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記事2020年12月3日 2529号 (2面) 
第8回学校法人のガバナンス有識者会議
日短協、私大協、私大連盟から意見聴取
理事会と評議員会関係性等議論

 文部科学省の「学校法人のガバナンスに関する有識者会議」(座長=能見善久・東京大学名誉教授)は11月19日、WEB会議方式で第8回会議を開催した。会議の模様は同24日、ユーチューブの文科省チャンネルで公開された=写真=。第8回では、日本私立短期大学協会、日本私立大学協会、日本私立大学連盟の3団体から学校法人のガバナンスに関する見解やガバナンス・コード(ガバナンス体制構築に必要な守るべき原則・指針等)に関する取り組み状況等を聴取、意見交換した。意見聴取後には委員間で評議員会や評議員の選任の在り方を議論した。


 同会議は、昨年12月、公益法人としての学校法人制度について、令和元年の私立学校法改正や社会福祉法人制度改革、公益社団・財団法人制度改革等を踏まえて、同等のガバナンス機能が発揮できる制度改革を検討することを目的に設置され、今年1月に初会合を、その後、コロナ禍で会議開催を順延、7月からはオンライン形式で会議を開催している。


 私大等関係3団体のうち、日短協からは麻生隆史副会長(山口短期大学理事長・学長)と志賀啓一常任理事(鹿児島女子短期大学理事長・学長)が出席、志賀常任理事は協会として今年1月に日短協版のガバナンス・コード第1版を策定したこと、その後、利用状況を調査したところ、日短協版、あるいは他の団体のガバナンス・コードを使用している学校は全体の7割以上に上ることなどを報告。また麻生副会長は令和元年に改正私立学校法が施行されたばかりで、何が問題なのか検証も終わっていないことから、引き続き経過を見ていく必要があるなどと語った。


 日本私立大学協会からは水戸英則常務理事(二松学舎大学理事長)、小出秀文・常勤常務理事・事務局長が出席した。


 その中では水戸常務理事が、学校法人制度は、戦後私学法が施行されて以降、平成16年、同26年、令和元年と数次の改正を経て、理事会が最終決定機関、評議員会が諮問機関として機能し、役員の責任の明確化、監事による理事の業務執行状況の監督権、問題があった場合の理事会、評議員会の招集権等牽制機能が大幅に強化されるなど、その仕組みやガバナンスの充実・強化が図られてきたこと、学校法人とその設置する大学が自主的にそのガバナンスの充実・強化を図るためのガバナンス・コードの策定・公表が慫慂され、その活用が図られてきていることなどを説明。私立学校の自主性、公共性、永続性(安定性)、民主制という目的の重要さは学校法人制度創設から70余年を経た今でも不変で、今後、労働力減少の中で、さらに私立大学で教育を受ける学生数が増加していき、我が国国力を支える人材の養成という重要な使命を果たしていく点を考慮すれば、学校法人制度なくして、今後の日本の隆盛は望めず、従って学校法人制度は現行(改正私立学校法)制度の枠組みを今後とも維持し、主体性を重んじ、公共性を高める自律的なガバナンスを確保しながら、私立学校の運営主体としての社会的責任を果たしていくことが妥当などと語った。また協会が策定したガバナンス・コードの内容を説明した。


 日本私立大学連盟からは福原紀彦常務理事(中央大学学長)、山下隆一事務局次長が出席。


 その中で福原常務理事は、理事の選任方法や評議員会の機能のあり方の検討に際しては、理事や評議員等の私立大学法人の経営の任に関わる者たちが、当事者意識を持つことのできる環境をいかにして構築するかが重要で、事業会社や社会福祉法人等の他の公益法人との目的や使命の違い、永続性の担保を強く求められるなど私立大学法人が有する特異性を十分に踏まえた検討がなされるべきであり、単に他の法人との横並びを理由とするガバナンス論が展開されるべきではない、と指摘。 


 また私立大学法人のガバナンスのあり方は私立大学法人に元来期待されている“多様性”を担保するための“自律性”の向上の観点から検討されるべきであり、個々の私立大学法人においては、解決すべき問題、取り組むべき課題が異なる中、法令等によって一律の取り組み方策を課すことは角を矯めて牛を殺すことになりかねない、などと訴え、理解を求めた。


 このあと有識者会議の委員からは「評議員会に理事を選ぶ権限を与えるべきと思うが、いかがか」、「理事と評議員の兼任をなくす、ごく一部にするといった議論はなかったのか」といった質問が出されたが、私大側からは「運営上の工夫で対応している」といった説明や、私大は多様なため、歴史、分野、規模、時系列に軸を置いた検討等が要請された。その後、委員間の議論では、「評議員会は幅広い審議が機能の中核。評議員と理事の兼任認めても良いと思う」といった意見も聞かれたが、兼任を制限すべきとの意見も聞かれた。



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