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記事2010年7月23日 2177号 (1面) 
インクルーシブ教育 具体策検討へ中教審特別委初会合
障害児も健常児も地域の小中学校に 年末までに「中間まとめ」
学校長からは混乱を懸念する声も
 文部科学省はこのほど中央教育審議会初等中等教育分科会内に「特別支援教育の在り方に関する特別委員会」を設け、その初会合が七月二十日、都内で開かれた。この特別委は、政府の障害者制度改革推進本部(内閣総理大臣が本部長、全国務大臣で構成)の下に設置されている障害者制度改革推進会議(議長=小川榮一・日本障害フォーラム代表)が六月七日に「第一次意見」をまとめ、同二十九日に同意見を踏まえた推進本部の方針が閣議決定されたのを受けて設置されたもの。
 改革の方向性でポイントとなるのは、障害の有無に関係なくすべての子どもは地域の小・中学校に就学し、かつ通常学級に在籍することを原則とすること(インクルーシブ教育)。障害者が小中学校等(とりわけ通常の学級)に就学した場合に、当該学校が必要な合理的な配慮として支援を講じる――というもの。
 この日の会議では、宮崎英憲・東洋大学文学部教授が委員長に、全盲の石川准・静岡県立大学国際関係学部教授(NPO法人全国視覚障害者情報提供施設協会理事長)が委員長代理に就任。文部科学省からの状況説明の後、各委員が自由に意見発表を行った。
 この中で全国連合小学校長会の向山行雄会長は第一次意見がまとまるまでに教育関係団体の意見表明の機会がなかったこと、障害児の権利保障と同時に健常児の権利保障が必要で総合的な調整が必要なこと、インクルーシブ教育には保護者や住民の理解が不可欠で時間をかけての実施を求めた。尾崎祐三・全国特別支援学校長会長はインクルーシブ教育と現行の特別支援教育の方向性に違いはないなどとした。また複数の委員から、インクルーシブ教育実施に合わせて、教員の障害児教育に関する専門性を高める必要性が指摘されたが、小学校の教員確保が更に難しくなることを懸念する意見も聞かれた。
 さらに推進会議の委員の中に最大のグループである発達障害児関係の委員がいないことを問題視する意見や、障害といっても極めて多様なため、きめ細かな対応を求める意見も聞かれた。
 特別委員会では就学相談・就学先決定の在り方や合理的配慮の在り方、必要な体制・環境整備等の検討を進め、関係団体からの意見聴取も行い、今年末までに中間的な取りまとめを行う予定。

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