こちらから紙面PDFをご覧いただけます。



全私学新聞

TOP >> バックナンバー一覧 >> 2012年11月23日号二ュース >> VIEW

記事2012年11月23日 2256号 (1面) 
教育投資の在り方など議論
中教審・教育振興基本計画部会
質の高い教育のための環境構築
家計負担の軽減等柱に 第二期計画策定へ
 中央教育審議会の教育振興基本計画部会(部会長=三村明夫・新日本製鐵株式會社取締役相談役)は十一月十六日、文部科学省内で第二十三回会合を開き、教職員の定数改善と大学教育を中心に教育投資の在り方について議論した。その中では質の高い教育の実現に向け、教員の資質能力の向上と、教職員や専門的・支援的スタッフの体制の整備などを求める意見が数多く聞かれた。

 同部会は現在、二期目(平成二十五―二十九年度)となる政府の「教育振興基本計画」案の検討を進めており、年内を目途に答申をまとめる予定。この日は、検討に先立ち同省から教育費等をめぐる現状が紹介された。
 その中で同省は、我が国の在学者一人当たりの公財政教育支出額は、就学前教育段階でOECD平均(五千五百二十三j)を大きく下回る二千五百六十五jにすぎず、高等教育段階の公財政教育支出額も、OECD平均(一万一千七百三十五j)を下回る八千四百十六jにとどまっている。また、我が国は家計に占める教育費負担の割合が高いのが特徴で、大学生二人を抱える家庭では単年度の可処分所得のうち、教育費の割合は四四%、親元を離れて下宿する場合の生活費を含めると、その比率は七九%に達すること、両親の年収と子どもの学力、高卒後の進路との間には相関関係が見られ、また、就学前教育を充実している国ほど出生率が高い傾向で、少子化対策には教育投資の観点も必要なことなどを説明した。その上で同省は教育投資に関しては、喫緊の課題である@協働型・双方向型学習など質の高い教育を実現する環境の構築、A家計における教育費負担の軽減、B安全・安心な教育研究環境の構築(学校施設の耐震化など)―の三点を中心に充実を図る方針案を提示した。
 具体的には、就学前教育では、幼児教育の質の向上に向けた条件整備、家計の負担の重さの軽減に向けた環境整備、初等中等教育ではきめ細かで質の高い教育の実現に向けた、教員の資質能力の向上と教職員や専門的・支援的スタッフの体制の整備、低所得者層の家計負担軽減に向けた環境整備を論点としている。
 また、高等教育では、学生の主体的な学びの確立やグローバル人材の育成に向けた環境整備(設置認可の見直し等を通じた教育の質保証の徹底を図り、ガバナンスの強化等の改革推進状況に応じたメリハリある資源配分を前提に実施)、家計負担の重さの軽減に向けた環境整備を、さらに安全・安心な教育研究環境の整備では国公私立学校を通じた耐震化・老朽化対策の着実な実施を挙げている。
 公立小中学校の耐震化については、平成二十七年度のできるだけ早期の完了を目指しており、そのためには国費ベースでなお約五千億円が必要と試算している。
 ただし私立学校に関しては国公立学校施設の状況を勘案しつつ耐震化を推進するとの考えしか示しておらず、私立学校耐震化完了までの試算などは示していない。
 こうした文部科学省の提案に対して、「教員の定数改善をしっかり行うべきだ」「勤務時間に占める授業時間が欧米に比べて三七・三%と低い。韓国は欧米並みの五〇%となっている。従来の良さも生かした上で、専門スタッフによる分業化が必要」「国に一年先駆け、東京都では大変な量の加配をした。その結果、調査した四十項目で効果が見られた」「カウンセリングスタッフを多くし、教えることに真剣になって高い教育レベル実現を」など教職員の定数改善を求める意見が相次いだ。
 そのほか、大学に関しては、「文部科学省は大学の質的転換に腰を据えてかかってほしい。高校ではミニマムの学力を確保すべきだ」などの意見が、また、就学前教育に関しては、「(幼児期の教育では)家庭が担う部分が大きい。家庭の負担軽減、精神的負担軽減も大事。一時期、保育施設に預けるクーポン券があってもいい」などの意見が聞かれた。
記事の著作権はすべて一般社団法人全私学新聞に帰属します。
無断での記事の転載、転用を禁じます。
一般社団法人全私学新聞 〒102-0074 東京都千代田区九段南 2-4-9 第三早川屋ビル4階/TEL 03-3265-7551
Copyright(C) 一般社団法人全私学新聞