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記事2020年6月13日 2513号 (1面) 
大学入試のあり方に関する検討会議開く
引き続き外部有識者等から意見聴取
受験産業経営陣等が要請

 文部科学省の「大学入試のあり方に関する検討会議」(座長=三島良直・国立研究開発法人日本医療研究開発機構理事長)は6月5日、第8回会議をWEB会議方式で開催した。この日も前回に続いて外部有識者・団体からのヒアリングが行われ、英語4技能問題について吉田研作・上智大学言語教育センター長から、格差問題に関して中村高康・東京大学大学院教育学研究科教授から、そのほか受験産業関係者の、高宮敏郎・学校法人高宮学園(代々木ゼミナール)副理事長、永瀬昭幸・株式会社ナガセ(東進ハイスクール)社長、石井塁・株式会社旺文社教育情報センター蛍雪情報グループの計5人から意見を聴取し、委員との間で意見交換が行われた。


 会議では初めに、文科省から新型コロナウイルス感染症の影響から高校等の臨時休業が長期化し、収束は不透明で不安を感じている高校生が少なくなく、令和3年度入試日程等の早期公表が必要であり、現場の教員や高校生等の意向も十分把握した上で、高校、大学関係者との協議を経て対応を決定する方針が説明され、全国の高校の事情や意向を把握するため、入試日程、出題範囲、受験機会の工夫などに関するアンケートの実施を全国高等学校長協会に依頼したことが報告された。


 同省ではこうした調査結果も踏まえ、高校、大学関係者等との協議の場で感染症の専門家も交え議論を行い、大学入学者選抜実施要項を6月中のできるだけ早い時期に公表したいと説明。感染拡大防止に係る試験実施のガイドラインを公表することも明らかにした。


 こうした文科省の説明に委員からは、「各大学は自分たちの大学の試験日程や出題範囲から地方試験の会場を押さえることまで早くから動きだし、ほぼ確定しながら最終的な決定を待っている状況。何か変わるような話はかなり大きなこと。全ての大学に大きな影響を与える。それを6月末でいいというお考えか」と語ったが、文科省は方針を崩すことはなかった。


 その後のヒアリングでは、まず上智大の吉田センター長が英語4技能試験について受けやすいときに受けられる態勢の構築、できれば年に数回実施できる態勢が必要で、できるだけCBTで行い、全国にテストセンターを設け、民間のテスト間の信頼性は第三者機関で行うことなどを提案。


 続いて中村教授はこれからの入試制度に関して、「改革は制度を画一化する。それ自体が反改革的。理念先行のトップダウンではなく、専門家、現場教員、受験生などの意見をボトムアップで吸い上げて、データやエビデンスに基づいた現実的な制度を」などと提案。記述式問題と英語民間試験の見送り等について調査を行い、その中で「準備していたので残念だった」と答えた高校2年生(大学進学希望者)がそれぞれ2割前後と少なかったことを説明したが、別の委員からは調査対象の高校生がどんな層の生徒なのかといった質問などが出された。(中村教授:高校生は調査会社のモニター)


 また、受験産業からは、高宮副理事長が大学入試改革のメリットとコストに関する説明等が必要なことを、永瀬社長は大学入試センターが2025年1月を目標に英語4技能試験を作成・実施することを提案。旺文社は大学入学共通テストでの全面的な4技能評価は非常に困難だとして、必要な学科が適切な定員枠で従来通り、英語の外部検定を利用すればよく、大学が適切な利用枠を判断し、大学が導入しやすくするため「業務ラクラクシステム」(オンラインで成績提供、検定団体が独自に開発)が必要で、国は経済的困窮者への受験支援等に予算を振り向けるべきだと提案した。


 令和3年度大学入学者選抜実施要項は昨年6月4日に公表されているが、今年はコロナ問題があり、例年より一カ月弱遅れており、高校、大学関係者等の会議を経て公表されるのは6月下旬と言われている。


 大学入試のあり方に関する検討会議の第9回は6月16日に開催の予定。

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