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記事2008年9月13日 2109号 (1面) 
鈴木恒夫・文部科学大臣に聞く
日本の美風の蘇生と新生
私学助成など できる限り行いたい


 自由民主党の総裁選が告示され、解散・総選挙もまもなく、と言われている。永田町はすでに選挙一色。そんな落ち着かない政治情勢だが、九月十日、就任約一カ月の鈴木恒夫・文部科学大臣に当面する課題や私学振興に対する考えなどを伺った。(編集部)

 ――初めての「教育振興基本計画」が七月一日に閣議決定されましたが、その中でも何が喫緊な課題だとお考えですか。
 鈴木恒夫・文部科学大臣 私は、日本の美風は、例えば親子関係の深さ、他人への労わりの気持ち、家庭の温かさ、日本人の品格、行動、思想までも育ててきたものなので、何とか甦らせたい。同時にボーダレスの時代に対応した国際化、あるいは科学技術の進歩などを取り入れた日本の美風を作り上げたい。「日本の美風の蘇生と新生」ということを目標にしている。同時に科学技術の面でも日本は環境技術、宇宙へのチャレンジ、半導体、ロボットなど持ち味を発揮できる分野はたくさんあるので、そうしたことを含め国際社会をリードしていける品格ある日本人の育成を目指したい。

 ――秋葉原での殺傷事件や不登校の増加などを例に挙げるまでもなく、今、心の教育が極めて重要だと思われますが、徳育に関して大臣はどんなお考えをお持ちですか。
 鈴木大臣 私はいわゆる復古主義的な道徳よりは、新しい時代にふさわしい豊かな人間性を涵養したい。単にルールを守るだけではなくて、もっと幅広の人間力を子どもたちに与えたいと思っている。世界の環境問題をリードする、これもこれからは道徳の範疇に入れていいことだと思う。「生きる力」の中にはこういうことも入っている。もちろん科学技術、スポーツ、芸術も入っている。
 地球上の命を見つめる力、優しさが、今の子どもは本当に少なくなったので、議員立法で、環境教育法を世界に先駆けて作った。同じような発想で、自然体験で感じる教育が必要だと思い、超党派で自然体験推進議員連盟も作っている。
 現在、総合的な学習の時間で環境教育をかなりの比率で行っているので、大臣就任時に、そろそろ「環境」という教科を将来、作れるように議論を始めたいと申し上げた。できる限り頭においていきたいと思う。

 ――学力重視の方向に針が大きく振れる中で、心の問題が軽視されることはないでしょうか。
 鈴木大臣 学力の向上が資源のない日本の今日の繁栄を作ってくれた、その先輩の努力には敬服する。ただ学力偏重がサリン事件とか、人間性の喪失、犯罪、治安の乱れにつながった面がある。詰め込み教育は少し反省しなければいけない、ということで教育方針が変わり、「ゆとり教育」と言われた。それは本来、学力は低下させずにもっと人間性を持った人間をつくろうということだったが、若干、国際的な学力検査などで陰りがでてきたので、私としては、今回の学習指導要領改訂で人間力を充実させるために、「ゆとり教育」をもっと充実させる意味で修正が行われたと思って頂きたい。

 ――私学助成はここ数年、マイナス基調です。国の財政事情が厳しい中で、私学の振興についてどんなお考えをお持ちですか。
 鈴木大臣 日本の教育における私学の役割は申し上げるまでもない。できる限りの私学助成や税制上で寄附に対する優遇措置をやっていくことについては全く変わっていない。国も地方も財政事情が厳しいため、なかなか思うようにいかないが、基盤的経費として私学助成は何とかしていかなくてはいけない。また私学は公立に比べて保護者の負担が大きい。私学助成の中で経済的に就学困難な学生を対象に授業料減免とか、奨学事業を行っているが、なんらかの形で経済的負担の軽減を図る方法はないか、できるだけの支援をしていくのがもう一つのポイントだと思っている。
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