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記事2011年11月23日 2222号 (1面) 
学部段階の教職課程縮小か
中教審教員資質能力向上特別部会基本制度WG
審議のまとめ案作成へ
大詰め審議 教育実習にチューター体験
中央教育審議会・教員の資質能力向上特別部会の「基本制度ワーキンググループ」(座長=横須賀薫・十文字学園女子大学長)は十一月十六日、都内で第五回会合を開き、審議のまとめに向けさらに検討が必要な事項について各委員に意見を求めた。各委員には事前に文書で意見提出を求めていた。またこの日、委員は座長が新たに示した事項についても意見を述べた。今後、委員から出された意見で「これまでの議論の整理と今後の論点」(座長メモ)を肉付けし、審議のまとめ案を作成、次回から審議のまとめ案についての審議を開始、年内にも取りまとめる方針。

 委員が事前に意見を求められた内容は、委員により異なる。委員からはおおむね次のような意見が出された。
   ◇
 教員養成の修士レベル化に沿って学部段階の教職課程は縮小し、主体を大学院に移す。
 教職課程の履修者が多く、教員免許の乱発・教育実習公害との批判に対しては、履修者を口述試験や書類試験で大きく絞り込む、実践的な指導力の育成は大学院で行い、学部段階では教科の専門を積極的に学んでもらう。学部段階の教育実習はスリム化する、教育実習の一部を学校現場でチューターや学生ボランティアとして体験することに切り替え、そのことを通じて教職志望者の意欲を見るとともに、小中学校等にお荷物≠ニ言われている教育実習を学校現場に役立つものとする。教育実習をチューター等に切り替えることにより母校以外でも実習が可能となる。教育実習を有料にするなど何らかの負担を学生に求めていく。教職課程認定に関しては、一定のスタンダード(モデルカリキュラム)を設け、届出制とし、事後評価をしっかりとする―などの改革案が提案された。
 WGに出席の田村哲夫・同特別部会長は、モデルカリキュラム案の提示には「抵抗感がある」として、慎重な審議を求めるとともに、多様で魅力的な人材が教育現場に来るような仕組みを考えてほしいと注文を付けた。
 高校の教育現場でポスドクを積極的に活用するなど制度に風穴をあける必要性も強調した。こうした部会長の、多様な人材を教育現場に登用できる仕組み作りに委員から異論はなく、審議のまとめに反映される見通し。
 そのほか高校の免許を中学校と切り離して博士の学位を持っていれば高校の教員になれるという大胆な施策を打ち出してはどうか、との意見も出された。教員採用に関して教育委員会の基準の確立、明確化が不可欠との指摘もあった。
 またこの日は、文部科学省から専門免許状の位置付けに関する議論のたたき台も提示された。一般免許状を基礎に、特定の分野についてより深い学識を積んだことを証明するものと位置付ける案と、授与されることにより就くことのできる職が広がるなど専門免許状に特定の効果を付与し、一般免許状とは別の免許状として位置付ける案の二つが提案された。
 前者は、現行の一種免許状と専修免許状との関係に近く、後者は、小学校等の免許状と特別支援学校の免許状との関係に近いとしている。また前者の場合、専門免許状は博士レベルの免許状となること、後者の場合、管理職や指導教諭等の希望者が減少する恐れがあること、専門免許状所持者については教職大学院の実務家教員になる道を開くことの是非等が課題と指摘している。WGとしてどちらの案を採用するかの討議は行っていない。


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