >> 2008年6月3日号二ュース >> VIEW

記事2008年6月3日 2100号 (3面) 
企業トップインタビュー 「教育はこれでよいのか」 実体験型企業教育を推進
株式会社セルフウイング代表取締役社長 平井 由紀子氏
教育は身を守るための投資
最後まであきらめない人材育成



 起業家教育事業などを手がけている株式会社セルフウイングの平井由紀子代表取締役社長は、小学校、中学校、高校、そして大学の児童・生徒・学生に対して、起業体験プログラムを実施している。「九歳頃からプログラムを実施していき、高校や大学の出口で将来に対する選択肢を自分で見つけてほしい。そのための情報を選ぶ力をつけさせてあげたい」という願いからだ。
 いま、力を入れているのが、小・中・高校生を対象とする実体験型企業教育だ。地域の伝統工芸を支える職人から指導を受け商品を作成、商品化したり、生徒の商品アイデアを地元の木工メーカーの協力を得て商品化したりするのだ。あるいは、地元の農業の協力で農業活動に取り組み、農業体験と販売体験を一連のプログラムとして行う。
 「教育は身を守るための最低限度の投資である。この取り組みは社長を育てるのではなく、自立心、創造力、判断力などを育成したいのです」(平井社長)という考えが基礎にある。
 翻って考えれば、「教育を取り巻く問題を考えると、国内問題として考えているにすぎないと思います。これからの、海外との接し方を考えると、果たして、おごらず、コミュニケーションを取ることができるのかどうか不安です」という認識があるからだ。一方で、「五十年後にこうあってほしいというゴールがきちんと決まっていれば、多少ブレがあっても、ゴールまで行くことができればいいと思っています」と話す。
 平井社長が起業教育を始めたきっかけは、このような日本の教育界をはじめ産業界、子供を取り巻く環境を考え、そして、海外の起業教育の取り組み状況をつぶさにみたからだ。従来の日本の画一教育が悪いのではなく、「長期的にみて、日本は教育に対してもっとお金をかけてもいいのではないか」と提案する。
 これからの学校教育が目指す人材は何か。
 「自分と相手の違いを認めることができるような人材、そして、根本的な知識を身につけることが大事だと思います。それを抜きにして勉強しても、くずれてしまいます。最後に、土俵に踏みとどまって、あきらめない人材だと思います」と話す。
 平井社長自身は、「生かされているという思いを持っているので、得たものを還元していきたい」との思いの下に、さらにインキュベーション事業に取り組む方針だ。インキュベーション機能との連携により、青年から成人までを対象とした「創業活動とリンクした起業教育の拡充」に重点を置く。小・中学生対象の早期起業教育については、そのための「人材のすそ野の拡大」と位置づけ、一層の普及を進めていくという。
 同社は二〇〇八年、中小企業庁長官表彰「起業教育部門」を受賞した。小学生から一般社会人まで対象に、会社を興すプログラムを展開し、特に小・中・高校生向けに地場産業や農業活動などを通して、企業マインドの育成に重点を置いた活動が評価された。

記事の著作権はすべて一般社団法人全私学新聞に帰属します。
無断での記事の転載、転用を禁じます。
一般社団法人全私学新聞 〒102-0074 東京都千代田区九段南 2-4-9 第三早川屋ビル4階/TEL 03-3265-7551
Copyright(C) 一般社団法人全私学新聞