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記事2020年1月13日 2498号 (1面) 
令和2年度私学関係政府予算案
高等教育の修学支援新制度開始へ
低所得世帯中心に支援充実

 政府は昨年12月20日、令和2年度予算案を閣議決定した。前号では文部科学省の私学助成関係予算案を詳報したが、今号では私立学校にも関係の深く、令和2年度予算の目玉の一つである「高等教育の修学支援新制度」を中心に報告する。同事業の予算額は5823億円。そのうち4882億円が内閣府計上の新規事業「高等教育の修学支援新制度」(授業料等減免+給付型奨学金)で、少子化に対処するための社会保障関係費で、消費税率引き上げによる財源を活用している。ただし予算執行は文部科学省が担当する。また941億円(前年度比88億円減)が文部科学省の「無利子奨学金の貸与基準を満たす希望者全員に対する貸与の確実な実施」。


 このうち「高等教育の修学支援新制度」は、大学、短期大学、高等専門学校、専門学校の住民税非課税世帯およびそれに準ずる世帯の学生等を対象に、「大学等における修学の支援に関する法律」に基づき、低所得世帯であっても社会で自立し活躍できる人材を育成する大学等において修学できるよう、一定の上限額まで授業料、入学金を減免(国が各学校に交付)、同時に学業に専念できるようにするため、必要な学生生活費を賄えるよう給付型奨学金を支給(日本学生支援機構を通じて各学生等に支給)するもの。


 対象となる学生等には要件があり、先ず住民税非課税世帯(年収約270万円まで〈両親、本人、中学生の4人世帯の場合での年収目安、家族構成により基準を満たす世帯年収は変わる〉であること、またそれに準ずる世帯(世帯年収約300万円までは、住民税非課税世帯の3分の2の授業料等減免、給付型奨学金を受けることができ、さらに約380万円までの年収の世帯の学生については住民税非課税世帯の3分の1の授業料等減免、給付型奨学金を受けることができる。


 加えて進学前では成績だけで否定的な判断をせず本人の学修意欲を確認する。また大学等に進学後は学修状況に厳しい要件が設けられる。


 一方、学生等を受け入れる側の大学等にも学問追究と実践的教育のバランスなどの要件があり、経営課題のある法人の設置する大学等は対象となれない。どの大学等が対象かは文科省がホームページで公表している。


 授業料等減免額は、別掲の表の通り(略)だが、住民税非課税世帯の私立大学生に関しては入学金で約26万円、授業料では約70万円が減免される(年額)。同様に私立短大生の場合、入学金では約25万円、授業料では約62万円、私立高等専門学校生ではそれぞれ約13万円、約70万円、私立専門学校生では約16万円、約59万円が減免される。私立の大学、短大、専門学校の通信課程における減免上限額(年額)は授業料が13万円、入学金が3万円。


 また給付型奨学金に関しては、住民税非課税世帯の、私立の大学・短大・専門学校生の場合、自宅生では年額約46万円、自宅外生では年額約91万円が支給される。国公立の大学生の支給額は、自宅生では年額約35万円、自宅外生では年額約80万円となる。私立の大学、短大、専門学校の通信課程における支給額(年額)は5万1千円。児童養護施設等の入所者等・生活保護世帯出身者のうち、居住に要する費用に係る支援の必要性がないと認められる学生等の支給額(年額)は大学、短大、専門学校で国公立の場合で39万9600円、同私立の場合で51万円、高専で国公立の場合で30万9600円、同私立の場合で42万円。


 一方、文科省の「無利子奨学金の貸与基準を満たす希望者全員に対する貸与の確実な実施」は修学支援新制度と一体的な事業で、独立行政法人日本学生支援機構を通じての無利子奨学金事業で意欲ある学生等が経済的理由で進学を断念することがないよう、貸与基準(高校評定平均値、家計基準)を満たす希望者全員に貸与を実施する事業。


 令和2年度の無利子奨学金事業の貸与人員は51万8千人で、事業費の規模は3114億円(前年度比601億円減)、貸与月額は学生選択の2、3、4、5.4万円(私立大学生で自宅通学の場合)、貸与基準があり、予約採用時には高校の評定平均値が3.5以上等の基準があるが、住民税非課税世帯の学生等については成績基準を実質的に撤廃している。家計基準は(子供1人〜3人世帯の場合で、一定年収(700万〜1290万円)以下。返還期間は卒業後20年以内。所得連動返還を選択した場合、卒業後の所得に応じて変動する。学生支援機構には有利子奨学金もあり、令和2年度の貸与人員は83万3千人。事業費の規模は7327億円(前年度比565億円増)。貸与月額は学生等が選択できる仕組みで、大学等の場合、貸与月額は2万〜12万円までの1万円単位。平均以上の成績など学力基準と年収基準(一定年収〈870〜1670万円〉以下)等がある。返還期間は卒業後20年以内で、元利均等返還。

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