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記事2009年12月13日 2156号 (1面) 
学校設置会社による学校設置事業 全国展開見送り
特区評価・調査委教育部会が方針かためる
21年度評価 なお課題多く
空地、運動場の弾力化は全国展開の可能性

 構造改革特別区域推進本部の評価・調査委員会教育部会は十二月十日、都内で第十回会合を開き、学校設置会社による学校設置事業(株式会社立学校の設置)や、運動場あるいは空地に係る要件の弾力化による大学設置事業、インターネット等のみを用いて授業を行う大学の校舎等施設要件弾力化による大学設置事業の特例措置について全国展開の是非を協議した。文部科学省との協議後、同教育部会の金子郁容部会長は、株式会社立学校設置の早急な全国展開は難しいものの、そのほかの特例措置は全国展開しても大きな弊害はない、認めてもいいのかと思うとの考えを明らかにした。


 この日の教育部会は、四つの特例措置に関して構造改革特区事務局(内閣官房地域活性化統合事務局)と、規制所管省である文部科学省の双方が今秋実施した特例措置を受け設立された学校等に関する調査の結果を報告、その後、教育部会委員と文部科学省の担当課長等との協議が行われた。
 このうち「学校設置会社による学校設置事業」に関しては、神奈川県相模原市の株式会社立小学校は在籍児童数が増えてきたことなどから黒字化を達成、しかし岡山市の中学校は学校法人化の希望しており、広域通信制高校でも黒字化する学校が増えたものの、過当競争の状況となっている、大学に関しては全般的に経営面で苦戦しているなどの概況を報告した。
 一方、文部科学省は、学校設置会社の過半が学校部門の収支状況が赤字で、また過半の学校で大幅な定員割れを生じていること、高校段階以下の学校設置会社二十四社中十社が学校法人化に向け具体的に準備するなど学法化を念頭に入れており、大学を設置する会社でも学法化を具体的に検討しているケースがあることなどを明らかにした。
 広域通信制高校に関しては、生徒の課題レポートを採点するのみで誤答の設問に関して解説するなどの指導がなかった、すべての科目で試験を実施していない、教員免許状の教科とは異なる教科を教えていたなどの事例が確認されたことなどを報告。こうした調査結果から、「依然、全国化の是非を判断する段階に至っていない」とした。
 このほかの運動場を設けない、空地を設けないでの大学設置に関して同省は、学生から不満の声が上がっていることや、学生の心身の発達には専門分野を離れてサークル活動など様々な活動を通しての交流が重要なことから、空地がないなど学生がくつろげる場所がない大学では一定の弊害が生じていると考えることもできる、インターネット等のみの大学設置では教育研究上の支障の可能性を指摘して、いずれも全国展開には時期尚早との考えを伝えたが、一方の教育部会の委員は大きな弊害は生じていないとの認識を示した。
 教育部会の委員からは、特区が新たなマーケットを創出していることを積極的に評価すべきだ、情報化が急速に進展する中で時代遅れの議論といった意見が出され、同省に対しては前向きな大局的な対応を求める意見が複数聞かれた。今後、教育部会は文部科学省と協議を重ねつつ、来年一月、再度、部会を開き、教育部会としての結論をまとめ、一月下旬から二月に開かれる評価・調査委員会に報告する予定。同委の報告はその後、総理に提出される。

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