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記事2009年7月3日 2141号 (1面) 
論議集めた新学校種創設
夏以降に具体的制度設計へ
中教審キャリア教育・職業教育特別部会
審議経過報告15日にとりまとめへ

 中央教育審議会のキャリア教育・職業教育特別部会(田村哲夫部会長=渋谷教育学園理事長)は、六月二十九日、都内で第十一回会合を開き、「審議経過報告案」を審議したが、複数の委員から修正意見が出されたため、七月十五日の次回会合で改めて「審議経過報告案」を審議することになった。田村部会長は「次回には審議経過報告を取りまとめたい」と語った。
 審議で焦点となったのは高等教育における職業教育の在り方。特に大学や短大とは異なる、職業教育に特化した新しい学校種の創設について。 
 審議経過報告案等では、教育と産業のミスマッチ等が若年無業者や早期離職者を多く生み出していることを指摘し、そのミスマッチ解消には、産業界と連携した職業実践的な教育の提供が重要などと指摘している。既存の大学・短期大学は一部を除き職業実践性に特化した教育体制をとる仕組みになっていないため、職業実践的な教育に特化した新たな学校種が必要としている。
 新学校種のイメージは別掲の通りだが、この日の審議では産業界出身の委員などから、新しい学校種を創設するより前に、初等中等教育の段階からキャリア教育や職業教育を行っていく重要性が指摘され、また現行の教育の枠組みを残したままで新しい枠組みを作っても全体は変わらない、あるいは(新しい学校種に関して)制度論としての整備は不十分、専門高校の振興を求めたいとの意見が聞かれた。
 初等中等教育に関しては、大学進学のみに収斂してきたことが、学生と職業とのミスマッチの背景にあることを指摘する意見、専門高校の復活を含めて高校教育の在り方の再検討の必要性を指摘する意見が複数の委員から聞かれた。
 審議経過報告案では高校普通科におけるキャリア教育・職業教育の充実、専門高校に関しては、教員の指導力の向上、実務経験を有する者の教員への登用の促進、施設・設備の充実などを提言。高校専攻科と高等教育機関の円滑な接続を図ることに関しては、制度的な課題として、高校専攻科の学校教育制度上の位置付けの在り方、大学教育の国際的通用性にも留意しつつ、積極的な検討が必要とし、高校専攻科修了生の大学への編入学実現に前向きな方向性を示している。特に高校教育の在り方に関しては、部会に出席した文部科学省の銭谷眞実事務次官が、「今のままでいいのか大きな問題意識を持っている。義務教育については随分議論してきたが、高校についてはまとまった議論がなかった。五年制の高等専門学校は成果を挙げているが、広がらない。また高等教育の問題として専門学校の問題が大きい。どう評価し振興していくのか、非常に大きな課題だと思っている」と語った。同部会で七月十五日に審議経過報告がまとめられると、パブリックコメントにかけられる予定。夏休み以降は、職業教育に特化した新学校種と既存の高等教育機関(大学、短大、高専)との関係、設置基準や教員の資格要件など具体的な制度設計と、既存の学校種における職業教育に関する具体的振興策などが検討されることになる。

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