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記事2021年4月13日 2541号 (1面) 
Society5.0時代の学びを実現へ
経団連が提言、文科省に提出
EdTechの活用推進要請
“ただしオンラインだけで教育は完結しない”

 一般社団法人日本経済団体連合会(中西宏明会長=日立製作所会長)は3月16日に提言「Society5・0時代の学びU〜EdTechを通じた自律的な学びへ〜」をまとめ公表した。3月31日には同連合会の山西健一郎副会長(三菱電機特別顧問)らが文部科学省に萩生田光一大臣を訪ね、提言を提出し提言内容の実現を要請した。この中で「学び」のDX(デジタル変革)に向けた、教員・学校が果たすべき役割について、EdTechの活用推進、コーチング・ファシリテーションの重視、児童・生徒と社会をつなぐ取り組み、学習成果の把握と検証を挙げ、国・地方公共団体に対しては教育制度等の見直し、インフラ提供・支援を、地域・家庭には学びのセーフティーネットの構築への協力を求めた。 


 同連合会は2019年11月以降、義務教育の抜本的ICT化、EdTechを活用したSociety5・0時代の学びの実現等を数度にわたり提言してきたが、今回は、過去の提言をさらに掘り下げ、Society5・0時代の学びの姿、その実現に向けたロードマップを示し、これらに関わる各主体の果たすべき役割、必要な環境整備等について提言した。提言中には、スタディサプリ(リクルート)を用いた佼成学園高校の反転授業や、豊島岡女子学園のMicrosoft Teamsを活用しての会議時間の削減、東京女子学園高校のNEC未来創造会議とのコラボ授業、精華小学校での毎朝の職員会議の資料をクラウドのGoogle会議ドキメントに集約する取り組みなど、18のEdTechの先進的な取り組み事例も掲載されている。 


 提言ではSociety5・0時代の学びのキーワードについては、(1)パーソナライズ、(2)シームレス、(3)ダイバーシティ、(4)クリエイティブだとし、育むべき能力や資質として、協働力、コミュニケーション能力、自己肯定感、好奇心、問題発見能力、洞察力、プログラミング的思考力、技術活用力、問題解決能力を挙げている。 


その上でEdTechによる学びの変革については、AIドリルを活用した問題演習で数学的思考力が、海外の学校とのオンライン授業で協働力・問題発見能力が、探究型学習での実験・分析でプログラミング的思考力・技術活用力・問題解決力がそれぞれ向上するなどとしているが、EdTechの活用については、決してオンラインだけで教育が完結するのではなく、対面とオンラインの良さを取り入れた学びを模索すべきだとしている。 


 学びのDXのロードマップに関しては、ステップ1として学習データ活用の原則策定、一人1台端末・通信環境整備、先進校でのEdTech先進事例づくり・共有(ステップ2まで続く)などとし、ステップ2では教員の仕事の再定義・オンラインプラットフォームでの教員間の連携(ステップ3まで継続)、学習データの規格化・コード統一、学習者主体のデータ管理・活用法確立、デジタル教科書の普及・活用、学習アプリ・コンテンツの拡大、活用事例の全国展開、ステップ3では学校内外の学習データ連携、個別最適化された学び、、Globalに協創する学びの実現などを挙げている。


 そうした計画の実現のため企業・産業界には学びのためのハード・ソフト・人材提供や校務・働き方改革支援等を求めており、EdTech推進に向けた環境整備としては、データ活用のグランドデザイン、目的・原則の明確化、個人情報保護法制上の課題の解決、児童・生徒の端末と通信環境、学習教材・アプリ・コンテンツ、個人情報保護の措置を取った上で教員端末の利用制限緩和・研修支援、外部との連携などが必要としている。 


 経団連としては、今後EdTech学習プログラムのプロトタイプの形成を検討していきたいとしている。

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