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記事2010年11月23日 2188号 (1面) 
公立校の課題生徒の学力差、中だるみ
文部科学省 中高一貫教育の実態調査公表
国立公立教員負担増課題に
私立は多彩な教育展開
 文部科学省はこのほど「中高一貫教育に関する実態調査結果」を公表した。それによると、平成十一年度から始まった公立学校の中高一貫教育では、成果として「異年齢交流による生徒の育成」を挙げる学校が六四・五%で最も多く、次いで「学力の定着・向上」を挙げる学校が六二・〇%あった。半面、課題としては、七三・五%の学校が「生徒間の学力差(個に応じた指導方法の確立)」を、また六九・三%の学校が「高校入試がない(または簡便な入試)ため学習意欲の向上」を挙げていることなどが分かった。この調査は今年三月現在、全国の国公私立中高一貫教育校(中等教育学校、併設型、連携型)三百七十校等を調べたもので、回答校は三百六十六校。

 今回、調査したのは、@中高一貫教育の導入に係る経緯(教育活動の特色、中高一貫教育を導入したねらい、成果、課題等)A教育課程の内容(教育課程の基準の特例の活用状況、特例の活用例、成果、課題)B教育活動の状況(交流授業の実施状況、成果、課題、中高合同実施の行事・活動、内進生と外進生のクラス編成・授業の進め方)C入学者選抜の状況(実施項目、過去五年間の平均倍率の推移、高校への進学状況等)D教育委員会の意向(中高一貫教育校の設置理由、成果、課題)。
 このうち、教育活動の特色(の実施率)では、「進路希望の実現を重視」(七三・五%)、「生徒一人一人の個性・創造性を伸ばす」(七一・七%)、「学力・学習意欲の向上を重視」(七〇・五%)が上位三位を占めた。
 公立と私立の中高一貫教育を比較した場合、私立の方が実施率の高かった項目としては、「生徒一人一人の個性・創造性を伸ばす」「国際化に対応するための教育重視」「芸術(音楽・美術等)、スポーツ重視」「じっくり学ぶことを重視」「教育課程をより効率的・効果的に行うことを重視」「学力・学習意欲の向上重視」など。
 反対に公立の方が実施率の高かったのは、「地域特性重視」「体験学習重視」「伝統文化等の継承のための教育重視」「異年齢交流重視」など。
 中高一貫教育導入の成果に関しては、私立では「学力の定着・向上」が八四・一%で最も多く、公立では「異年齢交流による生徒の育成」だったが、公立の中等教育学校だけをみると「学力の定着・向上」が八四・〇%で最も高かった。
 課題に関しては高校入試がないため学習意欲の向上を挙げた学校は国立、私立が四〇%台だったのに対して公立は六九・三%もあり、公立校がいわゆる中弛み問題に直面していることを伺わせる結果となっている。
 教員の負担増を課題として挙げた学校の比率は私立が一五・四%に対して国立は六〇・〇%、公立は五三・〇%と際立った違いを見せた。教育課程の基準の特例の活用状況に関しては、公立、私立で「高校(後期課程)から中学校(前期課程)へ指導内容の一部移行」が六〇%前後で最も多かった。中高一貫教育校が実施できる教育課程上の特例措置を活用した学校では、例えば「学力の定着・向上につながっている」という点で成果があったとした学校は六四・二%あったが、その様々な特例措置の中でも高校から中学への指導内容の一部移行が、圧倒的に成果が見られたとされた。特例措置の活用に当たっての課題としては、公立校では「中高の教員間での打ち合わせ時間の確保」「六年間一貫した指導計画の作成」「教員数の確保、持ち時間数の増加」が上位を占めた。私立では「六年間の指導計画の作成」「中高一貫教育用教材の研究・作成」「中高間の重複内容と積み上げ内容の整理が必要」が上位三位を占めた。入学者選抜に関しては、国公立では、面接、小学校からの調査書・推薦書、適性検査、作文が六割から九割程度の学校で行われていた。適性検査については公立校での実質的な学力検査ともいわれているが、公立の場合、併設型の中高一貫校では八七・三%の実施率だった。


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