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記事2013年8月13日 2281号 (1面) 
新しい日本のための優先課題枠新設
平成26年度 予算概算要求基準が決定
文部科学省 グローバル人材育成事業新設へ
私立学校耐震改築補助実現か
 平成26年度政府予算の概算要求基準が8月8日に閣議で決まったのを受けて、各府省は8月末日までに来年度に実施を計画している事業等を概算要求としてまとめ、財務省に提出するが、そのうち文部科学省の概算要求の概要が明らかになってきた。同省は、来年度、「キャリア教育・職業教育の充実」「情報通信技術を活用した新たな学びの推進」「土曜日の教育活動の推進」「社会人や女性の学び直しの機会の充実」「スーパーグローバル大学の指定」「グローバル人材育成事業」等を新規事業として実施する方針。

 平成26年度政府予算の概算要求基準では、人件費や法令等により支出義務が定められた経費などの「義務的経費」については前年度と同額、私学助成予算を含む「その他の経費」(裁量的経費)については前年度予算額の90%がそれぞれ要望基礎額とする―などを定めている。文部科学省の裁量的経費は約2・9兆円、そのため前年度予算額から約3千億円を減じた額が要望基礎額となる。しかし同基準では、成長による富の創出、暮らしの安心、地域活性化等を目的にした「新しい日本のための優先課題推進枠」を新設しており、同枠ではその他の経費とは別途、要望基礎額の30%の範囲内で要求できる。そのため文部科学省全体では要望基礎額は前年度と比べ5千億円増となる、といわれている。
 文部科学省では来年度予算により「社会を生き抜く力の養成」「未来への飛躍を実現する人材の養成」「学びのセーフティーネットの構築」「絆づくりと活力あるコミュニティーの形成」「スポーツ立国の実現」「文化芸術立国の実現」「科学技術イノベーションに適した環境創出」「科学技術イノベーションにおける重点分野への取り組み」を目指す方針。
 このうち、「社会を生き抜く力の養成」では、引き続き少人数教育(少人数学級・少人数指導)を進め、新「心のノート」の活用などによる道徳教育の充実、学校ネットパトロールを支援する取り組みの創設などいじめ対策の推進、社会の第一線で活躍できる専門的職業人の育成(スーパー・プロフェッショナル・ハイスクール)や専門学校における「職業実践専門課程」の認定、奨励・支援、質の高い土曜授業の推進、大学・専門学校等におけるオーダーメード型教育プログラムの開発・実証など社会人や女性の学び直しの機会の充実を実施する意向。
 未来への飛躍を実現する人材の養成では、国際的素養を身に付けたグローバル・リーダーを育てる新しいタイプのスーパーグローバルハイスクールの創設、小・中・高校を通じた英語教育強化事業の実施、学びのセーフティーネットの構築では、幼児教育無償化の段階的実施、大学等奨学金事業等の充実、専修学校生の学生生活等に関する調査研究、私立学校施設の耐震改築に対する補助制度の創設などを実施する計画。このうち専修学校生の学生生活等に関する調査研究の実施は、現在、専修学校生に対する授業料減免に関する国の財政支援の仕組みがないことから、実施のための実態調査を行うもの。
 このほか、スポーツ立国の実現では、国立霞ヶ丘競技場の改築等を、文化芸術立国の実現では、子供の文化芸術体験の大幅な増加、日本版NIH(国立衛生研究所)構想の推進、はやぶさ2の打ち上げ、東日本大震災からの早期の復興再生などを実施する計画。
 一方、8月20日時点で明確になっていないのが、高校授業料無償化・就学支援金の見直し。保護者の負担する授業料の公私立高校間格差の是正、低所得者層へのさらなる支援のため、同制度に所得制限を導入することについては下村博文大臣が安倍内閣の発足時から言及してきたこともあって、見直しの方向性については反対の声はほとんど聞かれないが、その実施時期が焦点だ。文科相は26年度から実施の意向だが、都道府県知事会や都道府県教育長協議会では準備期間不足だとし、来年度からの実施は難しいとの意向だ。また、私立学校施設の耐震化促進のため、改築事業も補助対象にすることが検討されているが、どのような要件が付されるかが焦点といえる。


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