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記事2021年3月3日 2537号 (2面) 
令和2年度第2回都道府県私立学校主管部課長会議
私立学校法改正など説明
令和3年度文科省予算案も

文部科学省は2月16日、令和2年度第2回都道府県私立学校主管部課長会議をオンデマンド配信方式で開催した。この会議は同省の令和3年度予算案や私立学校に関する制度改革等を都道府県の私立学校主管部局の担当官に説明し、同省の事業等の適切な実施や必要な協力等を要請するための会議。新型コロナウイルス感染症が全国的に拡大して以降は、同省で都道府県主管部局担当官が出席しての会議開催から、オンデマンド配信による開催に切り替えている。 


 令和2年度第2回都道府県私立学校主管部課長会議では、初めに森晃憲・高等教育局私学部長があいさつし、新型コロナウイルス感染症に対しては文部科学省として感染防止対策と子供たちの健やかな学びを両立し、子供たちを誰一人取り残すことなくその学びを保障できるように人的体制の強化や感染拡大を防止するための経費への支援に係る予算を措置する方針を説明。次年度以降を見通した教育課程の編成や、学校の授業における学習活動の重点化を可能とするような策を講じていることも挙げ、困難な状況の中でこれら施策を適宜活用して学校や学校法人に応えるよう要請。


 また、学校における感染症の対応方針については累次にわたる通知や衛生管理マニュアル等で示しているとして、学校や学校法人への周知を要請。文科省としては学校教育の発展に質量両面で貢献している私立学校の振興を重要な政策と位置付け、さまざまな施策を実行していることを説明した。


 その上で改正私立学校法が昨年4月1日から施行され、さらに今年3月1日からは会社法改正に伴う私立学校法の改正も予定されており、学校法人の役員が負う賠償責任を巡り寄附行為の定めや各種契約の在り方、評議員の関与や理事会での決定など改めて全体像が明らかになったとして、法人の規模にかかわらず昨年と今年の施行について学校法人への周知の取り組みを要請した。


 続いて小谷和浩・私学行政課長が「私学の振興について」と題して、(1)会社法改正に伴う私立学校法の改正、(2)学校法人のガバナンス改革、(3)私立学校関係税制、(4)押印等廃止対応、(5)私立学校の労務管理、(6)テロ資金供与の防止、(7)学校雇用シェアリンク、(8)マイナンバーカード取得促進の8点について説明した。


 このうち(1)の会社法改正に伴う私立学校法の改正に関しては、令和元年の会社法改正に合わせて学校法人の役員についても「補償契約」「役員賠償責任保険契約」の契約内容を決定するには理事会の決議が必要となったこと、また「契約締結により被保険者たる役員の職務執行の適正性が著しく損なわれるおそれがない保険契約として文部科学省令で定めるもの」については、理事会決議の手続きの適用除外とされていることに関して、適用除外となる保険契約の範囲を私立学校法施行規則に定めたことが説明された。施行日は令和3年3月1日。具体的には法人が負う損害賠償責任について法人を被保険者とする責任保険契約で、附帯して役員を被保険者とするもののうち、法人の損害補償を主たる目的とするもの(企業総合賠償責任保険、施設所有者責任保険等)と、役員が個別に負う賠償責任について役員を被保険者として法人が締結する責任保険契約のうち、役員の職務義務違反に関連を有しない部分(自動車損害保険、海外旅行保険等の法人契約等)としている。  


(2)のガバナンス改革については、いわゆる骨太の方針2019や学校教育法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(平成31年4月、衆議院文部科学委員会)等を踏まえ、私立学校法が改正されたばかりだが、社会福祉法人制度改革や公益社団・財団法人制度改革を踏まえ、学校法人制度についても同等のガバナンスを発揮できる制度改正のため、学校法人のガバナンスに関する有識者会議が設置され、令和2年1月に初会合が開かれ、令和2年度内を目途に今後の議論の方向性について提言を受ける予定で、提言を踏まえ、文科省においてさらに学校種別や規模に応じた学校法人のガバナンスの在り方について具体的な検討を進める予定だとした。 


(3)の私立学校関係税制に関しては、学校法人に係る優遇税制の周知を要請。また令和3年度税制改正の内容を説明したが、新入生を対象とする寄附金控除の対象範囲の拡大(所得税)に関しては、新入生からの寄附金であっても、入学決定後に募集のあったもので、新入生以外の者と同一の条件で募集されるものであれば、例外として控除の対象になる、とされているが、寄附金控除の対象となる具体的要件の明確化を国税庁と協議していくことを明らかにした。 


このほか寄附金に係る所得控除、税額控除の仕組みや、特定公益増進法人・税額控除対象法人になるための手続きや、個人住民税の税額控除の指定の推進、税額控除対象証明済みの学校法人の周知を要請した。 


このほか、(5)の私立学校の労務管理では、働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律や民法の一部改正に伴う労働基準法の一部改正(賃金請求権の消減時効期間の延長)などを説明した。 


続いて私学助成については新田正樹私学助成課長が説明した。文科省の令和3年度私学助成予算の全体像は前年度と同額の4094億円で、私立高等学校等経常費助成費等補助は前年度比2億円増の1019億円、私立学校施設・設備の整備の推進は100億円、私立大学等経常費補助は前年度比2億円減の2975億円で、私立高等学校等経常費助成費補助の一般補助860億円には補助単価の増額、授業目的公衆送信補償補助金分が含まれていること、また生徒等1人当たり財源計画に関しては、国庫補助の単価が前年度比0・9%から1・1%増、地方交付税措置は同1・2%から1・4%増額されていること、地方交付税措置に関しては、単価のほかに授業目的公衆送信補償金補助分が含まれていることを説明した。これは国庫補助に対応する地方負担分。 


私立学校施設の耐震化に関しては、令和2年度時点で公立小・中学校施設の耐震化率99・4%に対して私立の幼稚園から高校までの施設の耐震化率は92・3%にとどまっている。昨年12月11日に閣議決定された「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」では、私立の小学校から大学までの施設の構造体の耐震化率については令和10年度までに100%を達成することを目標にしており、特に耐震性能の低いIs値0・3未満の施設については令和8年度までに耐震化率100%を実現することにしている。こうしたことから文科省では都道府県に対して耐震化100%実現に向けた年次計画を策定しての実施を要請した。また私立学校のブロック塀についても全体の7・4%が安全対策が未実施だとして該当する法人に注意喚起措置を確実に講じるよう都道府県に要請した。

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