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記事2010年3月13日 2164号 (2面) 
大学教育の職業的意義向上必要
日本学術会議が報告書案報告
中央教育審議会の審議動向
キャリア教育・職業教育特別部会

 中央教育審議会のキャリア教育・職業教育特別部会(部会長=田村哲夫・渋谷教育学園理事長)は三月九日、文部科学省内で会議を開き、前回に続いて、高等教育段階における職業教育の充実方策を協議した。この日は、日本学術会議の祖敏明・大学と職業との接続検討分科会委員長(学校法人上智学院理事長)から同会議での、大学教育の分野別質保証、大学と職業との接続に関する検討について報告を受けた。
 日本学術会議でこの検討が行われているのは、平成二十年五月に文部科学省から、大学教育の分野別質保証の在り方について、学術の各分野の有識者で構成している同会議の性格に鑑み審議を依頼されたことによる。同会議ではこの審議を行うために「大学教育の分野別質保証の在り方検討委員会」(委員長=北原和夫・国際基督教大学教養学部教授)を組織し、その中に、質保証枠組み、教養教育・共通教育、大学と職業との接続の三つの検討分科会を設けて審議を進めてきた。現在は、報告書案の検討段階となっている。
 同会議における検討では、学生に対する支援の充実、就職できない若者に対するセーフティーネットの構築、就職・採用活動の実質化が提案されている。具体的には、大学におけるキャリアガイダンスは、教育課程の中に有機的に位置付けられずにひとり歩きさせることなく、教育課程全体が専門性の形成や職業上の意義を高めることと連携して行われるべきものであること、長期化する就職活動がもたらす学生のストレスや企業の負担を軽減させるため、就職活動に際しての今日的な行動倫理を形成することが望ましいこと、大学は卒業後三年程度は在学生と同様の就職支援を行うとともに、企業側も新卒の要件を緩和して若年既卒者を新卒採用に包含させるなどを検討すること、実際の仕事と強く結びついた基本的で実質的な就職・採用活動が行われるよう例えば職種別採用を検討することなどが挙げられている。以上により、今後目指すべき方向として、在学中に就労体験・社会体験を充実させて大学教育の職業的意義を向上すること、正規雇用・非正規雇用を問わず、専門性を重視した職業上の知識・技能を重視した処遇がなされる労働市場を形成し、正規・非正規間で柔軟な往還が行われることなどを大学と職業との新しい接続の在り方として示している。
 また、前回に続き、「人材ニーズに関する調査委員会」(委員長=今野浩一郎・学習院大学経済学部教授)による調査研究の内容が報告された。この日は前回紹介のあった福祉分野に続いて、IT・情報サービス、コンテンツ、観光、ビジネス実務の四分野について、前回と同様、必要とされる中堅層の人材ニーズ量の推計や、企業関係者からの聞き取り調査結果などの説明があった。

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