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記事2019年5月23日 2477号 (1面) 
高等教育の無償化@春から実施へ
低所得層に手厚い修学支援
中間所得層支援は課題

「大学等における修学の支援に関する法律」が5月9日、参議院本会議で与党等による賛成多数で可決、成立した。  この法律は、今年10月の消費税率引き上げによる増収分を使い経済的理由で高等教育への進学を諦めることがないよう、住民税非課税世帯(年収270万円未満)とそれに準じる世帯(年収300万円未満、年収380万円未満)の学生に給付型奨学金(基本的に返済不要、最大で年額約91万円)を支給、同時に大学等の授業料・入学金(最大で年額約96万円)を支援する制度を、2020年4月から可能とするもの。来春の入学生のほか、在学生も対象となる。  制度の対象となる高等教育機関は、厳格な成績管理の実施・公表、財務・経営情報の公表など、定められた要件を満たした大学、短期大学、高等専門学校(4、5年生)、専門学校。対象となる高等教育機関は今年9月中下旬に公表される予定。  2019年度現在、高校3年生の場合、5月〜6月に「自分が給付型奨学金の対象かを日本学生支援機構(JASSO)のサイト等で調べ、対象の可能性があれば高校の先生に申請書類をもらう。7月頃、JASSOの奨学金申し込み専用サイト「スカラネット」で申し込む(一部、書類の提出が必要)。夏以降、国等が対象となる大学等を公表、自分の進学予定校が対象となるかを確認。12月頃、支援の対象になったら通知が届く(予約採用の候補者決定通知)。2020年4月、対象となった学校に入学、「スカラネット」で進学届を提出、授業料・入学金の減免は進学先で手続きを行う。  支援措置の対象となる学生等にも認定要件が設けられる予定で、家計の経済状況に関しては、所得額の他、資産(生計維持者が1人の場合、1250万円未満、同2人の場合は2千万円未満、不動産は対象外)。高校3年時の予約採用では高校2年次までの評定平均が3・5以上なら進路指導等で学習意欲を見る。3・5未満の場合はレポートまたは面談で学修意欲を確認する。そのほか国籍・在留資格等の関する要件がある。大学等に進学後、必要な要件を満たさなくなった場合、支援が打ち切られる場合もある。現在、大学等における修学の支援に関する政令、省令案について国民から意見を聞く手続き(パブリックコメント)中で、6月下旬には政省令が制定される。給付型奨学金の予約採用は6月上旬に募集案内が配布され、推薦期限は8月上旬、8月中旬からJASSOで審査が行われ、12月に採用候補者が決まる。  制度の対象となる大学等に関しては、現在、大学等と文科省等との事前相談が行われており、6月下旬から確認申請が行われ、7月中旬から文科省等で審査が行われ、9月中下旬に対象となる大学等が決定される。  住民税非課税世帯の学生で私立大学に自宅外から通う場合、給付型奨学金年額約91万円が支給され、入学金約26万円、授業料年額約70万円を上限に減免措置を受けることができる。年収約300万円未満、年収380万円未満の世帯に関しては住民税非課税世帯のそれぞれ3分の2、3分の1の金額が支援される。  このように真に支援が必要な世帯にかなり手厚い支援措置が取られたため、中間所得層への修学支援が手薄となるのではないかと危惧する声も上がっており、与党・自民党の文教関係議員の中には別途、修学支援の在り方の検討が必要だとの意見も聞かれる。参議院の文教科学委員会は5月9日、同法案を可決後、附帯決議を採択しており、その中では高等教育に係る費用は中間所得層にとっても重い負担だとして、授業料の適切な設定を可能にする環境整備を政府に求めている。

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