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記事2021年5月23日 2544号 (3面) 
国立大学法人法改正法が成立
世界に伍する研究大学育成
10兆円規模の大学ファンドに合わせガバナンス体制など改善

 内閣(文部科学省)が3月2日に国会に提出した「国立大学法人法の一部を改正する法律案」が4月21日、衆議院の文部科学委員会で可決、4月22日の衆議院本会議で賛成多数で可決。その後、参議院の文教科学委員会で5月13日に可決、5月14日の参議院本会議で可決、成立した。


 衆議院の文部科学委員会、参議院の文教科学委員会でそれぞれ、学長選考・監察会議の議事内容の公表など一層の透明性の確保等を求める付帯決議が採択されている。


 この法律は、世界に伍する研究大学を目指すための大学改革の第1弾として国立大学法人法を改正したもので、同時並行で進められている10兆円規模の大学ファンドの創設・支援に合わせた環境整備だ。大学ガバナンスを改善するため、学長選考会議による学長の業務執行状況のチェック機能を強化、監事の常勤化により監査体制を強化するとともに、大学の研究成果を活用したコンサルティングや研修・講習を実施する事業者への出資を全ての国立大学法人に拡大(現在は指定国立大学法人のみ)すること、大学の教育研究に係る施設・設備や知的基盤の管理・共用促進を行う事業者への出資の可能化、指定国立大学法人について、技術系の大学発ベンチャーへの出資を可能化するもの。同法の中核はこうした国立大学法人等の組織体制の見直し。同法にはそのほか中期計画の記載事項として、目標の実施状況に関する指標を追加する。年度計画および各事業年度に係る業務の実績等に関する評価(年度評価)を廃止すること、国立の小樽商科大学と北見工業大学を帯広畜産大学に統合すること、奈良教育大学を奈良女子大学に統合することも盛り込まれている。同法の施行は一部を除き令和4年4月1日。


 内閣府に設けられている総合科学技術・イノベーション会議(議長=菅総理、略称:CSTI)では今年3月24日に「世界と伍する研究大学専門調査会」の初会合が開かれており、その下には「大学ファンド資金運用ワーキンググループ」も新設されている。これらの専門調査会、ワーキンググループの運用に当たっては文科省とも連携が取られている。専門調査会、運用WGとも今年夏までに中間報告を取りまとめる見通し。


 一方、文科省も近く国立大学法人の新たな法的枠組み検討有識者会議(仮称)を発足させ、ガバナンス改革、ポストコロナのニューノーマル時代における大学の在り方の検討を開始する予定で、年度内に検討を終え、次期通常国会に関連法案、具体的には大学ファンドを受けるにふさわしいガバナンスの構築や世界トップレベルの大学となるための特例的な規制緩和等が盛り込まれた法案が第2弾として国会に提出される予定。その後、令和4年度に大学ファンドで支援する対象大学が指定され、令和5年度から支援が開始される。


 こうした世界に伍するトップ大学の支援体制の道筋が付いたが、それ以外の大学についても研究開発力を抜本的に強化していく必要があるとして、文科省は「地方大学研究振興タスクフォース」(事務局科学技術・学術政策局産業連携・地域支援課)を設置、そうした大学の規模や機能、立地に応じて期待される役割を明確にしつつ、そのために必要な施策の在り方を示すことにしている。


 検討の中では、それぞれの大学の特徴を一層強くする方向に促すこと、特定の研究分野で国際的に優れた研究力を有する大学で当該分野をさらに伸ばすこと、地方自治体や産業界と共に、地域課題解決や地域経済発展に貢献する大学についてはその方向性をさらに加速すること、それぞれの特色・方向性を評価し、大学が主体的に特色・方向性を伸ばしていくための仕掛けが必要なことなどが議論されている。


 また地方大学振興の長期的方向性として大学が自らの強みや特色を生かして、主体的な取り組みを促すための施策を一体的に講じること、連携や共創を促すこと、拠点・大学単位の支援事業の横串を通す仕組みの構築、基盤的経費において地域ならではの取り組みや社会貢献を支援・評価する仕組みの導入、大学にとって分かりやすい公募・採択の仕組みの検討などが議論されている。



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