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記事2021年5月3日 2543号 (1面) 
教職生涯を通じて学び続ける教師に
教師の在り方特別部会が初会合
教職を魅力ある仕事に
志願者を増やし、士気高める

 中央教育審議会に3月12日に新設された「令和の日本型学校教育」を担う教師の在り方特別部会(第1回)と教員養成部会(122回)の合同会議が4月27日、WEB会議方式で開かれた。会議の冒頭、同特別部会の部会長等の選任が非公開で行われ、中教審会長の渡邉光一郎・第一生命ホールディングス株式会社取締役会長・一般社団法人日本経済団体連合会副会長が部会長を、中教審副会長の荒瀬克己・独立行政法人教職員支援機構理事長が部会長代理を務めることになった。


 萩生田光一・文部科学大臣は3月12日に第11期中教審に対して、「令和の日本型学校教育」を担う教師の養成・採用・研修等の在り方について諮問した。その諮問事項について中核となって審議するのが同特別部会。


 前期(第10期)中教審が今年1月26日に萩生田大臣に提出した答申「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して〜全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと協働的な学びの実現〜」の中では、実現すべき教師を巡る理想的な姿について、教職生涯を通じて学び続け、子供一人一人の学びを最大限引き出し、主体的な学びを支援する伴走者としての役割を果たす、多様な人材の確保や教師の資質・能力の向上により質の高い教職員集団を実現する、教師が創造的で魅力ある仕事であることが再認識され、志望者が増加、教師自身の士気を高め、誇りを持って働くといったことが描かれており、既存の在り方にとらわれることなく、基本的なところまで遡って検討を行い、必要な変革を実施、教師の魅力の向上を求めていた。


 そうした理想像の実現に向け、具体的には(1)教師に求められる資質能力の再定義(基本的な資質能力)、(2)多様な専門性を有する高い教職員集団の在り方(採用等の在り方、強みを伸ばす育成、キャリアパス、管理職の在り方)、(3)教員免許の在り方、教員免許更新制の抜本的な見直し((1)を踏まえた教職課程の見直し、学校外で勤務してきた者等への教員免許の在り方、免許状の区分の在り方、必要な教師数と資質能力の確保が両立する教員免許更新制の見直し)、(4)教員養成大学・学部、教職大学院の機能強化・高度化(多様化した教職員集団の中核となる教師を養成する教員養成大学・学部、教職大学院の教育内容・方法・組織の在り方、学生確保、教職への就職、現職教員の自律的な学びを支えるインセンティブの在り方)、(5)教師を支える環境整備(教師を支える環境整備、教師の学び等の振り返りを支援する仕組み)を審議する。


 エビデンスに基づいた審議や政策立案を行うため、文科省では五つの調査を実施することにしている。(1)は教員免許更新制に関する教員の意識調査で、調査対象者は更新講習受講経験のある現職教員、(2)は教師不足に関する実態調査。調査対象は都道府県・指定都市教育委員会等で、教師の不足数、不足の要因、解消に向けた取り組み等を調査する。初の全国調査。


 (3)は、教職課程を置く大学等に所属する学生の教職への志望動向に関する調査で、教員免許状の取得理由、教職への志望度、教職を志望するきっかけ、教員採用試験の受験の有無とその理由等を調査する。(4)は教師の資質能力の育成等に関する調査で、校長等管理職を含めた現職教員が調査対象。教師の属性、身に付けたい資質能力、研修の受講状況。研修ニーズ等を調べる。


 (5)は教師の研修履歴の管理等に関する調査。都道府県・指定都市・中核市教育委員会等を対象に個々の教員の研修の受講履歴の管理・活用状況を調査する。現状では取り組みは自治体によってまちまち。


 その後、諮問事項等について委員による意見発表が行われたが、中教審副会長の永田恭介・筑波大学長(国大協会長)は「若い先生方が学校の現場で(さまざまな課題から)萎縮して実力を発揮できていないのではないか。先生方が自信を取り戻してやっていけるシステムが重要だ」と語り、日本私立中学高等学校連合会長の吉田晋・富士見丘中学高校理事長・校長は、「教育にはすごく経験が重要。学校でインターンを兼ねてアルバイトできないか。新規採用後は仮免、2、3年学校で経験して本免に切り替えてはどうか」とし、安家周一・あけぼの幼稚園長(公益財団法人全日本私立幼稚園幼児教育研究機構理事長)は、今大学では幼稚園教諭、保育士、小学校教員の三つの免許状を取得しようと学生が多くの単位を履修、その分社会的な経験不足になっていると感じている、と訴え、免許状の整理統合や長時間保育で数多くの教員が必要となり運営が非常に厳しくなっている実情を報告した。また安部恵美子・長崎短期大学長は、教員の多忙化の実感から働き方改革で教員自ら生涯学び続ける姿を子供たちに見せる重要性を指摘、教員に学び続けられるゆとりの重要性を力説した。


  このほか教員確保が危機的な状況になっていることや教員の負担を軽減することを先行すべきで、そうした安心安全な職場、長時間労働の是正が教職を考えている学生等への重要なメッセージとなること、教員を学習者と捉えて焦点化していく重要性などが発言の中で語られた。


4月27日の「令和の日本型学校教育」を担う教師の在り方特別部会・教員養成部会合同会議

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