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記事2020年9月23日 2522号 (2面) 
全国学生調査に関する有識者会議が初会合
試行調査の結果を基に本調査の論点を検討
オンライン教育なども課題

「全国学生調査」に関する有識者会議の第1回会合が9月16日にWEB会議方式で開催され、2日後から1週間、ユーチューブで配信された。同会議は、「全国学生調査」の本格実施に向け昨年実施された試行調査の評価・検証等を検討事項としている。この日の議題は座長の選任と意見交換。座長には河田悌一・一般社団法人大学資産共同運用機構理事長が選任された後、昨年末の「全国学生調査(試行実施)」の結果報告、検討すべき論点が提示された。


 「全国学生調査」は、中央教育審議会が平成30年11月26日に文部科学大臣に答申した「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン」の中で、大学教育の質に関する情報を把握・公表し、社会が理解しやすいよう全国的な学生調査・大学調査を行い公表すべきと提言されたのを受けて、文科省と国立教育政策研究所は昨年11月から12月に、試行調査としてインターネットによるアンケート調査を実施。この試行調査結果の報告が事務局から行われた。  


それによると、対象学生は515大学(参加意向確認)に在籍する学部3年生約41万人。


質問項目は大学で受けた授業の状況や、大学での経験とその有用さ等。有効回答者数は11万1051人、有効回答率は27・3%だった。  


調査結果は、文科省等のホームページで公表(6月16日付)されているほか、参加大学には在籍学生の回答結果と集計結果を公表前に提供された。  


試行調査の結果を基に、本格実施に向けての七つの論点(事務局案)が提示された。まず(1)目的について、各大学の教育改善に生かすこと、大学に対する社会の理解を深める一助とすること、国の政策立案の基礎資料として活用する。ただ新型コロナウイルス感染症の影響で大学が新しい在り方を求められる中、見直しは必要か。(2)調査対象・方法について、全大学の参加を原則とするか、対象学年・調査時期をどうするか、短期大学や通信教育課程を加えるか、調査方法はどうするか。(3)回答方法について、試行実施では匿名だったが、これを見直すか。回答の利便性のために英語表記を加えるか。(4)質問項目数は試行調査の数でよいか。質問内容について学生から抽象的なものが多い、役に立っているか等の質問には答えにくいとの意見があり、どのような見直しが必要か。(5)公表内容は試行調査の公表の形でよいか。集計基準をどうするか。公表単位を大学・学部単位とするか。(6)既存の学生調査との整理・調整をどう考えるか。(7)調査の実施主体を今後どうするか。


これらについて議論し、次回令和3年度の試行をどのような設計で実施するか検討する。  


続いて委員による意見交換が行われた。その中で調査方法に関しての意見では、「フタを開けてみたら、大学によって回答数にばらつきが大きかった」「学生は関心の高いところに答える傾向があり、大学に不満のある学生の回答が多くなるのではないか。学生をランダムに選んで回答してもらうのがよい」「回答率をどう上げるかだ」などが出た。  


調査対象については「短大、高専も入れれば、日本の高等教育の学生像が浮かび上がってくる」とし、短期大学や高等専門学校も入れるべきだとの意見があった。質問項目のうち大学教育は役に立っているかは学生から答えにくいとの意見があったことについては、「現役学生は何の役に立つかをイメージしにくい」「役に立っていないという回答が結構ある、これは問題だ。コメント欄を設けてはどうか」との意見があった。一方で、「アクティブラーニングで活発な授業を展開しているところもある。良いところが見える形にできないか」との意見も聞かれた。  


全国学生調査の目的の一つ、社会の大学教育への理解の一助として実施することについて、「その社会とは何を指しているのか分からない。大学は頑張って発信しているが、産業界・経済界は大学への不信感を持っているようで、説明しきれていないのではないか。社会の求めに応えて項目を立ててはどうか」「どう改善していくのかという視点で調査していくのがよい」「調査が大学の教育改善に生かされないとメリットがない。細かいところで比較できないと意味がないのではないか。比較、相対化できるようなものに調査も育てていくことだ。ただこの調査だけで分析するのはどうか」「(試行)調査はベンチマーク的にやったが、共通部分と大学独自部分を分けて調査しないといけない」等の意見が出された。  


オンライン教育に関する項目を立てることについては、「しばらくの間、大学はオンライン授業と対面授業を併用していくだろう。その辺りの設計も考えないといけない」とした。


また新型コロナウイルス感染症の影響で、「既に各家庭の所得は激減している。新型コロナウイルス感染症の(収まらない)東京に学生は集まらない状況が起こるかもしれない。指標を作らないと、小規模で努力している大学がつぶれていく」「オンラインなら日本の大学でなくてもいい、となるかもしれない」といった声も聞かれた。  


調査結果の公表について、「公表を前提に大学に調査を依頼したが、議論の必要がある」「各大学が質の向上に向けてやっている。世界に向けて日本の教育の何を発信するかだ」とした。  


このほか、複数の委員から経年調査が必要だとの意見があった。


委員は、河田悌一座長のほか、  奥明子・貞静学園短期大学理事長・学長  岸本強・島根県立大学・同短期大学部副学長  小林浩・リクルート進学総研所長  小林雅之・桜美林大学総合研究機構教授  清水一彦・山梨県立大学理事長・学長  高橋哲也・大阪府立大学副学長  田中愛治・早稲田大学総長  千葉吉裕・日本進路指導協会理事  服部泰直・島根大学長  本山和夫・東京理科大学理事長  両角亜希子・東京大学大学院准教授  山田礼子・同志社大学教授。またオブザーバーとして  濱中義隆・国立教育政策研究所高等教育研究部副部長が参加している。


河田座長

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