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記事2016年2月13日 2365号 (1面) 
OECD 教員や保護者の期待の低さ 低成績に陥るリスクに
リソースの公平な分配重要性を強調

OECD(経済協力開発機構)は2月10日、低成績の生徒に注目したPISA分野別リポート「Low−Performing Students: Why they fall behind and how to help them succeed」(低成績の生徒:何故成績が下がるのか、支援する方策は?)をウェブ上で公表した。アンドレアス・シュライヒャー・OECD教育スキル局長は、「低成績に対応することから得られる社会経済的利益に比べ、それにかかるコストは小さく、教育政策とその実施こそがこの問題を乗り越える助けとなる。教育リソースと生徒をより平等に分配するシステムこそが低成績の生徒にとって利益となり、さらに好成績の生徒に影響を与えることもないという理想的な状況になる」としている。  PISAは、OECDが加盟国を対象に実施している学習到達度調査(15歳児が対象)で、低成績の定義は、PISA調査(学習到達度はレベル1〜6)のレベル1以下の生徒。例えばゲージを見てあとどれだけガソリンがタンクに残っているかを考えるのに苦労するといったレベル。日本では約10人に1人がそうしたレベル。  同レポートによると、低成績になるリスクは経済社会的状況や低い忍耐力や留年経験など、さまざまな要因が累積的・多面的に関与しており、また就学前教育を受けていない子供は低成績になる可能性が3分の1にまで拡大するという。  教員の期待が低い学校、教員からのサポートが薄い学校、好成績を期待する保護者のプレシャーが低い学校にいる生徒の方が低成績になる可能性が高く、また数的能力で低成績の生徒は自身の努力が非生産的(成果に結びつかない)と思っている。一方、社会経済的背景の多様な生徒を含む学校の方が低成績の生徒は少ない、としている。  生徒の学校や学びに対する姿勢に影響を与えるのは、社会経済的背景ではなく、彼ら自身の成績だとも指摘しており、厳しい環境の子供でも宿題をする子供は低成績になるリスクは低い傾向としている。そのためリソースの分配の公平性が大事だとしているが、現実には最も難しい学校に一番優秀な教員を配置するようにはされていないことが多い。学校における低成績のリスク要因としては、このほか教員のモラルが低い、能力別クラス編成が多い、課外活動の機会が不足している、保護者と地域社会が学校に関心を持っていないなどを挙げている。

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