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記事2011年12月23日 2225号 (1面) 
学校設置会社による学校設置事業7度目の評価へ
株式会社立校 課題山積する中で一定の区切りつく可能性
既設校の今後の扱い焦点に
政府の構造改革特別区域推進本部評価・調査委員会教育部会(部会長=若月秀夫・品川区教育委員会教育長)は十二月二十日、都内で会合を開き、@学校設置会社による学校設置事業A市町村教育委員会による特別免許状授与事業Bインターネット等のみを用いて授業を行う大学における校舎等施設に係る要件の弾力化による大学設置事業の特例措置について全国展開の是非を協議した。
 このうち@の学校設置会社による学校設置事業(=株式会社立学校の設置)に関しては、特例措置創設以降、今回が七回目の評価となるが、この日、規制所管庁である文部科学省からは、株式会社立学校二十六(小学校一、通信制高校二十、大学・大学院五)校を対象にした書面、実地調査結果が報告された。
 それによると大学等では五校中四校が赤字経営で、それ以前にも廃校、キャンパス縮小、学校法人への移行が見られるなど、教育の安定性・継続性の面で問題点が指摘された。
 株式会社立通信制高校に関しては、添削指導の八割以上を多肢選択方式としている学校が二五%あり、マークシート方式を利用している学校も複数あった。面接指導に多様なメディアを利用している学校は全体の九〇%だったが、うち五〇%の学校では生徒の視聴確認や成果の評価が行われていなかった。試験に関しては自宅での実施、自由な成果物の提出による代替、毎年同じ試験問題といった実態も確認され、そのほか極端に狭(きょう)隘(あい)な施設環境、学校教育活動に係る業務の多くを提携する民間教育施設(サポート校等)に業務委託している事例、サポート校が通信制高校の職員の出勤簿を保管するなど民間教育施設との混然一体の運営も見られた。
 特区認定市町村の学校設置会社への指導等が適切ではない実態も明らかになった。
 こうした報告に、若月部会長を含め大半の委員からは、学校設置会社による学校設置事業の特例措置について全国展開は困難で、長年こうした評価・調査作業を行ってきたことから一定の結論を導き出す時期に来ているとする意見が聞かれ、同特例措置については一定の区切りがつく可能性が示唆された。同特例措置の全国展開が無くなった場合、現存の株式会社立学校の取り扱いが問題となる。
 その場合、学校法人に移行する学校が多いと見られるが、学法化のハードル≠文科省が下げるのかが焦点となる。同省では直接所管する大学・大学院はまだしも、高校等は都道府県の所管のため地方分権の中で一定の方向性を求めるのは難しいとの意向だ。
 Aの市町村教育委員会による特別免許状授与事業に関しては、文科省から、調査で判明した結果として、特区認定の市町村が講演を依頼した講師に謝金だけでは申し訳ないとして、特別免許状を交付していた事例など複数の問題点が指摘された。また特区認定市町村の担当者には教科に関する専門性がなく、特別免許状の認定頻度も低いため知識の蓄積ができないなど市町村段階での特別免許状交付の構造的困難さも明らかになった。
 教育部会の大半の委員も同特例措置の全国展開は無理との認識。文科省は現在実施可能な、都道府県による特別免許状の交付を今後、活発に活用すべきだとの問題意識を持っていると語った。
 Bのインターネット等のみを用いて授業を行う大学における校舎等施設に係る要件の弾力化による大学設置事業の特例措置については、時間の関係で十分に検討が行われなかったが、委員からは「日本はこの分野で遅れている。一定の基準を設け、全国化すべきだ」「国立教育政策研究所では人口減少社会への対応を検討し始めている。通信網を使わないと、へき地への教育提供がやがて難しくなる見通しだ」などの意見が出された。
 同部会では三つの特例措置の全国展開については年明け一月十七日に再度検討し、部会としての方針を決定、親委員会である評価・調査委員会(委員長=樫谷隆夫・公認会計士)に報告する予定にしている。


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