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記事2020年1月23日 2499号 (1面) 
学校法人のガバナンスに関する有識者会議が初会合
ガバナンス機能発揮へ制度改革を検討
私学の多様性との関わり焦点に

 文部科学省は昨年12月20日、「学校法人のガバナンスに関する有識者会議」を新たに設置することを決め、その第1回会議が1月17日、東京・霞が関の同省で開かれた。公益法人としての学校法人制度について、令和元年の私立学校法改正や社会福祉法人制度改革、公益社団・財団法人制度改革を踏まえ、同等のガバナンス機能が発揮できる制度改革を検討するのが目的。委員は10人で、能見善久・東京大学名誉教授が座長に就任した。


 学校法人制度を巡っては、令和元年5月に改正・公布された「学校教育法等の一部を改正する法律」の附帯決議で理事長の解職規定を追加することなど、学校法人制度のあり方について不断の見直しを検討することとされ、また令和元年6月の政府の「経済財政運営と改革の基本方針2019」(いわゆる「骨太の方針」)で、公益法人としての学校法人制度について社会福祉法人制度改革や公益社団・財団法人制度改革を十分に踏まえ、同等のガバナンス機能が発揮できる制度改正のため、速やかに検討することが求められていた。さらに令和元年6月の自由民主党行政改革推進本部(本部長=塩崎恭久・衆議院議員、元厚生労働大臣)の公益法人等のガバナンス改革検討チーム(座長=牧原秀樹・衆議院議員、経済産業副大臣)の提言取りまとめでは、学校法人における評議員会の位置付けを、諮問機関から議決機関へと変更すること、一定規模以上の学校法人に会計監査人の設置を義務付けること、理事長・寄付行為という用語を、公益法人や社会福祉法人同様に、「代表理事」、「定款」へと改めること、学校法人の解散に際する財余財産の帰属先について、所管庁に対する申請及び承認を必要とする仕組み及び学校法人の解散に当たり要する費用等について学校法人に開示させる仕組みを設けることなどを求めていた。


 1月17日の有識者会議初会合では、こうした学校法人制度を取り巻く状況や私立学校・学校法人に関する基礎データ、過去の学校法人制度改革の経緯等について文科省私学行政課が説明し、今回の会議は大学に限った話ではなく、幼稚園を含め学校法人全体を視野に入れているとした。また会議における議論の視点例については、学校法人のガバナンスについての検討(私立学校における質の高い教育研究の実現、不祥事の抑止)規模と設置する学校種に応じたガバナンスのあり方(大規模法人から小規模幼稚園法人まで多様な法人規模、文部科学大臣所轄法人と都道府県知事所轄法人の存在)公益法人としての学校法人という視点(学校法人・私立学校制度の歴史的沿革、他の公益法人制度との共通点・相違点)学校法人の最高議決機関及びその構成員(株主に相当する者の不存在、評議員及び評議員会の役割の検討)その他(会計監査のあり方、刑事罰の是非、用語問題)を挙げている。


 有識者会議の初会合では10人の委員が自己紹介を兼ねて学校法人制度改革を巡る問題意識等を語ったが、私立学校の理事長からは、「私学から多様性を取ったら意味がない。一つの原理で(改革を)行う危険性を感じる。改革をしなくてはいけないところもある。理想を見ながら着地点を探りたい」といった意見や、根拠法や所轄庁等が異なる中で学校法人と社会福祉法人を同等に扱うことの疑問の声、「これまでを見て、不足しているものは何か検討すべきだ」との声が聞かれた。また元理事長からは卒業生が中心となって評議員会を組織し、評議員が理事を選任、理事会が学長を選び、大きな方針を決定、学長は教育・研究のすべての権限を持つといった改革案も提案された。 

 また大学教授ら学識経験者からは、学校法人独自にどこに問題があるのか、多様性を大事にしながら検討すること、教学と経営は分けずに一体的に(改革を)検討する重要性が指摘されたほか、有力な卒業生によって入学者選抜が歪められ、私物化の恐れもあるとの指摘もあった。このほか有識者会議には法律や企業監査の専門家等が委員として参加している。

 次回の有識者会議は2月28日に開催の予定。ただし個人情報を含む私立学校の不祥事を扱うため、会議を非公開で行う。有識者会議の設置は今年12月31日まで。
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