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記事2020年9月3日 2520号 (1面) 
学校法人のガバナンスに関する有識者会議
評議員会の機能や構成等議論
他の公益法人との用語統一には異論も

 文部科学省の「学校法人のガバナンスに関する有識者会議」(座長=能見善久・東京大学名誉教授)の第4回会議が7月16日、オンライン会議方式で開かれた。当日はコロナウイルス感染拡大防止のためマスコミ等の傍聴は認められず、8月5日に会議の模様がユーチューブの文科省チャンネルで公開された。


 この日は、初回会議に提出された「会議における議論の視点(例)」に沿って過去3回の会議で出された意見と、今後議論が必要な論点をまとめた「これまでの主な意見」が事務局(文科省)から提案・説明され、委員が意見を述べた。


「これまでの主な意見」は、(1)学校法人のガバナンスについての検討(2)規模と設置する学校種に応じたガバナンスの在り方(3)「公益法人としての学校法人」という視点(4)学校法人の最高議決機関及びその構成員(5)その他から構成されている。


このうち(1)学校法人のガバナンスについての検討には、総論、質の高い教育研究の質の実現、不祥事の抑止が、(2)規模と設置する学校種に応じたガバナンスの在り方には、学校法人には大規模大学法人から小規模幼稚園法人まで多様な法人規模があることや、文部科学大臣所轄法人と都道府県所轄法人があること、(3)「公益法人としての学校法人」という視点では、学校法人、私立学校制度の歴史的沿革、他の公益法人制度との共通点・相違点、(4)学校法人の最高議決機関及びその構成員では、「株主」に相当する者が学校法人制度にはいないこと、評議員及び評議員会の役割の検討、(5)その他では、会計監査、刑事罰、破綻処理・解散の適正化の記述がある。


こうした論点整理に能見座長からは、「重要なことは一つに無理に収れんするのではなく、私立学校の多様性を前提に最低限必要なガバナンス(を作ること)で、一番の要は理事会の適正な運営、評議員会の役割」との考えが示された。


その後委員からは様々な意見が出されたが、「会社に倣い学校法人制度でも評議員会を最高の議決機関として、評議員会が理事を選び、理事会は監督権限を持ち、執行は学長や副学長が担うべきだ」といった意見、反対に今の制度、理事会、その中で理事長が総理することは動かすべきではなく、学校法人制度では株式の発行もなく、個人が私財を投げ打って私立学校を創設したこと、ある日解任されれば、すべてを失うことなどから会社に合わせることの疑問を語った委員もいた。


そうした議論の中でも評議員会の見直し、構成員の検討、権限の強化については各委員とも大筋で異論はないようで、最大のステークホルダーは学生だとして学生の学校運営への参画を求める意見も聞かれた。学校法人の規模に合わせた見直しについては大規模な大学法人と幼稚園法人を同様に扱えないとの意見には異論はなく、会社法も規模別になっていることを説明する委員もいた。


さらに「まずは世界に伍して戦える教育機関のガバナンスを検討すべきで、それより小さな法人は簡略化すればいい」「規模は在学者数で見ればいい」「学校法人が目指す公益をはっきりとさせるべきだ」「内部通報制度をきちんとした仕組みにすべきだ」などの意見が聞かれたが、「ゼロベースで議論すると収拾がつかなくなる。掛け声倒れに終わってはいけない」といった意見、また社会福祉法人との用語の統一を求める考えには学校法人と社会福祉法人の成り立ちの違いを説明した委員が「短絡的な発想ではなく、十分な議論が必要」と意見を述べる場面も見られた。


同会議は8月24日に第5回会議をオンライン方式で開催しているが、会議資料、会議の模様は9月2日現在、公開されていない。

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