大学から幼稚園までの私立学校5団体で構成する全私学連合(清家篤代表=慶應義塾長)は、7月29日、文部科学省に下村博文大臣等を訪ねて、平成28年度私立学校関係政府予算と税制改正に関する要望書を手渡し、その実現を要請した。
大臣等に要望書を提出したのは、全私学連合を構成する日本私立大学団体連合会(清家篤会長)、日本私立短期大学協会(関口修会長=郡山女子大学短期大学部理事長・学長)、日本私立中学高等学校連合会(吉田晋会長=富士見丘中学高等学校理事長・校長)、日本私立小学校連合会(矢崎昭盛会長=国本小学校長)、全日本私立幼稚園連合会(香川敬会長=鞠生幼稚園長)と、日本私立学校振興・共済事業団(河田悌一理事長)。
この中で私大団体連の清家会長は、私立大学等経常費補助の大幅拡充、私立大学の奨学金制度への支援の拡充・強化、私立大学に対する耐震化支援の拡充等を要望。
日短協の関口会長は今も東日本大震災の影響が続く福島県の私立学校に対する奨学金の充実等に感謝し、短大としては地域貢献にさらに取り組んでいく考えを明らかにした。
中高連の吉田会長はグローバル化への対応とICT化の推進を基本に据えた国主導の「新しい教育」への対応は、授業料が上げにくい中では限界があることから全額補助制度の導入を要請。また私立中学校生への公的修学支援制度の創設についてその実現を要望した。
私立中学校生のいる世帯の約14%は年間収入が599万円以下で、これは私立高校では就学支援金が割り増しとなる水準であることを説明、大臣に理解を要請した。
全日私幼連は香川会長に代わって北條泰雅副会長が、私立幼稚園の耐震化が公立幼稚園等と比べ遅れていることから補助率の嵩上げ等を要請。
私学事業団の河田理事長は私立学校施設の耐震化促進等のための貸付事業について所要の財政融資資金の確保、政府出資金や利子助成制度による更なる充実を要請した。
こうした私学団体の要請に下村大臣は、「大学の奨学金制度についてはできるだけ早く充実したい。平成29年度からは所得連動返還型奨学金制度という別のスキルで大学に行きやすい制度づくりを進めている。耐震対策に関しては、被災した場合、命は、公私(の別)は関係ない。一日も早く耐震対策が行われるよう手だてを尽くしたい。(私立中学校生の件では)低所得者の子供はそんなにいないと思っていたが、資料を見るとそうでもない。是非、省内で検討して公私間格差を是正していきたい。教育再生実行会議の第8次提言は、家計で教育費を負担するのは限界で、日本全体の活力を考えたら全ての子供たちにチャンス、可能性を提供するのは教育しかない。教育はコストではなく先行投資で、この20年、30年を考えたら、今かかった費用の2、3倍、場合によっては7、8倍の税金投入以上の成果、効果が上がっている。画期的なことだが、第8次提言は財務省も了解して数字を書き込むことができた。期限までは書けなかったが、できたら5年以内に第8次提言を達成したい。その中に今日(皆さんが)おっしゃったことも相当入っている。2030年までにできたら幼稚園の無償化を始め、大学や私学も含め、教育については社会、国が意欲ある人たちに関しては(費用を)負担するということを実現していきたい。私学関係の方々も応援してほしい」と語った。
このほか私大団体連の大沼淳副会長(文化学園大学理事長・学長)、鎌田薫副会長(早稲田大学総長、教育再生実行会議座長)も要望を行った。
一方、税制改正に関しては、河田私学事業団理事長が、同事業団が行う学術研究振興資金交付事業の内、「若手・女性研究者奨励金(仮称)」の交付に充てることを目的とした寄附に係る税制措置の創設を要望した。