こちらから紙面PDFをご覧いただけます。



全私学新聞

TOP >> 2021年12月13日号二ュース

記事2021年12月13日 2564号 (1面) 
私大団体連と日短協が「声明」
学校法人ガバナンス改革会議の拙速な議論に遺憾の意表明
“学修者本位の教育環境破壊”

 文部科学省の「学校法人ガバナンス改革会議」(座長=増田宏一・日本会計士協会相談役)が12月3日、現行の理事会に代わり学内関係者を排除した評議員会を最高監督議決機関とするなど新学校法人制度の抜本的改革案の実施を強く求めた「報告書」を取りまとめたのを受けて、日本私立大学団体連合会(田中愛治会長=早稲田大学総長)と日本私立短期大学協会(関口修会長=郡山女子大学短期大学部理事長・学長)は同6日、「声明」を公表した。


  その中では、「学校法人の基本構造を変更するという極めて重要な議論が拙速に進められたことは誠に遺憾。議会制民主主義を補完する国民参加機関としての審議会(大学設置・学校法人審議会)の議を経ることなく、さらには教育現場関係者の声を反映させることなく進められてきたことに大きな懸念を抱く」などと訴えた。


  同改革会議は当初から教育現場の関係者を利害関係者と位置付け、できる限り排除したい姿勢を見せてきた。


 私学団体からの意見聴取でも私学団体代表の意見には委員が一斉に反論。事務局を務める文科省にも一定の距離を置くなど、座長を中心にあまり例のない会議運営が行われてきた。また、改革案は株式会社等のガバナンス体制を強く意識した機関設計を行ったのが特徴といえる。


 私大団体連、日短協は同報告書について、「特に評議員会を株主総会と同視し、コーポレートガバナンスの考え方をそのまま私立大学の経営に導入しようとする点は、理論上合理性を欠くものと言わざるを得ない。私立大学において最も重要なステークホルダーは学生と保護者。上記の提案は学生の視点が完全に欠落している。学生と日頃接していない学外評議員だけで、私立大学の教育研究に関する運営の責任は取れない。特に提案の中核にある『学外者のみで構成される評議員会が、学校法人の重要事項の議決と理事及び監事の選解任を自由にできる』という制度では、学修者本位の教育環境は破壊され、評議員が暴走しても止めることができなくなる」と指摘。


 この点に関して「声明」は、「評議員の権限は、学外評議員が責任を取れる範囲に収めるのが合理的で、日々の教育研究に関する意思決定に関しては、理事会のリーダーシップを尊重するよう見直すことを提案している。


 また、理事会が暴走する場合には、学外の監事が理事会と評議員会双方にアドバイスをして、監事の意見に沿って評議員会と理事会が相互にモニターすることで互いに暴走を止める機能を備えた仕組みの構築を提案している。さらに、私学は教育理念・内容、規模等が多種多様であり、建学の精神と各校の発展の歴史的経緯も異なり、それらの多様性を無視して、高等教育を担う私立大学と、中等教育を担う私立高校・中学校、初等教育を担う私立小学校、幼児教育を担う私立幼稚園を、一律の法制度下に治めることは明らかに非合理的だと指摘している。


 学校法人のガバナンス改革の法制化に関しては、私立大学の真に健全なガバナンス体制の構築が図られるよう強く要望する、と表明している。

記事の著作権はすべて一般社団法人全私学新聞に帰属します。
無断での記事の転載、転用を禁じます。
一般社団法人全私学新聞 〒102-0074 東京都千代田区九段南 2-4-9 第三早川屋ビル4階/TEL 03-3265-7551
Copyright(C) 一般社団法人全私学新聞