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記事2021年1月23日 2533号 (2面) 
通信制高校の質の確保・向上に関する調査研究協力者会議
審議まとめ骨子案を審議
課程の在り方検討求める声も

 文部科学省の「通信制高等学校の質の確保向上に関する調査研究協力者会議」(座長=荒瀬克己関西国際大学学長補佐)は1月19日、WEB会議方式で第6回会議を開いた。


 会議前半は、同会議委員の原口瑞神奈川県立横浜修悠館高校長(平成20年4月開校の公立通信制独立校)から同校の主体的対話的で深い学びや、観点別学習状況評価の実施に向けた取り組み等について聴取。会議後半は、同会議の「審議まとめ(骨子案)」について審議した。


 骨子案は、これまでの意見概要を整理した10ページ強の簡潔なもの。第1章 通信制高等学校を取り巻く現状、第2章 高等学校通信教育の質保証方策、第3章 新時代の高等学校通信教育の在り方、の3章構成。第1章と第2章は同会議の検討事項1「通信制高等学校の質の確保向上に向けた方策について」に対応した内容。第3章は検討事項2「時代の変化、現場の実態に即した通信制高等学校の在り方」に対応した内容。第3章は論点整理の段階だが、高校教育として共通に身に付けるべき資質能力、通信制課程における今後の学びの在り方について提案している。


 このうち第1章、第2章では、広域通信制教育を巡ってこれまで、今なお不適切な学校運営や教育活動が少なからず見られるとして、そのための対応方策を、(1)教育課程の編成実施の適正化、(2)サテライト施設の教育水準の確保、(3)多様な生徒にきめ細かく対応するための指導体制の充実、(4)主体的な学校運営改善の徹底―に整理して提示している。


 具体的には、添削指導および面接指導の年間計画や実施予定内容、多様なメディアを利用した指導等の実施方法や報告課題の作成方法等の基本的な実施計画、試験の日程、学習成果の評価基準等を記載した体系的な計画として、「通信教育実施計画」(仮称)を策定し、あらかじめ生徒や保護者に明示することなど、ガイドラインの改訂等により関係法令等の解釈を明確化すること、国が関係法令やガイドライン等に基づく自己点検項目や自己点検基準等を整理した「自己点検チェックシート」(仮称)の策定周知を行うことを提言。また教育課程や通信教育実施計画、教師1人当たりの生徒数、在籍者数入学者数卒業生の進路状況、中退者等情報、施設設備その他の教育環境情報、学習相談や教育相談体制の情報等の公開を求めている。また実施校の責任の下、サテライト施設ごとの教育活動等の状況についても評価、情報公開を求めている。


  一方、第3章では添削指導面接指導試験等といった通信制課程特有の教育方法を基礎としながら、学びの質を重視した改善、例えば主体的対話的で深い学びを実現する方法、必ずしも通信教育の方法によらずとも対面による教育方法を組み合わせて行うこと、通信制課程で探究的な活動をどう展開していくかなどについて、同省は来年度に定時制と通信制に関して実証的な研究を実施する計画を説明した。


 こうした骨子案に委員からは、「全日制と通信制の距離が縮まって軋(あつ)轢(れき)が懸念される。課程はどうあるべきか、しっかり考えるべきだ」、「私学の通信制にも言及してほしい」、「通信制だからオンラインで、学校に来なくていいではなく、通信制だからこその生徒への寄り添い方ある」、「教員の標準法の改正(増員)が必要だ」といった意見が聞かれた。


 これに先立ち行われた学校長からの聴取では、各授業で問いを工夫して生徒の探究的意欲や意見発表意見交換をグーグルフォーム(アプリ)等を活用して引き出し、リポート完成率を引き上げた取り組みなどが紹介されたが、その中で通学しての学びの連続性の効果の大きさを指摘する報告もあった。


 これに対して別の委員からは、「学校にたくさん通うことを前提にすると通信制とは何、となってしまう」との意見も聞かれた。同会議は令和2年度末までに終了。その後、文科省により関係法令の改正、ガイドラインの改訂等制度改正、実証研究事業等が実施される予定。

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