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記事2016年7月23日 2381号 (1面) 
“私大が基幹の政策へ大転換を”
第5回私大等振興検討会議開催
小出私大協会事務局長が政策提言
麻生・山口短大学長も意見発表

文部科学省の「私立大学等の振興に関する検討会議」(黒田壽二座長=金沢工業大学総長・学園長)の第5回会合が7月14日、都内で開かれ、前回に続いて委員による意見発表、意見交換が行われた。この日、意見を述べたのは小出秀文・日本私立大学協会事務局長と麻生隆史・山口短期大学理事長・学長(日本私立短期大学協会副会長)の2人。このうち小出委員は個人的見解と前置きした上で、高等教育のグランドデザインの策定と私立大学を基幹とする高等教育政策への構造的大転換(パラダイムシフト)の必要性など六つの政策提言を行い、麻生委員は定員割れを起こしやすい小規模な私立短大への助成面での特段の配慮や新たな高等教育機関ができるに当たって短期大学の名称を含む法的位置づけの見直しなどの必要性を強調した。


小出委員は、「今後の大学政策への期待と展望〜多様性の価値追求をなす私立大学振興の視点から〜」と題した意見発表で、戦後のキャッチアップ時代が終了し、わが国は今やイノベーション、再生地域創生の時代を迎え、多様な価値追求高度化、連携強化、地方と都市の調和ある発展、安心安全な社会、安全なキャンパス整備が求められている―といった時代背景等を説明。  その上で、六つの政策提言を行った。具体的には、(1)高等教育のグランドデザインの策定と私立大学を基幹とする高等教育政策への構造的大転換、(2)国公私を含めた高等教育機関が地域の産業金(銀行等)民(NPO)等で構成するプラットフォームを形成し、地域の高等教育振興の課題等を協議提案し、地方地域活性化に資する。私学助成一般補助の配分基準に「社会貢献係数(仮称)」を導入することを提言。また(3)私立大学審議会の復活など政府の大学政策立案及び指導体制の充実、(4)高等教育への公財政支出の大幅な拡大、国公私間の公財政支出格差の是正、私学助成の大幅な増額、(5)私立大学の公立大学法人化問題の総合的な検討、(6)学校法人税制の改善を提言した。  そのほか大学短大の新設や定員増の在り方問題や経営基盤強化の観点からの大学間の連携策、地方創生の観点からの新たな高等教育計画の策定、私大ガバナンス情報公開問題等の検討の必要性も指摘した。  一方、麻生委員は短期大学の歩みや特色、特に地方短大における高い自県内入学率、自県内就職率等を指摘し、若者の地域定着に大きく貢献していること、短大の質保証の現状等を説明。その上で学生確保、特に男子学生獲得等に苦戦している現状から、地方創生の中核として、地域で活躍する女子学生のエンパワーメントの役割を担い、4年制大学に比べて家計に優しい存在として、社会人の再教育の場としての役割を果たす重要性を力説した。さらに制度化が進む実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関に関連して、短期大学に同機関の後期課程を置くこともできる制度とすること、改めて大学短大専門職業大学(仮称)専門学校の在り方(役割分担等)の検討を求めた。  2委員の意見発表に他の委員からは、「私立大学の卒業生の質が評価されていない面もある」「入学時に(学力等が)低くても、卒業時どうかということをしっかり評価すべきだ」「(私立大学に)階層があるとしたら、階層に応じた議論が必要ではないか」などといった意見が聞かれた。また、地方創生という観点からは、都市部の大学と地方の大学との格差是正が急務だが、都市部の大規模な大学が潤沢な奨学金で学生を集めるとますます若者が都市部に集中するといった意見も聞かれた。  次回会合は8月30日、論点の取りまとめについて議論の予定

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