「『令和の日本型学校教育』の実現に向けた通信制高等学校の在り方に関する調査研究協力者会議」(座長=荒瀬克己・独立行政法人教職員支援機構理事長)の第2回会議が10月26日にオンラインで開催された。
1回目の会議の論議をもとに通信制課程の教育方法や学習支援体制の検討にあたってのポイントとして文部科学省から、個別の生徒の学習ニーズに対応して、個別最適な学びと協働的な学びを実現するために、どのような教育方法や教育環境が求められているのか、支援を必要とする生徒にきめ細かな指導や支援を行うためにはどのような取り組みを進めることが有効か、などが示された。
現状の報告として、原口瑞委員(神奈川県立横浜修悠館高校校長)が公立の通信制高校教育について話した。私立、公立とも広域通信制高校の数は増加している。公立では、履修者数・修得者数の割合は、私立よりも大幅に少なく、また特別な支援を必要とする生徒の在籍割合は私立の約4倍あり増加を続けている。
公立通信制高校では対面スクーリングの出席を重視し、記述式の紙リポートの提出があるなど従来型の自学自習を前提とした活動が続けられてきた。しかし、平成30年に通信制高校の質の確保・向上のためのガイドラインが出されると変化が現れ、履修登録をしない生徒に積極的に働きかけたり、ICTの活用が見られるようになった。
横浜修悠館高校では、学習の自己調整が難しい生徒のニーズに合わせ、全教科のレポートに深い学びにつながる探究的な問いを設定し、ルーブリック評価を組み込んでいる。また学び直しに退職教員、就職活動にサポステなど、外部資源の積極的な活用を進めている。
私立通信制高校の状況は吾妻俊治委員(東海大学付属望星高校校長)が発表した。同校ではオリジナルの通信教育講座を配信し、生徒はロイロノートを利用してリポートを作成し提出する。スクーリングは月に2、3回で、スクーリングのない平日午前中2時限で希望者にはサポート学習を行い、中学校の学び直しから大学受験までサポートする。校舎の隣には登校支援の「憩いの広場」を設け、教室での受講が困難な生徒が利用したり、図書室、カウンセリングルームも用意している。
履修科目、行事、部活動など可能な限り選択の機会を設けて個別最適な学びに対応し、単位を取ることより、自ら学ぶ姿勢を重視している。
課題としては、十分な財政援助がないため、ICT教育環境の整備が立ち遅れていることがある。登校支援を要する生徒が多く在籍するため、全日制と同程度の教職員数、養護教諭、スクールカウンセラーなどの専門職、設備が必要であるが、学校経営上難しいとした。
次に森田裕介委員(早稲田大学教授)が通信制高校全般の課題と今後の学びについて話した。
EdTechやICTの活用で、安心・安全な居場所に学習機会を保障し、学習履歴データを収集して適切な指導をし、STEAM教育を導入して、個別最適な学びを実現していく。多様な生徒への対応として、才能教育や2E教育を視野に入れた専門家との連携、不登校生徒へのスクールカウンセラーの設置なども求められる、とした。
意見交換では、生徒には協働、対話的な学びを避ける傾向があるが、SNS、チャットなどを活用して、通信制高校の独自の協働的学びを作り出せるのではとの発言があった。個別最適な学びには生徒に“伴走”することの重要性が強調された。荒瀬座長は、「生徒が自らの力でスタートができるまで伴走を続けることが大切だ」と述べた。