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記事2012年8月3日 2246号 (1面) 
中央教育審議会の審議動向
教員養成修士レベル化等の答申案報告
近く文科大臣に答申へ
総 会           

 中央教育審議会総会が七月二十三日、文部科学省内で開かれ、各分科会・部会から審議経過報告などが行われた。教員の資質能力向上特別部会からは、答申案が報告され、各委員から意見が出された。近く文部科学大臣に答申される見通し。
 答申案「教職生活の全体を通じた教員の資質能力の総合的な向上方策について」は、思考力・判断力・表現力等の育成など新たな学びに対応した指導のできる教員が必要とされていると指摘。これに対応できる「学び続ける教員像」の確立を改革の方向性として掲げ、教員養成を修士レベル化することを盛り込んだ。修士レベルの「一般免許状」、学部レベルの「基礎免許状」、特定分野の専門性を証明する「専門免許状」(いずれも仮称)の三つの免許状の創設を提言している。同部会の田村哲夫部会長(渋谷教育学園理事長)は、単なる修士レベル化ではなく、修士レベル化を中心に、新たな学びを支える教員の養成、学び続ける教員を支援する体制づくりを盛り込んだことを説明した。委員からは、修士レベル化について「新たな学びを支える教員の養成は学部段階からの取り組みが必要」「大学在学中に何をするか、人間として質を磨くことが必要で、単に四年を六年にするだけでは意味がない」「修士段階では子どもたちと関わりながら実践的な体験を積んでほしい」などの意見が出た。また、「教員の社会的地位をどう位置付けるかの検討を」「現職の評価が処遇に反映されるような仕組みづくりが必要」「多様な人材の登用が難しくなることがないように留意してほしい」などの意見も聞かれた。

学士課程教育の質的転換必要
 答申素案を審議、実効性ある改革を求める意見も


大学分科会・大学教育部会  

 中央教育審議会大学分科会と大学教育部会の合同会議が七月二十四日、文部科学省内で開かれ、大学改革の答申案が審議された。次回会議で最終案をまとめ、八月下旬に開かれる中教審総会で決定される見通し。
 この日事務局から示された答申素案では、大学教育部会が今年三月にまとめた審議経過報告を基に、学士課程教育の質的転換が必要、と指摘。学士課程教育を、学生に求められる能力を育成するプログラムとして機能させることを求めている。
 質的転換を図るために必要な改革方策を「直ちに取り組むべきと考えられる事項」と「直ちに審議を開始する事項」に整理。直ちに取り組むべきものとして、大学に対して@学士課程教育をプログラムとして機能させるために必要な教学システムの確立AFDの専門家の養成や確保、活用B教員以外の専門スタッフの活用―を求めている。
 今後の審議事項としては、高校教育と高等教育の接続の問題が挙げられており、中教審で審議が始まる予定。短期大学士課程についても、その機能をどう再構築するか検討を始めるとしている。
 委員からは、文科省に対して「改革にはスピード感が重要。具体的な工程表、タイムスケジュールを示してほしい」「改革をしっかり進めるためには予算が必要。しっかりと裏付けのあるものとしてほしい」など実効性のある改革となるよう、注文が付いた。

第二期の教育振興基本計画報告素案審議
いじめ問題で対応を求める声


教育振興基本計画部会    

 中央教育審議会の教育振興基本計画部会(部会長=三村明夫・新日本製鐵株式會社代表取締役会長)は七月二十五日、文部科学省内で会議を開き、今後五年間に実施すべき教育上の方策をまとめた審議計画報告の素案について審議した。審議計画報告は、八月下旬に開催予定の中教審総会に提出される予定。
 審議計画報告の素案は、昨年十二月に同部会が出した第二期教育振興基本計画策定に向けての基本的な考え方をベースに、今後五年間に実施すべき教育上の方策、環境整備等をまとめたもの。
 @社会を生き抜く力の養成A未来への飛躍を実現する人材の養成B学びのセーフティネットの構築C絆づくりと活力あるコミュニティの形成―という四つの基本的方向性に基づいて、八つの成果目標、二十九の基本施策を示している。
 この日の会議では、滋賀県大津市のいじめ問題に関連して「基本計画の中にも何らかのものを入れた方がいいのではないか」「国として真(しん)摯(し)に受け止め、どういじめを根絶していくのかという決意を盛り込んでほしい」「大きな事件が起こるたびに対症療法的に終わってしまっている。国の方向性をうたった方がいい」など、何らかの記述を求める意見が聞かれた。また「いじめられる方が悪いという人が今でもいる。いじめた方を出席停止にするなど制度的な対策が必要」「教育委員会制度の見直しが必要」などの意見も出た。
 また三村部会長は「計画にはいろいろな施策が書かれているが予算が付かないとできない。どれくらいの予算要求をするのか並行して考えてほしい」と文科省に要望した。


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