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記事2020年9月13日 2521号 (2面) 
中央教育審議会大学分科会 第3回質保証システム部会開催
質保証システムの在り方で 
私大連、私大協等から意見聴取

 中央教育審議会大学分科会の質保証システム部会(部会長=吉岡知哉・日本学生支援機構理事長)の第3回会合が8月31日、WEB会議方式で開催され、高等教育の質保証システムの在り方について、日本私立大学連盟など5団体からヒアリングが行われた。各団体からは意見資料が提出されており、その概要は以下の通りだった。  


国立大学協会は山崎光悦副会長(金沢大学長)が出席。「大学教育の質保証に関する考察課題と展望」と題した意見では、設置基準の見直しに関して、遠隔授業等の教育効果の検証、単位認定基準の見直しと再定義、単位数上限の緩和、DDP/JDP(ダブルディグリープログラム/ジョイントディグリープログラム)への適用の可否(上限設定)を挙げた。  


設置審査の課題としては、学位と教育内容のひも付け・統一化、分離融合・異分野融合にふさわしい学位の設定・標準化、質保証・水準のチェックを中心とする審査内容・体制、学士・大学院課程の複数専任化とエフォート管理による自由度の付与、文理融合分野の設置審査体制整備・専門委員会の新設等を挙げた。  


教育の質保証のうち、内部質保証では、(1)分野別・プログラム単位の認証評価の積み上げ、(2)学生の学修成果・学びの軌跡と成長、満足度の可視化、(3)レベル・階層で質向上のPDCAサイクルが機能する内部システムの構築、(4)認証評価等によって定期的に検証、改善を促す仕組みの確立を基本として挙げ、そのための体制整備として、内部質保証システム、機能の構築・定着、PDCAサイクルの検証、教育水準の担保が必要ではないか、とした。機関別認証評価の課題としたのは、認証評価機関の評価水準・厳格さの統一、国際通用性の確保、分野・系統の整理・認証評価の効率化、大くくりの審査委員プールの設置などだった。  


また、公立大学協会は清水一彦副会長(山梨県立大学長)が出席した。提出意見では、学修者本位の教育への抜本的な改革として、単位制度の見直し、専門職養成課程の過密化をどうするか、オンライン授業による単位互換推進として大学設置基準等の見直し、オンライン授業の質保証、大学など連携推進法人制度における教学上の特例措置の活用を挙げた。  


質保証の仕組みについては、認証評価における内部質保証はシステムを外形的に評価した上で特性に応じて柔軟に評価できるものが望ましいこと。また情報公表では共通の公表システムの充実を図ることや、設置形態別の議論があってもよいのではないかとした。  


日本私立大学連盟は田中優子常務理事(法政大学総長)が出席した。  


意見提出資料では、大学設置基準に関して、(1)遠隔授業の修得単位の上限(60単位)を授業の質の担保を条件に緩和する、(2)校地・校舎面積の規制はオンライン教育の普及・拡大の実情にそぐわないため基準の撤廃・緩和を、さらに図書等の資料および図書館に関する規定は抜本的に見直して電子資料や端末設置数・ネット環境整備の規定を考える、(3)教員・職員、専任教員、実務家教員それぞれの定義・職能・役割に関する基準の明文化を求めている。  


認証評価では、各種認証評価の受審時期を統一し関連業務を統合できる仕組みづくりを求めており、また法改正で大臣関与の仕組みが盛り込まれるなどしたが、認証評価はあくまで大学の自主的・自律的制度であるべきであり、過度な介入によって独自の建学精神を掲げる私立大学の教育活動を阻害することがない制度設計を要望している。  


定員に関しては合理的な定員管理と、社会人教育の推進の観点からも入学定員から収容定員に基準を転換すべきであること、定員管理の単位は大学単位で、また単年度ではなく複数年度で行うこと、定員充足率を各種補助事業の申請条件や評価項目とすることを撤廃すること、社会人学生・留学生の定員は別枠扱い等とすることを要望した。  


オンライン教育・遠隔授業については、相互の留学を実現する方法を組み込むことや、オンラインを活用したリカレント教育の推進、オンライン教育を活用し複数大学をつなぐ大学連携教育プログラムや地方大学と首都圏の大学との新たな連携の提示が必要だとした上で、インフラ整備では国の財政的支援と戦略的支援が必要だとした。  


情報公表に関しては、特定の指標による大学の序列化、大学教育の画一化の危険性に十分留意するべきだと指摘した。  


日本私立大学協会は佐藤東洋士会長(桜美林大学理事長・総長)が出席した。意見発表資料では、大学設置基準に関して、遠隔教育が急速に拡大していることから授業の概念・在り方の再構築が急務であること、18歳人口減少に即して教育研究上の基本組織は専門職大学設置基準と同様の最低収容定員数・専任教員数等での設置を可能とすることを要望している。  


認証評価については、認証評価機関に対する国の干渉がともすれば各認証評価機関の画一化を助長し、その独自性・多様性・豊かな評価文化の醸成を阻害しかねない、としている。 


定員管理については、改めて中教審で議論すべきだとし、地域の貴重な高等教育機関として存在する私立大学に対しては優遇措置で支えていく発想の転換を求めている。  


大学改革支援・学位授与機構は長谷川壽一理事が出席。意見発表資料の中で、認証評価業務の負担軽減を求めており、各大学等による内部質保証システムが有効に機能している場合は、認証評価の受審期間の弾力化や提出資料の簡略化の検討が必要ではないかとした。 


また専門職課程の評価に関して、その分野が1校のみの場合、認証評価のコストが大きな負担となるとして、考慮を要請した。

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