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記事2019年9月3日 2486号 (1面) 
文部科学省が2020年度概算予算要求提出
私学助成関係予算前年度比10.6%増4,742億6,700円
私立大学等経常費補助3194億円を要求 
私立高校等児童生徒等の安全確保支援

文部科学省は8月30日、「2020年度概算要求」を財務省に提出した。一般会計の要求・要望総額は5兆9688億6900万円で、前年度比12・2%の大幅増額要求となった。このうち私学助成関係予算要求の総額は4742億6700万円で、前年度比453億900万円(10・6%)の増額。また私学助成関係予算以外では、来年4月実施予定の「高等教育の修学支援(授業料等減免・給付型奨学金)」や「私立高等学校授業料の実質無償化」、今年10月から実施の「幼児教育無償化」に必要な予算を要求しているが、いずれも具体的要求額は示さず「事項要求」としている。予算額は年末までの予算編成で決定される予定。




修学支援事業を大幅拡充 


高校等専攻科、別科生支援も


 


文部科学省の令和2年度概算要求では幼稚園から大学までの修学支援事業の拡充強化が大きな特徴と言える。  大学、短期大学、高等専門学校、専門学校を対象とした高等教育の修学支援(授業料等減免・給付型奨学金)については、消費税率の引き上げに伴う増及び本事業と一体的な経費(無利子奨学金)については予算編成過程で検討する、としている。対象となる学生は住民税非課税世帯及びそれに準じる世帯の学生。住民税非課税世帯の私立大学生(自宅外生)では、授業料等減免で入学金として約26万円、授業料として約70万円、給付型奨学金として約91万円が支給される(いずれも年額)。  「高等学校等就学支援金交付金等」は事項要求を含めて3733億900万円の要求。この中では来年4月からの私立高等学校授業料の実質無償化等の実施を求めており、私立高等学校等に通う年収590万円未満の世帯の生徒を対象として高等学校等就学支援金の支給上限額を私立高等学校の平均授業料を勘案した水準にまで引き上げるとしている。概算要求の段階では支給上限額は提示されず、事項要求としている。  また、高校及び特別支援学校の専攻科または別科に通う生徒に対して、都道府県が次の支援事業を行う場合、国が都道府県に対して所要額を補助する、との新規事業を要求している。要求額は16億2600万円。都道府県が行う支援事業については、授業料について高等学校等就学支援金に相当する額を支援する、授業料以外の教育費について高校生等奨学給付金により支援する、を要件としている。  そのほか高校等を中退した後、再び高校等で学び直す者に対して、都道府県が継続して就学支援金に相当する額を支給する場合に、国が都道府県に対して所要額を補助する。予算要求額は前年度の6倍弱の7億8900万円で、高校及び特別支援学校の専攻科又は別科に通う生徒について新たに支援の対象とする。 「高校生等奨学給付金」は前年度比14億9900万円増の154億3千万円を要求している。給付額は生活保護受給世帯(全日制等・通信制)の私立高校等在学者で年額5万2600円。非課税世帯(全日制等)(第1子)の私立高校等在学者については年額を現行の9万8500円から11万7600円に引き上げることを求めている。非課税世帯(全日制等)(第2子以降)の私立高校在学者は年額13万8千円、非課税世帯(通信制)で私立高校在学者は年額3万8100円の支給額。  「私立小中学校等に通う児童生徒への経済的支援に関する実証事業」は、前年度比2億3100万円増の12億2600万円を要求している。年収4百万円未満の世帯に属する児童生徒について、授業料負担(最大で年額10万円)の軽減を行い、義務教育において私立学校を選択している理由や家庭の経済状況などの実態を把握するという基本的なスキームに変わりはないが、来年度には非課税世帯について最大で年額15万円に給付額を引き上げ、経済的に困窮した世帯に対する適切な支援額の検証を行うことを要求している。幼児教育無償化の実施でも要求額については事項要求としか記載されていない。


このうち、私立大学等経常費補助は前年度比34億7500万円(1・1%)増の3193億7500万円を要求している。その中の一般補助は前年度比約31億円増の2742億7500万円を、また特別補助は同約4億円増の451億円を要求している。一般補助については、アウトカム指標を含む教育の質に係る客観的指標の本格導入等を通じたメリハリある資金配分で教育の質の向上を促進する。教育の質に係る客観的指標については今年度(令和元年度)、補正方法がそれまでの「+2%〜2%」が「+5%〜5%」に強化されている。特別補助では、私立大学等改革総合支援事業に前年度比約7億円増の153億8500万円を要求している。この事業はSociety5・0の実現に向けた特色ある教育研究の推進や、地域社会への貢献、イノベーションを推進する研究の社会実装の推進など、特色・強みや役割の明確化・伸長に向けた改革に全学的・組織的に取り組む大学等を重点的に支援するもの。また特別補助では大学院等の機能の高度化への支援に前年度より約3億円増の133億5100万円を要求している。私立大学の大学院等の機能の高度化への支援強化によって日本の研究力強化を促進する。この中では専門職大学院、短期大学、高等専門学校の機能の高度化に資する支援も充実する計画。  一方、私立高等学校等の中核的補助である「私立高等学校等経常費助成費等補助」は前年度比21億6700万円増の1043億1400万円の要求。そのうち、都道府県による私立高校等の基盤的経費への助成を支援する「一般補助」は同6億200万円増の867億100万円の要求。幼児児童生徒1人当たりの補助単価については、一律1・2%の増額を要求している。また各私立高校等の特色ある取り組みを支援するため、都道府県による助成を支援する「特別補助」は同13億6200万円増の146億5100万円の要求。  特別補助の内訳は、教育改革推進特別経費が約81億円、過疎高等学校特別経費が2億円、授業料減免事業等支援特別経費が1億円、幼稚園等特別支援教育経費が約64億円。(単位未満四捨五入のため、計が一致しない場合がある)  教育改革推進特別経費約81億円のうち5億円が新規の「児童生徒等の安全確保に関する学校支援経費」で、今年5月、神奈川県川崎市でスクールバスを待つ私立小学生等が殺傷された通り魔事件を受けて、スクールバスにおける警備員等の配置、児童生徒等への講習会(防犯、防災、交通安全)等を想定した補助を要求した。1校当たりの単価は50万円(ただし都道府県補助額の2分の1が上限)。そのほか教育改革推進特別経費では、教育の質の向上を図る学校支援経費(ICTを活用した教育の推進、外部人材の育成等)に28億円、子育て支援推進経費に48億円が要求されている。  私立高等学校等経常費補助の特定教育方法支援事業には前年度比2億300万円増の29億6200万円を要求している。これは文科省が特別支援学校等の教育の推進に必要な経費を支援するもの。  私立学校施設の耐震化等の促進には大学等も含め、前年度比225億1200万円増の275億1500万円を要求している。その内訳は耐震改築(建替え)事業が128億円、耐震補強事業が107億円、その他耐震対策事業は41億円。ブロック塀の安全対策分は令和元年度で終了した。 「臨時・特別の措置」(防災・減災、国土強靱化関係)は予算編成過程で検討する。  施設・設備の整備推進事業のうち、耐震化等の促進を除く教育・研究装置等の整備事業(大学等を含む)は前年度比171億5600万円増の230億6300万円の要求。この中の私立高等学校等ICT教育設備整備費は54億1700万円で、前年度比30億5700万円の増額。この内訳は従来の私立高等学校等におけるICT環境の整備に約30億円、新規の「GIGAスクールネットワーク構想の実現」の私立学校分が約24億2千万円。同事業は、全国の小、中、高校、特別支援学校等の全ての児童生徒が地域の格差なく新時代の学びを享受できるよう、外部から学校内全ての教室まで高速・大容量な通信ネットワークを整備するもの。全国の小、中、高校、特別支援学校等の3分の1に当たる約1万校を3年計画で整備する。私立学校は補助率2分の1。公立学校を含む令和2年度要求総額は約375億円。  このほか、私立学校の施設・設備の整備推進では、日本私立学校振興・共済事業団による融資事業(貸付見込額)625億円(うち財政融資資金291億円)が要求されている。  また、一般財団法人日本私学教育研究所に対する文科省の補助金の要求額は2018万9千円で、前年度比0・8%の増額要求となっている。

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