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記事2020年6月3日 2512号 (1面) 
令和2年度第2次補正予算案閣議決定
私大等の困窮学生に対する授業料減免への緊急支援
学校再開に伴う感染症対策、学習保障も

 政府は5月27日、令和2年度第2次補正予算案を閣議決定した。追加歳出の合計額は31兆9114億円。そのうち文部科学省関係予算案は1617億円となった。その中には国私立大学等における困窮学生に対する授業料減免等への緊急支援や、学校の段階的再開に伴う児童生徒等の学びの保障、学校再開に伴う感染症対策・学習保障等に係る支援経費、幼稚園におけるマスク購入等の感染拡大防止事業、私立高等学校等への学校再開等支援、大学等における遠隔授業の環境構築の加速による学修機会の確保などの事業が含まれている。


 令和2年度第2次補正予算案における文部科学省関連私学関係事業の概要は次の通り。 


 ●「私立大学等における困窮学生に対する授業料減免等への緊急支援」(予算案94億円、以下同様)=新型コロナウイルスにより家計が急変した家庭の学生に授業料減免等を実施した私立大学等に対して、私立大学等経常費補助金により所要額の一部を国(文科省)が補助する事業。補助のスキームや補助の流れは4月30日に成立した令和2年度第1次補正予算と同じ。補助率は1次補正では2分の1以内だったが、2次補正では3分の2以内にかさ上げされる。


 「私立高等学校等に通う生徒等の家計急変世帯への授業料減免支援」(8・6億円)=新型コロナウイルス感染症を起因とした家計急変による経済的理由から授業料の納付が困難となった児童生徒に、私立高等学校等が授業料減免措置を行い、都道府県がその減免額に対して助成を行う場合、国(文科省)が都道府県に対してその助成額の一部を補助する事業。  補助の対象となる学校種は、私立の小学校、中学校、義務教育学校、高校、中等教育学校、特別支援学校で、補助率は2分の1以内。


 ●「専門学校生への効果的な経済支援の在り方に関する実証研究事業」(拡充)(2・6億円)=新型コロナウイルス感染症の拡大・長期化の影響による家計急変による学業継続の困難、学校経営に与える影響を緊急に把握するため、専門学校が独自に実施する授業料の減免措置に上乗せして経済的支援を行い、施策効果等に関するデータの収集、分析・検証を行い、その効果等について普及することにより専門学校の取り組みのさらなる充実を図る事業。


 「学校の段階的再開に伴う児童生徒等の学びの保障」(761億円)=同事業は大きく分けて、(1)学習保障に必要な人的体制の強化(310億円)、(2)学校再開に伴う感染症対策・学習保障等に係る支援経費(405億円)、(3)特別支援学校スクールバス感染症対策支援の拡充(16億円)、(4)幼稚園におけるマスク購入等の感染拡大防止に係る支援(30億円)からなっている。


 このうち(2)、(3)、(4)は私立学校も補助対象となっており、(2)については、学校の感染症対策等を徹底しながら子供たちの学習保障をするため、新たな試みを実施するに当たり、校長の判断で迅速かつ柔軟に対応することができるよう、国が緊急的な措置として支援する。対象となる学校種は小学校、中学校、高校、特別支援学校等。1校当たりの上限額は100万円から300万円程度で、感染状況等に応じて加算がある。補助率は公・私立が2分の1、国立が10分の10。


 (2)の事業の予算案405億円のうち私立学校分は、学校における感染症対策等への支援で約10億円、子供たちの学習保障の取り組みへの支援で約36億円。前者は消毒液や非接触型の体温計等の保健衛生用品の追加的な購入経費、特に感染症の拡大を警戒する必要がある地域で、集団で検温を実施する場合に必要なサーモグラフィー等の購入経費、換気に必要なサーキュレーター等の購入経費などが対象。


 また後者は特に感染症の拡大を警戒する必要がある地域で、家庭学習のために用いる教材の購入等や児童生徒の学びの確実な定着を図るために必要な経費、学校電話機の臨時増設など家庭との連絡体制強化に必要な経費、空き教室を活用した授業の実施に必要な備品購入費が対象。


 さらに(3)の特別支援学校スクールバス感染症対策支援の拡充(16億円)は、スクールバスに乗車する幼児児童生徒の少人数化を図る取り組み(スクールバスの増便、ジャンボタクシー等の借り上げなど)や、スクールバスに乗車する医療的ケア児等の罹(りかん)を防ぐための福祉タクシー等の借り上げの取り組みが対象。


 予算案16億円のうち私立学校分は、私立の特別支援学校自体が少ないため3千万円。補助率は2分の1。


 (4)については、幼稚園、幼稚園型認定こども園におけるマスクや消毒液等の配布、感染防止用の備品購入への支援、感染症対策を徹底するために必要なかかり増し経費への支援(感染症対策の取り組み徹底による業務量増への対応)が事業内容。補助基準額は1施設当たり50万円以内で、補助率は10分の10。予算案30億円のうち、ほとんどが私立学校向けとなる見通し。


 私立高等学校等への学校再開等支援(8億円)=新型コロナウイルス感染症拡大による臨時休校等に伴う未指導分の補習等を実施するため、私立高校等が行う学習指導員等の追加的人材の配置に係る経費に対して、都道府県が助成を行う場合、国が都道府県にその助成額の一部を補助する事業。


 ●大学等における遠隔授業の環境構築の加速による学修機会の確保(73億円)=同事業は、実施のニーズがある全ての大学・短期大学・高等専門学校・専修学校において、遠隔授業(遠隔の双方向授業・オンデマンド授業)が可能となる設備及び体制の整備により、デジタル技術を活用した高度な教育が提供できる環境を整備するもの。予算案73億円のうち私立大学等分は56億円。具体的には、遠隔授業実施に係るシステム・サーバー整備、遠隔授業を行うための機材整備(大学側:カメラ・音声機器等、学生側:モバイル通信装置)、遠隔授業を行うための技術面・教育面の支援体制整備(機器・ソフトウエアのトラブル対応等のための専門的人材〈TA等〉の配置など)。


  同省ではこうした環境整備が人生100年時代を見据えた、高等教育機関の学び直し(リカレント教育)環境整備にもつながると期待している。

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