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記事2021年11月3日 2560号 (1面) 
日短協がオンラインで秋季定期総会開催
ガバナンス改革会議について
審議状況やヒアリング等報告

 日本私立短期大学協会(会長=関口修・郡山女子大学短期大学部理事長・学長)は、令和3年度秋季定期総会を、10月15日にオンラインで開催した。学校法人ガバナンス改革会議の審議内容やヒアリング対応、文部科学省の説明、中教審の審議状況の報告などが行われた。


 開会挨拶で関口会長は「いろいろな問題が起きている、加えて今回は乱暴ともいえるような私立学校に対する改革を検討している。これまでの改革の効果の実証が行われない中での改革に継ぐ改革だ。社会全体や短期大学教育に大きな弊害をもたらすのではないか。我々としては地域社会、学生・卒業生への配慮をしながら、着実に教育の充実を進めていかねばならない」などと述べた。


 最初に、学校法人ガバナンス改革会議(以下、改革会議)の審議状況とヒアリングについて報告が行われた。改革会議は、現在、評議員会を議決機関とするなどの議論が急速に進められており、年内にとりまとめ、直接文部科学大臣に報告される予定だとし、9月9日の改革会議では私学団体からのヒアリングが行われ、日本私立短期大学協会からは、麻生隆史副会長と川並弘純常任理事が意見発表をしたとして、報告が行われた。


 麻生副会長は、「私学法は令和元年に改正されたばかりで、5年も経たないうちに改正が進むというのはどうか。改革会議の委員から出てくる意見は、公益財団法人や社会福祉法人に比べて、学校法人のガバナンスはなっていない、そのために不祥事が起きている、もう一つは補助金や税法上のメリットを受けているのにけしからんというものだ。ユーチューブ(会議を公開)で見ると分かると思うが、メンバーの中には1人か2人しか私立学校経験者はいないうえ、その委員が意見を述べると、袋だたき状態だ。


 一番問題なのは、評議員会を完全に議決機関にするということだ。さらに評議員のメンバーに学校職員や利益相反の人は入れない、評議員会が役員の選任権と解任権を持ち、評議員によって理事・理事長は解任・選任がいとも簡単にできる。脈々と建学の精神を引き継いできた学校法人の制度から離れていく危険性を感じる。学校法人は個人のものでないのは理解しており、ヒアリングの意見発表では、評議員については現行どおりを求めた。もう一つは、私学独特の1号理事も評議員会が選ぶというのもおかしい。さらに問題なのは、評議員の責任だ。われわれは現在、善管注意義務と損害賠償責任を負っている。では評議員も善管注意義務と損害賠償責任を負うのか、負う場合、なり手がいるのか、いるとすれば報酬も発生するし、予算決算にもかかわってくる、現場の学校は大混乱に陥る。最悪の場合乗っ取りも考えられ、健全な私学経営、公共性などを保つこともできなくなる。評議員の権限を強化した形で、学校法人制度が現行の公益財団法人制度へと変わるのではないかと危惧している」などと述べた。


 川並常任理事は「学校法人の規模ごとに検討するとの文言があったが、規模だけでははかりきれないのではないかと話した。ヒアリングの雰囲気としては、われわれの話を聞いても聞かなくても変わらないという雰囲気だった」などと述べた。


 続いて文部科学省高等教育局私学部私学行政課の相原康人課長補佐が「学校法人ガバナンス改革会議について」と題して改革会議の動向について説明し、その中で評議員会について、次のように話した。


 


 骨太の方針(2019)が決定されてほどなく、自由民主党の行政改革推進本部の下のガバナンス検討チームから具体的改革の提言で、評議員会の議決機関化が文書として出てきた。


 今年3月のガバナンスに関する有識者会議のとりまとめ(以下、提言)が大学法人のガバナンスの基本的方向性を提示した。骨太の方針2021で、学校法人改革について年内に結論を得て、法制化を行うとし、これに基づき、学校法人ガバナンス改革会議を設置。第5回会議で私学団体からのヒアリングを実施した。(改革会議の)委員からは(私学団体の)意見を聴く必要がないと言う場面もあったが、文部科学省として意見は必要ではないかと何度も申し上げた。提言では、評議員会の議決機関化について、役員の選解任を行うとともに、運営の重要事項について議決を行うとしている。重要事項とは、中期計画・寄附行為の変更、合併、解散、役員報酬支給基準などが例示されたが、改革会議では、事業計画や予算なども増えていて、株式会社の組織の在り方が前提になっているような意見が見受けられた。


 役員の選解任については、提言でも改革会議でも、評議員と理事の兼職関係を解消していこうという議論が主流だ。


 評議員の在り方では、提言は、幅広いステークホルダーを反映するよう構成を見直していくとして、各役員や評議員の親族・特殊関係者は評議員を禁じるとした。


 今も議論が続いているのは、学内関係者の割合に上限を課し段階的に引き下げ、教職員が評議員となることも禁じるということだ。これは財団法人の考え方だ。評議員会にどこまで権限を与えるかを別に置いたとしても、評議員会の改善はあるだろう。評議員にどこまで責任を持たせるか、その上で権限を持たせるかというのが今回の議論だろう。提言では、評議員については解任の訴えの仕組みを整備し、大臣の解任勧告の対象にすること、また、理事による評議員の選解任は認めないとしている。改革会議では選任委員会といった方式を義務付けるかといった意見は出ているが、議論は深まっていない。


 自律的な部分を大事にして、問題が生じている部分の改善は図る、私立学校の健全な発達につながるものではなくてはならないという決意で今後の検討に努めていきたい、などと相原課長補佐は話した。


 報告事項では、支部選出理事の交代の報告が行われたほか、令和3年度の研修会については新型コロナウイルス感染症のためオンラインで開催するとしたほか、「令和3年度のコロナ禍における短期大学の取り組み」調査の報告が行われた。


 また令和4年度定期総会は、春季総会は4月28日に東京・私学会館で、秋季総会は10月19日に名古屋・名古屋観光ホテルで開催予定だが、新型コロナウイルス感染症の感染状況によっては変更もあるとした。


 中教審の大学分科会の審議状況の報告では、審議の中で、地方短期大学という視点をもっと入れてほしいなどを要望したとした。大学・短期大学基準協会からの報告も行われ、令和3年度の認証評価については49校に現在訪問調査を進めているとし、令和4年度の認証評価は51校から申込みがあり、そのうち1校は初めて大学から申込みがあったなどと報告された。


関口日短協会長

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