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記事2010年4月3日 2166号 (1面) 
卒後3年間は「新卒」扱いに
若者の就職状況深刻化受け提言へ
日本学術会議

 教育の質保証の観点から、大学教育と就職との関係について議論している日本学術会議の「大学と職業との接続検討分科会」(分科会委員長=高祖敏明・上智学院理事長)の報告書案がこのほどまとまった。日本の企業で広く行われてきた新卒一括採用という採用方式の見直しを指摘し、大学卒業後最低三年間は、新卒採用の門戸が開かれるよう提言している。
 高祖委員長が三月二十九日、自らも委員を務める中央教育審議会大学分科会の質保証システム部会で報告した。正式にまとまり次第、文部科学省に報告する予定。日本学術会議は、同省からの依頼を受け、大学教育の分野別質保証について現在、議論を進めている。
 今回の報告書案では、新卒一括採用では、卒業して直ちに採用されなければ、その後に正社員となる可能性が非常に狭いものとなり、若者の就職問題を深刻化させていると指摘。個人のライフステージの特定の時期にリスクを集中させるとともに、景気の変動で特定の世代にリスクを集中させることにもなっているという。
 こうした弊害は社会的にも無視できない状況にあるとして「卒業後最低三年間は、若年既卒者に対しても新卒一括採用の門戸が開かれること」を当面の達成すべき目標とし、政府の関係部局で、具体的検討を速やかに行うよう求めている。
 また、大学生の就職活動が早期化、長期化している現状について、学事日程と就職活動の両立のため、大学と産業界が具体的なルールやプロセスを協働して整備するよう提言。就活の早期化は抑制する一方で、採用を前提としない長期のインターンシップなど学生が「外」の世界を知る機会はむしろ早期から整備することが必要とし、大学には、学生が意義の乏しいエントリーの多発に走らずにすむよう適切なキャリアガイダンスを行うことを求めている。
 また、就職できなかったり、就職したとしても不安定な処遇にとどまらざるを得なかったりした若者に対して、職業能力開発を支援し、訓練期間中の生活費を支援するなど、社会の新しいセーフティーネットの構築が切実に求められるとしている。

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