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記事2010年3月13日 2164号 (1面) 
高校無償化法案、衆院(文部科学委)で可決 3年後に見直しへ
高校等就学支援金 生徒や保護者の申請書や証明書必要 学校の重い事務負担に懸念の声
衆議院文部科学委で 吉田中高連会長 簡素化を要請
都道府県間格差の是正も

 「公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律案」が三月十二日、衆議院文部科学委員会で可決された。公明党の提案により三年後に法律の中身を再検討する規定が新たに盛り込まれた。今後は政省令等がどうなるのかが焦点となるが、三月九日には日本私立中学高等学校連合会の吉田晋会長が同文部科学委員会で参考人として意見陳述を行った。この中で吉田会長は、公立高校が授業料不徴収となり事務負担がなくなった一方で、私立高校には大きな事務負担がのしかかっていることを訴え、事務の簡素化等を要請した。


 衆議院文部科学委員会(田中真紀子委員長)は、同法の関係者や学識経験者らから意見を聴取したもので、同日、午前中には日私中高連の吉田会長、全国専修学校各種学校総連合会の菊田薫事務局長、倉橋徒夢・学校法人イーエーエス伯人学校理事長から、同日午後には佐賀県教育委員会教育長、社団法人全国高等学校PTA連合会副会長らから意見を聞いた。その後、与野党議員との間で質疑が行われた。
 この中で吉田会長は、同法案の趣旨である高校生の就学を国、社会全体で支えるという方向性は正しいとしながらも、私立学校の取り扱いに関しては、違和感があるとした。公立高校は授業料が不徴収となり、その分を国が学校設置者(都道府県等)に交付するが、それは機関補助というべきもの。一方、私立学校に関しては、すべての生徒に申請書を自筆させ、提出させることや、所得の低い世帯の生徒が割増の就学支援金を受けるためには別途申請書や課税証明書の提出が義務付けられる。また全員に提出が義務付けられる申請書も誓約書に近いような内容が盛り込まれる見通しや、家庭の収入状況が分かる課税証明書の取り扱いには細心の注意が必要なことなど様々な事務をしかも短期間に処理しなくてはいけない点などを説明、学校が生徒の在籍を証明するだけで十分ではないかなど事務負担の簡素化の方策を検討してほしいと要請した。また自治体によっては、高校等就学支援金に加えて従来からの授業料等軽減補助を上乗せするところもあるが、反対に高校等就学支援金が出たのだからとして、従来の授業料等軽減補助を削減する自治体もあり、都道府県間で就学援助に大きな開きが生じる点を懸念、そうした格差是正には国による支援充実が必要だと訴えた。
 加えて多様な教育を社会に提供していくためには学校の充実も不可欠で、私学助成の充実を求めた。そうした私学助成の都道府県間の格差についても国が責任をもって是正してほしいと訴え、また公私立学校が共存してこそ教育の健全性が保たれるとして、教育の費用負担の公私間格差をそのままにしてよいのかと格差是正の必要性を強調、格差が広がっていくことを危惧していることを明らかにした。
 一方、全専各連の菊田事務局長は、専修学校高等課程(高等専修学校)が高校等就学支援金の対象とされていることに感謝したうえで、高等専修学校が中途退学者や不登校生の受け皿になっている点などを説明、また三年制以外にも一年制や二年制の課程も存在していることや、各種学校に関しては中学校卒業後に入学している生徒も存在することを説明し、一定の要件を満たしていれば、個別の審査で就学支援金の対象とすることなどを求めた。
 三月十日には、十一人の与野党議員による質疑が行われた。この中では私学に対する今回の授業料無償化以降の経費負担の考え方及び公私の将来的な格差解消に対する文部科学大臣の考えを質した発言や、私立高校に対する就学支援金を全国一律に支給するよりも、都道府県ごとの平均授業料に応じた支給とする方が、公平性が担保されるのではないか、といった改善案などの提案も行われた。
   ◇
 三月十二日の文部科学委員会では、法律成立後、高校の教育内容や私学助成の方向性について中央教育審議会等で検証を行っていくことを求める意見も出された。(近く詳報)


7項目の「附帯決議」を採択


 高校無償化法案が、民主、公明、共産、国益と国民の生活を守る会の賛成、自由民主党の反対で、衆議院文部科学委員会で可決された後、松崎哲久議員ほか二人(民主、公明、共産)から附帯決議案が提出され、同様に賛成多数(民主、公明、共産、国益と国民の生活を守る会の賛成、自由民主党の反対)で採択された。附帯決議に盛り込まれたのは七項目。
 @は、法施行三年後に見直しを行う場合は、高校における教育の充実状況、義務教育後における多様な教育の機会の確保等に係る施策の実施状況、高校等における教育に係る経済的負担の軽減状況を勘案しつつ、教育の機会均等を図る観点から検討を加え、必要な措置を講じる Aは、教育の機会均等を図る観点から奨学金の給付制度の創設その他の低所得者世帯の高校等における教育に経済的な負担の一層の軽減 Bは、高校教育改革の一層の推進、高校等における教育の質の更なる向上 Cは、私立高校生に関しては、授業料が無償にならない上に、授業料以外の教育費負担も大きいことから、今後より一層教育費負担軽減を図る必要があることにかんがみ、私学助成等の充実を図る Dは、特定扶養控除の見直しに伴い、現行より負担増となる家計については適切な対応を検討する Eは、国際人権A規約における中等教育の漸進的無償化条項の保留撤回を行う Fは、本制度の周知・説明、円滑な実施に向けて最大限の努力

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