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記事2019年4月23日 2474号 (1面) 
新時代の初中教育の在り方諮問
中央教育審議会が総会開く
普通科改革等各学科の在り方検討  教員免許制度大胆見直しか

柴山昌彦・文部科学大臣は4月17日、中央教育審議会(会長=渡邉光一郎・第一生命ホールディングス株式会社代表取締役会長)に対して、「新しい時代の初等中等教育の在り方」について諮問した。社会の在り方そのものが現在とは劇的に変わるとされるSociety5・0時代の到来を前に、予測不可能な未来社会を自立的に生き、社会の形成に参画するための資質・能力を育成することが求められている、として初等中等教育について広範多岐にわたり改革策の検討を求めた。


今回の諮問は大きく分けて、(1)新時代に対応した義務教育の在り方、(2)新時代に対応した高等学校教育の在り方、(3)増加する外国人児童生徒等への教育の在り方、(4)これからの時代に応じた教師の在り方や教育環境の整備―の4点が柱。
 今後、同審議会初等中等教育分科会の下に5月中にも特別部会を設置し6月から検討を開始、1年後の来年6月〜7月にも「中間報告」をまとめ、同年11月〜12月にも「答申」をまとめる予定だが、事項ごとに随時答申することも検討する。2021年の通常国会に関連法案を提出する見通し。
 このうち諮問(2)の新時代に対応した高等学校教育の在り方については、安倍総理の開催する教育再生実行会議(座長=鎌田薫・早稲田大学前総長)が既に昨年8月から検討を続けており、今年1月に中間報告を公表、5月中にも第11次提言をまとめる見通し。
 その中では今回、中教審に諮問された高校普通科の在り方の検討が最も大きなテーマとなっており、類型化あるいは弾力化、柔軟化の方向性が打ち出される見通し。また高校の広域通信制の在り方についても第三者評価の在り方の実証研究結果等を踏まえたさらなる質の確保・向上策が提言される見通し。
 自由民主党の教育再生実行本部・高等学校の充実に関する特命チームも検討を進めており、普通科の解消・新たな枠組みの創設(サイエンス・テクノロジー科、探求科、地域科、アスリート科、アーティスト科など)、工業高校と工業系大学等の5〜7年一貫教育プログラムの開発・実施などを検討している。
 高校普通科については、安倍総理が議長を務める政府の経済財政諮問会議も3月27日の会議で民間議員が連名で多様な高校教育の構築・地域の担い手やSociety5・0時代のけん引役となるデータ・リテラシーのある人材を育成するべく、文理分断からの脱却を図りつつ、高校生の7割が通う普通科において特色ある教育が実施できるよう多様化・類型化等を進めるとともに、高大連携を一歩進め、高大一貫・飛び級も含めた教育システムも選択できるよう環境整備を推進すべきであるとの意見を表明している。
 この高校普通科の見直しについては、2月21日の教育再生実行会議の中で日本私立中学高等学校連合会(吉田晋会長=富士見丘中学高校理事長・校長)を代表して長塚篤夫常任理事(順天中学高校長)が意見(本紙3月3日号3面に全文掲載)を表明、「グローバル化社会、Society5・0と言われる未来社会は、先の見えない、見通せない時代。だからこそ汎用的な資質・能力に基づいた教育が必要であり、それを推進しようということで、新学習指導要領が公示され、高校でもやっと幅広い資質・能力ベースの教育が始まろうとしている。普通科のカリキュラムの細分化とか専門化の方向性は、ベクトルが逆方法ではないか」とし、「むしろ学習指導要領における教育課程の大綱化などを図り、教科横断的な学びができるようにすることが必要ではないか」と指摘した。
 また同日、意見を述べた藤田晃之・筑波大学教授も高校教育を類型化することについては、「AIやIoTが進展する中で特定の狭い職業分野を特化して身に着けて卒業し、その後、その職業技能がどれだけ持ちこたえるのか」と疑問を呈し、「極めて強く、大きく、速い社会の状況変化の中では、そういった変化に対応する力を育成していくことが高校・大学教育の中では求められる」との考えを表明した。教育再生実行会議の中で高校改革を専門的に検討するワーキンググループの鎌田主査(=同会議座長)は2月21日の議論の中で、「類型化の中身がはっきりしないまま一人歩きすると非常に危険だということを確認いただいた感じになっている。中身をしっかり詰めていく作業を引き続き行っていきたい」と語っている。
 今回の中教審諮問で審議が求められたのは、別表に掲げた事項。  4月17日の中教審総会では、出席した委員が諮問事項や、これからの初等中等教育の在り方等について意見を述べた。その中では、「教員免許を持たない社会人が数多く教壇に立てるよう、活用の進まなかった特別免許状による登用ではなく、教員免許制度自体をしっかり改革すべきで、教職員定数に一定程度社会人枠を設けて、社会人が学校で部分的に教えられるように見直しを」という意見が出された一方、教員養成系大学の学長を務める委員からは「免許状主義、相当免許状主義を止めるのならば免許状に代わって教員の質を保障する仕組みが必要。また社会人を数多く教育現場に入れようということだが、優秀な社会人が数多く集まるとも思えない」との意見も聞かれた。
 また、「次の社会はこうなるので、こういう人材が必要という発想ではなく、仕組みを超える人、仕組みの外の人材をどう拾い上げるか、見るかが重要で、多様性を保障しないとイノベーションを起こすことはできない」といった意見も聞かれた。
 このほか諮問で検討を求められた教科担任制の導入については複数の委員が期待を表明したが、厳しい市町村の財政事情を指摘する意見や人口減などで疲弊する地方の学校でも特色を生かして頑張ることのできる改革を求める意見も出された。
 今回の諮問事項について審議する中教審の初等中等教育分科会は5月8日、文科省で諮問以降初の会議を開く。

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