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記事2015年1月23日 2329号 (1面) 
私学助成予算、前年度比0.25%減
平成27年度政府予算案決まる
経営改革断行する地方私大等、重点支援
耐震化関係予算、26補正等と合わせ488億円

 平成27年度政府予算案が1月14日に閣議決定された。一般会計歳出の総額は96兆3420億円で、対前年度比0・5%の増額。このうち文部科学省の一般会計の総額は、政府予算全体の中で社会保障関係費や外交・防衛関係費が大きく伸びたことなどが影響して、対前年度比158億円(0・3%)減の5兆3378億円となった。その中で私学助成関係予算の総額は4310億9700万円で、対前年度比10億7200万円(0・25%)のマイナスだった。また復興特別会計では私学関係予算146億9千万円(対前年度比45億4千万円の増額)が計上されている。




 私学助成予算の中核となる私立大学等と私立高等学校等の経常費補助はいずれも対前年度比では微減となったが、高校等経常費については一部の幼稚園の認定こども園移行分が含まれるため実質的には増となっている。

 平成27年度私立大学等経常費補助は、対前年度比31億4900万円(0・99%)減の3152億5千万円。この減額は国立大学法人運営費交付金等の減額(対前年度比1・1%減)に引きずられた結果といえる。国立大学の削減率を下回ったとはいえ、この5年間では最も大きな削減率となった。私立大学等経常費補助金3152億5千万円の内訳は、大学等の運営に不可欠な教育研究に係る経常的経費を支援する一般補助が2711億500万円(対前年度比50億9700万円の減額)、平成32(2020)年度以降の18歳人口の急激な減少を見据え、経営改革や地域発展に取り組む私立大学等を重層的に支援する特別補助が441億4500万円(同19億4800万円の増額)。一般補助に関しては、財務状況等の情報公開が不十分な大学に対する減額措置を厳格化する。具体的には従来のペナルティー(1〜5%補助額減額)を3〜15%へと3倍強化する。

 特別補助では、新たに「私立大学等経営強化集中支援事業」(予算額45億円)を実施する。地方創生の観点から、急激な18歳人口減少期が再来する平成32年度までを私立大学等経営強化集中支援期間として、大学内や大学間でスピード感を持って経営改革を断行し地方に高度な大学機能を集積する私立大学等150校を重点的に支援する。対象となるのは三大都市圏(過疎地域は除く)以外に立地し、収容定員2千人以下の大学等。また、学生の地方企業への就職状況や地方企業におけるインターンシップの実施状況を高く評価し、地元産業界等と連携した実践的PBL(Project Based Learning)の実施、就業・起業に関する地域の学校との連携といった取り組みを行う大学等に補助金を加算する。この地方の「職」を支える人材育成に係る特別補助の予算額は、対前年度比3億円増の12億円。特別補助ではこのほか授業料減免の対象を約3千人増やして約4万2千人とする。

 さらに復興特別会計では、先の東日本大震災被災学生に対する授業料減免への支援や、被災3県(岩手、宮城、福島)に所在する大学等の教育環境整備、福島県内の大学等の学生経費の単価増、外部リソースを活用した教育プログラム、学生募集経費に対して、引き続き支援する。予算額は約28億円、前年度比約19億円の減額。

 このうち、授業料減免への支援では、被災学生に授業料減免等を行う大学に引き続き3分の2補助を実施するが、平成27年度からは新たに被災3県以外に所在する大学の学生に対しては、一般会計と同じ所得制限(給与所得者841万円以下、給与所得者以外355万円以下)を導入する。これにより予算額は前年度の35億円から17億円に圧縮される。被災3県に所在する大学等の教育環境整備等の予算額は11億円で前年度比1億円の減額。被災3県に所在する大学等に対する安定的・継続的な教育研究環境整備のための補助対象事業(除染等)を引き続き実施(予算額2億円)。また特に入学者数の減少が深刻な福島県内の大学等については@学生経費の単価増(総額5億円、学生1人当たり10万円を上乗せ補助)A外部リソース(他の大学や英会話スクールなど)と提携した教育プログラムの支援(総額2億円、4分の3補助)B大学の安全性等を広報するための学生募集経費の支援(総額3億円)を継続する。

 このほか私立大学等経常費補助の一般補助、特別補助を使い「私立大学等改革総合支援事業」を実施する。この事業は教育の質的転換、地域発展、産業界・他大学等との連携、グローバル化といった改革に全学的・組織的に取り組む私立大学等に対して経常費・設備費・施設費を一体として重点的に支援するもので、経常費補助144億円に設備費46億円・施設費11億円を加えた予算総額は対前年度同額の201億円。




私立高校等経常費、増額

特別支援学校への支援充実




 一方、平成27年度の私立高等学校等経常費助成費等補助は1020億円。前年度の予算額は1040億円だったが、一部私立幼稚園(園児数で約15%)が子ども・子育て支援新制度に移行するため、その要素を加味すると対前年度比約16億円の増額となる。1020億円の内訳は各都道府県による私立高校等の基盤的経費への助成を支援する一般補助が877億円、教育の国際化の推進、特別支援教育に係る活動の充実、幼稚園における預かり保育への支援等を行う特別補助が117億円、そのほか特定教育方法支援事業(特別支援学校に対する支援を充実)が27億円。

 このうち一般補助では幼・小・中・高校の生徒等1人当たり補助単価を対前年度比1・0%引き上げる。特別補助では、英語をはじめとする外国語教育の強化、教育相談体制の整備等に取り組む学校への支援を拡充するほか、障害のある幼児を2人以上受け入れている私立幼稚園への支援を拡充する。支援対象園児数は前年度から約2千人増えて約1万3千人となる。また教育時間終了後や休日に預かり保育を実施する私立幼稚園へも支援を充実する。

 具体的には基礎単価を前年度の65万円から70万円にアップする。そのほか過疎高校、授業料減免(生活保護世帯、家計急変世帯が対象)に対する支援を継続する。

 私立学校施設・設備の整備の推進事業は総額で92億円、加えて復興特別会計で113億円が計上された。内訳は教育・研究装置等の整備が80億円、耐震化の促進が125億円。

 私立学校施設の耐震化に関しては、平成26年度補正予算案(平成27年1月9日閣議決定)で280億円が計上されている。耐震改築(建て替え)事業には26年度補正で195億円が、耐震補強事業には26年度補正で85億円、27年度予算で101億円、そのほかの耐震対策には27年度予算で24億円が計上されている。

 平成27年度予算執行後(平成28年4月)には私立高校等の施設の耐震化率は87・2%に、私立大学等は89・7%になる見込み。国公立学校施設の耐震化率は同時期に98%となる見込み。

 老朽校舎等及び大学病院の建て替え整備事業に係る学校法人の借入金に対して利子助成を行う私立学校施設高度化推進事業費補助は、15億9500万円で、対前年度比1億8600万円の減額。

 このほか、日本私立学校振興・共済事業団の貸付事業の財源として財政融資資金367億円を計上している。同事業団の27年度貸し付け計画額は700億円。融資対象は一般施設費、特別施設費、災害復旧費、公害対策費、教育環境整備費、耐震改築・耐震改修(補強)工事で、長期・低利の融資を行う。



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