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記事2021年4月23日 2542号 (2面) 
第25回大学入試のあり方に関する検討会議
英語4技能問題など討議
令和3年度共通テスト報告も

 文部科学省は4月20日、WEB会議方式で第25回大学入試のあり方に関する検討会議(座長=三島良直・国立研究開発法人日本医療研究開発機構理事長)を開催し、ユーチューブでライブ配信した。会議では、令和3年度大学入学共通テストについての実施報告と、英語4技能の総合的育成・評価の在り方、経済的な状況や居住地、障害の有無等にかかわらず安心して試験を受けられる配慮が議論された。


 令和3年度の共通テストについては山本廣基・大学入試センター理事長が、問題評価・分析委員会報告書(案)の一部を示し、国語・数学・英語についての高校教科担当教員と教育研究団体の意見・評価について紹介した。国語については共通テスト問題作成方針に即した良問が出題されたとし、数学も本質的な理解を伴う設問や思考力を問う設問、問題を解決する設問など適切な出題だったとした。


 英語については、高校教員は発展的に思考して判断する力を問うもので大いに評価するとしたが、全国英語教育研究団体連合会は、情報量が増え問題も複雑になった、じっくり考える時間を設定して思考力を十分測るような問題に改善すること、将来は4技能を測る試験への変更の検討を求めていることが報告された。山本理事長は今後もさらに改善していきたいと述べた。


 続いて川嶋太津夫座長代理がこれまでの意見を踏まえた「英語4技能の総合的育成・評価のあり方について(案)」を提示し、議論が行われた。


 見送りとなった資格・検定試験および大学入試英語成績提供システムに関して、委員からは「英語4技能を一体的に育成することが目標だ。それを分けて入試で課すのが正しいのかという意見を入れるべきだ」「今後も資格・検定試験を入試に活用するなら、質保証の仕組み、利益相反の防止措置が必要だ」などの意見があった。


 高校側の委員は「CBTが見送られたが、コロナ禍でオンライン教育が普及し状況は変わったのではないか」「新学習指導要領で英語教育が変わってきた。それを大学で伸ばしてほしい」「総合的な英語力を測れる共通テストにしてもらいたい。平等性等の課題の解決を見ていない資格・検定試験を使うなら大学が使い方を検討してほしい」などと述べた。


 共通テストでのスピーキング・ライティング試験の実施については、複数の委員が現時点では困難だろうとしつつも、「いずれ技術の進歩で可能になるとしても、リーディングとリスニングで改善を図っていき、個別選抜で各大学が4技能評価を推進していくのが現実的だ」「共通テストの英語試験も出題の工夫によって、スピーキング・ライティングにつながる力を間接的に測定可能であるなら、工夫を積み重ねて、共通テスト全体で総合的な英語力を測る方向へ推し進めていくことが重要だ。ただ、制約はあるので個別試験の充実が大切だ」「これを機会に、中長期的には国・大学入試センターが英語4技能試験の基礎研究をしてはどうか」など、個別試験で英語力を見ていく一方で、共通テストで総合的な英語力を測る方向も探ってほしいとした。


 このほか、「今年の入試で、文系学部で数学を課したところや記述式を導入したところで志願者が減った。改革に取り組んでいる大学に国のインセンティブ付けが必要だ」「英語は大事だがそのことばかり書くのはどうか。将来、その世代の7〜8割が大学生になるとしたら、その全てにこういう教育をするのか。大学はそれぞれ専門分野を持ちながら、多様な人材を育てることを目標にしている」などの意見もあった。


 最後に「経済的な状況や居住地域、障害の有無等にかかわらず安心して試験を受けられる配慮について(案)」は、コロナ禍で進んだ入試のオンライン化をさらに推進してはどうかとした。委員からは、医学部入試における女子への差別についての報道に触れ、「ジェンダー格差やエスニックマイノリティグループへの配慮も記載してほしい」との意見があった。

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